2008年01月13日「ジェシー・ジェームスの暗殺」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 ようやく1冊終わりましたよ。自分でいうのもなんだけど、これ、傑作。宣伝会議等での連続講義を話し口調も変えずにそのまんま、まとめちゃいました。
 思考、発想、マーケティングセンスをきっと刺激すると思うよ。お楽しみに。

 で、レイトショーに駆け込みました。これ、長い長い。2時間40分の長尺。
 でも、緊張してたからあっという間。静かな映画だなぁ。トム・ハンクス、ポール・ニューマン出演のギャング映画「ロード・トゥ・パーディション」より空気が重たい。

 それにしても、ギャング映画、好きだよなあ。邦画だと「仁義なき闘い」「昭和残侠伝」「悪名」「総長賭博」とか、ぜ〜んぶ観てるもんねぇ。
 早朝賭博じゃないよ、総長賭博!

 で、これもアメリカやくざの映画。やくざというよりアウトロー?
 アウトローといえば、ビリー・ザ・キッドとこの人でしょう。

 ジェシー・ジェームスよ。西部劇の常連。列車強盗の頭目でんがな。

 映画はいきなり列車強盗のシーンから始まるわけ。最初はなに、これ、キャンプ? 飯盒炊飯? ところが、強盗の準備だったのね。

 で、アウトローそのもの兄フランクよりも穏やかなジェシーのほうが、キレると怖いことがすぐわかります。以来、2時間40分もの間、「殺されるじゃないか?」という緊張感でいっぱいだったのよ。

 アウトローってのは、仲間も信じない。いつ寝首をかかれるかわかんない。寝ていても寝ていない。
 このストレスたるや大変なもの。ライオンとウサギが一緒に生活してるようなもんだもん。
  
 アウトローってのは、アメリカでも一目置かれるわけ。マスコミ(おもに新聞だけど)操作で、たんなる強盗が英雄に描かれたり、義賊になったりするわけ。すると、伝説になっちゃうんだよね。
 バカなヤツは、この伝説を信じちゃう。で、憧れたりするわけね。東映任侠映画を観たチンピラがやくざに憧れるようなものよ。

 19歳のロバートもそんな若者の1人。子どもの頃からジェシーを描いた漫画を読んで夢中になった。ジェシーのことならなんでも知ってるオタク。
 そんな若者が弟子入りを志願した・・・ここから先は映画を観てね。なんつっても、この土曜から封切りだもの。

 35歳でジェシーはこの若者に殺されます。ジェシーの死から10年後、このロバートも殺されます。


「許されざる者」に似てる?ぜんぜん似てない。エンタの要素はまったく無し。もっと哲学的な映画だと思うね。

 プロデューサー兼主役のビラピがいうように、この映画は西部劇ではなく人間心理劇ですな。憧れと嫉妬、恐怖、憎悪、愛情、競争心、名誉欲、そして禁欲と金欲・・・隣の人の息を呑む音まで聞こえてくる静謐。
 映画館自体がサスペンスだったなぁ。

 ロバートを演じたのはケイシー・アフレック。
 前半はただの間抜けにしか見えない。それが後半からはニヒルで鋭い男になってる。役者としては美味しい役ですな。
 ところで、この人、「グッドウィル・ハンティング」「誘う女」にも出演してるのね。ちぃとも知らなかったわん。「グッドウィル・・・」では兄貴のベン・アフレックは出ずっぱりだったけどね(脚本もマット・デイモンとの共同でしょ)。気づかなかったなぁ。
 ジョージワシントン大学とコロンビア大学の演劇専攻。脚本も演技もこなす才人だけに今後が楽しみ。この作品で、もしかすると助演男優賞とるかも。