2008年01月12日「小説吉田学校」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

「君はモテるだろうね。新橋はどこに行ってる?」
「・・・」
「これからは君たちの時代だ。佐藤くん(佐藤栄作)。総理として、これからボクがやろうとしてることが何かわかるかね?」
「いったい何ですか?」
「講話だよ。日本の独立だ。そのためには党内に基盤がいる。だが、官僚出身(外交官)のボクには勢力がない。手駒が欲しいんだよ。君、頼むよ」
「わかりました」

 仕事が一段落した時とか、あと数時間で終わるとメドがたっつた時、ついつい、映画を観たり、シャンソン聴いたり、呑みに行っちゃったりするのね。
 つまり、自分へのご褒美なわけ。

 で、今日はあと3時間で終わると踏んで、これ、観ちゃった。昔々、買ったビデオ。なんでかね。ほかにも最新作いっぱいあんのに。

 やっぱ夏目雅子が観たかった? 混迷する政治の打破を潜在意識がとらえていたから? 安っぽいドラマが多い中、重厚な人間ドラマに飢えていた?
 まっわかりません。

 けど、おもろいでんなぁ。これ、学生時代、夢中になって小説を読みましたよ。映画になると聞いて、ワクワクしてたもん。
政治評論家の戸川猪佐武の実録小説。たまりまへんでぇ。

 日本独立の悲願を達成しようとする吉田。達成後、今度は権力にしがみつく。
 本来、鳩山一郎が総理になるべきところ、病床にいた鳩山はGHQの横槍もありなれなかった。鳩山側近の三木武吉は吉田を首相の座から引きずり下ろそうと仕掛けをする・・・。

「三木という輩には妾が3人いるという!」
「ただいまの泡沫候補の演説には間違いが1つあります。妾は3人ではなく4人であります。みな、齢を重ねこの三木が最後まで面倒を見なければ生活できないのであります」

 男が男であった時代。清廉潔白だけが取り柄の正直者では政治はできませんよね。米中ロ、北朝鮮を相手にするのに、ウソや詭弁、騙しの1つもできない正直者では危なっかしくて任せられませんよ。

 講話、独立という大プロジェクトに命を賭けた政治家、官僚の姿を見ると、隔世の感があり、「中途半端やなぁ」と感じられてなりまへんわ。 


日本演劇界の総力を挙げた作品!

 おもなキャストにご注目! 吉田茂には森繁久彌、鳩山一郎に芦田伸介、河野一郎に梅宮辰夫、田中角栄に西郷輝彦、宮沢喜一にはハリセンボン角野卓造じゃねぇよ。あれれ、海部俊樹に「北辰斜にさすところ」の脚本家室積光るさんこと福田勝洋さんが出てるじゃあ〜りませんか。痩せてるぞ!ちいとも知らなかったわん。

 で、麻生和子役(麻生太郎さんのお母様)に夏目雅子! お美しいですな(私、この人をもって日本最後の女優と考えております)。
 そしてそして打倒吉田の寝業師三木武吉に若山富三郎。これは大変な傑作ですよ。