2008年02月05日「債権回収 基本のき」 権田修一著 商事法務 2520円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 仕事ってのは、売って終わりじゃないのよね。代金をきっちり回収してようやくけじめがつくわけ。
 「黒字倒産」という言葉をよく聞きますが、これなんか、商品を売ったはいいけど代金を回収してないために起こることですな。

 ダメな会社は回収がいいかげんですからねぇ。ダメなクラブというか、ダメなママもそう。お酒呑んでサービスしてあげたのに、売掛金が回収できない。
 で、昼とか夕方とかに回収に出かける。そのたびにごまかされたり、下手するとばっくれるようなお客もいますからね。この世界では、未回収金はホステスがかぶるのが常識(ホストもそうだよ)。

 だから、あの手この手で回収しないといかんわけよ。でないと、店なんか簡単に傾いちゃうだから。

 ソニーの営業マンだったかな。振込手数料との差違で600円回収できなかった会社に、月末、営業マンがわざわざ回収にきたことがあったんですよ。
 それ聞いて社長がびっくり。天下のソニーが600円のために営業マンを寄越した、ってね。
 で、感動してるわけだ。こういうけじめがしっかり教育できていることが一流企業の証である、というわけ。
 
 私も同感です。

 幸之助さんにしても、たまたま来客が松下の商品を欲しがったんで、帰り際に秘書室に持ってこさせたわけ。担当者はVIPなんで、代金を受けとらなかったのね。
 後ほど代金を請求するつもりだったのかもしれません。けど、これについて、幸之助さんは激怒するわけよ、お客の前で。

 商品と代金、領収書は一体で動くもの。なぜ代金を受けとらないんや? 立派な商品であればこそ、堂々と受けとらなあかんやないか。
 で、そのお客が感動するわけよ。あんなに偉くなっても、松下さんはきっちり教育してるってね。

 営業マンでいちばん大切なことは、販売教育ではありません。代金回収ですね。
 ところが、営業マンの中には売ることしか考えない人も少なくありません。こういう人は経費ばかりかけちゃう。売上よりも経費が多かったら利益が出ません。出ないけど、売上優先なのよ。
 だって、壁には売上グラフは貼ってあるけど、利益額はな〜にもないもの。まして、代金回収グラフなんて全然ない。

 でも、これがいちばん大切。会社は現金がいちばん大切。売上なんて、回収しないかぎりたんなる架空数字ですからね。

 さて、この本、弁護士が書いたとは思えないほどわかりやすく書かれてます。左頁と右頁別々に読めるようになってます。つまり、右頁には用語の解説があるわけ。法律的なフォローも右頁でしてます。

 倒産会社から自社商品を引き上げるときには、文書で同意をもらわないとあきまへん。勝手にもってくと、下手すると住居不法侵入、窃盗罪という刑事事件になってまうで・・・というように懇切丁寧に教えてます。
 まっ、関西弁で書かれてるわけではありませんけどね。

 法律的な文書のひな形まで完備。これ、営業マン教育に使ってみたら? お勧めです。250円高。