2008年03月07日「ナガオカケンメイのやりかた」 ナガオカケンメイ著 平凡社 1995円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 すみません、ちょっと徹夜してしまいました。
 しかし、やりゃできるもんだね。3日で書き下ろし1冊やっちゃいましたよ。
 これ、4月に出ます。お楽しみに。240ページ。かなり内容は深い、深すぎる。1回や2回読んだくらいじゃわからない。それじゃダメじゃん?

 さて、昨日に引き続きナガオカケンメイさんの本。で、どうあして今回は平凡社なの? 版元、換えた? まっ、よくあることだけど。

 どんな人にも「やり方」はあります。そうね、そうなのね。で、著者のやり方とは「D&DEPARTMENT PROJECT」というデザインリサイクルストアを作っていくということ。

 デザイナーの強みは、形にして見せられるという点ですな。小説家も音楽家もそう。もち、ビジネスパースンだって同じです。

 サービスには形はありません。けど、そこには価値があるんですよ。この価値は人それぞれが心の中で「形」をつくっていくわけです。
 ですから、形のない仕事というのはない。こう私は思います。

 もしないとしたら、それは淀みに浮かぶ泡沫(うたかた)のようなものなんでしょうね。

 本書は昨日のとタイトルも装丁も似てるんですけど、ちとちがう。
 どこがいちばんちがうかというと、今回は著者が取り組んでいるプロジェクトの進展(退行もあったりして)を時系列に赤裸々に紹介しているという点です。
 
 「デザインをしないデザイナー」と呼ばれる著者ならではの、新しい提案がそこにはあります。
 かつての商品価値を失って倉庫に眠っていた良品を探し出してはふたたび生命力を与えて蘇らせる、というリサイクル(といっては言葉が軽いですけど)をスタートしたわけ。

 安価なものを大量製造、大量販売する時代に警鐘を鳴らしていますが、生活者たちがそういう価値観に飢えていることをしっかり読み込んでいるところに、著者の本領が発揮されているのではないかな?
 
 「老舗家具屋が40年前に主催した家具コンテストの優勝作品を、復刻という言い方で売り出した。デザインはさておき、その行為が頂けない。たんに、商売に直結した話で終わらせてはいけない。ましてや、復刻のブーム。企業財産ともいうべき過去の代表作品をどう売っていくのか、それを考えない復刻などありえない」

 そりゃそうだ。ブームの追い風が止んだとき、そこにはなにがあるのか? これまた大量に生産され、大量に売れ残った商品なわけです・・・。
 自力で快走させる気力と覚悟。それをつくったときのエネルギーと志というものをもう1度、思い出す。
 復刻とは結局、商品のカムバックじゃないのよ。作り手、売り手の「思い」の復刻なわけなのね・・・。300円高。