2008年03月18日「貧困旅行記」 つげ義春著 新潮社 620円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 最近、つげ義春さんの本に凝ってるのよねぇ。
 あの漫画ははまりますなぁ。哀愁というか、わびさびというか、目線が低いというか、いい意味でも悪い意味でも「昭和」を感じさせてくれる絵ですよ。

 漫画もいいけど、この手の旅行記、エッセーもいいですな。正直で人間をさらけだしてますね。

 この人にとって、旅とは2つの意味があって、1つは逃避行であり、もう1つは癒し。どちらも同じなのかもしれないけど、前者はおもに彼個人の旅で、後者は家族とのそれであるような・・・。

「深沢七郎(『楢山節行』の著者)の「風雲旅日記」を読むと−−旅行は見物をしに行って帰ってくるのだが、私の場合は、ちょっとちがって、行ったところへ住み着いてしまうのだった−−というすごい旅のしかたをしているが、私も以前これと似たような旅のしかたをしたことがあった。住みつきことしなかったけれど、住みつくつもりで出かけたのである。」

 昭和43年の初秋だった。

 どうやら、九州にいくつもりだったのね。まっ、行くわけですけど、結婚するつもりで出かけてるのよ。
 その女性とは一面識もない。2〜3度手紙のやりとりとをしただけ。知ってるのは、彼女はつげ漫画のファンで、最近離婚をし、産婦人科の看護婦をしてるということだけ。

「ひどいブスなら困るけど少しくらいなら我慢しよう」だって。
 女性にとってなんだかなぁと思っちゃうけど、とにかく結婚してしまえば九州に落ち着くと考えたみたい。
 で、そこで漫画を描くのか? ちがうのね。適当な仕事ほ見つけてひっそり暮らそうとしたようです。

 漫画家として売れてなかったからなぁ。将来への不安があったと思う。

 結局、小倉で1週間待たされちゃうわけ。待ちきれなくて、杖立温泉、湯布院、湯平温泉と旅し、鄙びたストリップ劇場を梯子してんの。
 で、ストリップ嬢を誘ったりね。

「ゆきずり」が好きなんだろうなぁ。つげさんは対人恐怖症。家族のようにしょっちゅう合う人、めったに合わない人の2つはOK。けど、たまに合う人が苦手なのね。つまり、クラスメートとか会社の同僚とか。

 「ゆきずり」の人間関係がベストなわけだ。

 山梨県下部に大市館という旅館があって、そこには家族で泊まってるのね。つげさんには「ゲンセンカン主人」という作品があるけど、井伏鱒二が投宿していた源泉館はこの宿の裏。つげさんは1度も泊まったことがない。
 「ゲンセンカン主人」は暗い暗い、どちらかというと、おぞましくて怖い漫画。もち、源泉館とは縁もゆかりもない(いまでも、こちらの源泉館はあります)。名前がよっぽど気に入ったのかもね。
 
 昭和41年間から25年間にわたる旅日記。300円高。



 どうでもいいけどさ、福田首相、完全にフリーズしちゃってますな。頭も思考停止でしょ。日銀総裁人事ごときも動かせないんだから。
 ひょっとすると、安倍さん同様、放り出すかもしれませんよ。
 考えられない? 自民党が壊れる? いや、ないとは言えませんよ。