2008年04月17日「夢のまた夢 ナニワのタニマチ」 泉井純一著 講談社 1785円
ここまで書いてええんかいのぅ。わしゃ心配するで。
政治家、官僚、経営者、スポーツ選手、芸能人、検事、弁護士・・・実名のオンパレードやんけ。
しっかし、ここまで赤裸々に述べてる本てないよなぁ。
よくある暴露本とか懺悔本? いえいえ、とんでもない。これはりっぱなノンフィクション作品でっせ。しかも、恨みがましいことはなにもない。
だから、爽快にして痛快、そしてなによりも豪快。
「政界・官界のタニマチになって見返りはなんだったんだ?」
こんなふうに検事にどやされてもねぇ。この人、おごるのは子どもの頃からの習慣だからねえ。「おごることが趣味ですねん」と言っても、普通の家庭に育った検事にはわかりまへんがな。
著者は1995年、大阪国税局から査察が入ります。96年末、東京地検特捜部が動き出す。三菱石油と三井鉱山から数十億円ものマネーを吸い上げ、政官界に流した・・・泉井疑惑の張本人。
脱税、詐欺、贈賄の容疑で逮捕、起訴され、詐欺は無罪。脱税と贈賄で有罪。懲役2年、罰金8000万円の判決。
著者の人生は波瀾万丈やね。ケチでどん欲な大阪商人の家に生まれ、この父の生き方にことごとく反発。「大笑い、オゴりたおして70年!」と帯コピーにあるように、おごり癖がついたのもケチケチケチの父親を見て育ったからでしょうな。
天王寺高校から早稲田大学。ずっと補欠だったけどサッカー部。川渕三郎チェアマンは1年後輩。全日本チームの岡田監督は高校、大学の後輩。
卒業後、マスコミに進む予定が、結婚を機に関西に戻らなくちゃいけなくなった。で、宝酒造に入社。やっぱり、規格外の男ですな。いきなりトップ営業マンですよ。
いったいどこが違うのか? 創意工夫なのよね。それと、本人はひと言も書いてないけど、愛嬌だと思う。この人、宝酒造でサラリーマン人生をやっていても、きっと社長か副社長にはなってただろうね。
たとえば、サラリーマンの時。
当時、宝はビールも売ってたのよ。で、どこのメーカーも酒屋には手形で販売してた。キリンが25日、ほかは30日。で、宝は40日。けど、こんなもんじゃシェアはとれません。だれだって、キリンを扱いたいもの。
宝を使ってもらうために、勝手に「60日サイト」にしちゃいます。で、これが立ち飲み屋等でバカ当たり。
すぐ実家を継がなくちゃいけなくなるんだけど、これも父親の代とはスケールがぜんぜん違う会社にしちゃう。
27歳で独立すると、今度は大阪でガソリンスタンドの経営で大成功。1年に3店舗ずつ増やします。これには昭和シェルの支店長(後に社長)が驚いちゃう。
「なんで3店舗なんや?」
「1店舗3000万円。3年で返済するから年間1000万円」
「うんうん」
「3店舗で年間3000万円。1店舗分返済することになる。店舗を担保に融資してもらう」
「よし、わかった」
商売の才覚というのかな。「業転=業者間転売」とか「他県への出店」等、業界の掟破りもどんどんやるのよ。三菱石油や三井鉱山との関係にしても、典型的な「ウィンウィン」の関係。あちらも大儲けしたはず。
まっ、企業は検察に頼まれたんだろうけどね。
さてさて、本書にはなんといっても政治家の名前がずらり。とくに、スポンサーだった山拓さんはたくさん出てきますな。
山崎拓さん? そうそう、噂通りの人ですな。
95年、大阪国税に踏み込まれるわけ。で、資料をどんどん持ってかれる。
こうなると、政治家や官僚の名前が知れちゃう。迷惑がかかるから前もって連絡しなくちゃいけない。
「泉井さん、何でも言ってきてください。できる限りのことはしますので」(小渕恵三さん・元総理)
「心配はしてないけど気にはしている」(森喜朗・元総理)
「僕がカネをもらってないと言えば、それでお仕舞いじゃないか」「1年か1年半くらい、僕と会わないでください。あなたとは付き合わない方がいい」(山崎拓さん)
検察が押収した資料にあるだけで、著者は山拓さんに2億7000万円も渡してるわけ。それ以外にも宴会等のつけ回しは日常茶飯事。
でも、いざとなるとこんな扱い。なんで? 山拓さんに便宜を図ってもらってたから?
どうもそうじゃないんですね。この人、おごり好きで世話したことはあっても世話になったことはないの。まあ、山拓さんというのはそういう人なんだろうねぇ。
人間、やっぱり人を見る目が大切だよね。で、こんなことは著者も口を酸っぱくして周囲に語ってた。でも、逮捕されて塀の中に落ちて気づくわけさ。
これまた国策捜査? たしかにそうかもしれません。
さて、稀代のおごり好きだから、毎年、忘年会をしてきた。1000万円くらいかけてやるイベント。けど、政治家は呼ばない。なぜか? 官僚が好きだから。政治家がいると官僚はコチコチになっちゃうんだって。
タニマチ人生を何年も続けた結果、わかったこと・・・いまの政治家には日本の未来など考えている人材はいない、ということ。見識も腹もない。あるのは目先の選挙と権力欲のみ。一方、官僚は出世にぎらぎらしているけれども、勉強もしてるし話題も豊富。話していて気持ちがいい。
だから、政治家を呼ばないの。
おごることが大好きなのは、ある意味、征服欲が満たされるからだろうね。
「人が意のままに動く」というのは快感なんですよ。この快感に比べたら、ほかの快感などお話になりません。根っからのパトロンなんだろうね。
340頁、一気に読めます。300円高。
政治家、官僚、経営者、スポーツ選手、芸能人、検事、弁護士・・・実名のオンパレードやんけ。
しっかし、ここまで赤裸々に述べてる本てないよなぁ。
よくある暴露本とか懺悔本? いえいえ、とんでもない。これはりっぱなノンフィクション作品でっせ。しかも、恨みがましいことはなにもない。
だから、爽快にして痛快、そしてなによりも豪快。
「政界・官界のタニマチになって見返りはなんだったんだ?」
こんなふうに検事にどやされてもねぇ。この人、おごるのは子どもの頃からの習慣だからねえ。「おごることが趣味ですねん」と言っても、普通の家庭に育った検事にはわかりまへんがな。
著者は1995年、大阪国税局から査察が入ります。96年末、東京地検特捜部が動き出す。三菱石油と三井鉱山から数十億円ものマネーを吸い上げ、政官界に流した・・・泉井疑惑の張本人。
脱税、詐欺、贈賄の容疑で逮捕、起訴され、詐欺は無罪。脱税と贈賄で有罪。懲役2年、罰金8000万円の判決。
著者の人生は波瀾万丈やね。ケチでどん欲な大阪商人の家に生まれ、この父の生き方にことごとく反発。「大笑い、オゴりたおして70年!」と帯コピーにあるように、おごり癖がついたのもケチケチケチの父親を見て育ったからでしょうな。
天王寺高校から早稲田大学。ずっと補欠だったけどサッカー部。川渕三郎チェアマンは1年後輩。全日本チームの岡田監督は高校、大学の後輩。
卒業後、マスコミに進む予定が、結婚を機に関西に戻らなくちゃいけなくなった。で、宝酒造に入社。やっぱり、規格外の男ですな。いきなりトップ営業マンですよ。
いったいどこが違うのか? 創意工夫なのよね。それと、本人はひと言も書いてないけど、愛嬌だと思う。この人、宝酒造でサラリーマン人生をやっていても、きっと社長か副社長にはなってただろうね。
たとえば、サラリーマンの時。
当時、宝はビールも売ってたのよ。で、どこのメーカーも酒屋には手形で販売してた。キリンが25日、ほかは30日。で、宝は40日。けど、こんなもんじゃシェアはとれません。だれだって、キリンを扱いたいもの。
宝を使ってもらうために、勝手に「60日サイト」にしちゃいます。で、これが立ち飲み屋等でバカ当たり。
すぐ実家を継がなくちゃいけなくなるんだけど、これも父親の代とはスケールがぜんぜん違う会社にしちゃう。
27歳で独立すると、今度は大阪でガソリンスタンドの経営で大成功。1年に3店舗ずつ増やします。これには昭和シェルの支店長(後に社長)が驚いちゃう。
「なんで3店舗なんや?」
「1店舗3000万円。3年で返済するから年間1000万円」
「うんうん」
「3店舗で年間3000万円。1店舗分返済することになる。店舗を担保に融資してもらう」
「よし、わかった」
商売の才覚というのかな。「業転=業者間転売」とか「他県への出店」等、業界の掟破りもどんどんやるのよ。三菱石油や三井鉱山との関係にしても、典型的な「ウィンウィン」の関係。あちらも大儲けしたはず。
まっ、企業は検察に頼まれたんだろうけどね。
さてさて、本書にはなんといっても政治家の名前がずらり。とくに、スポンサーだった山拓さんはたくさん出てきますな。
山崎拓さん? そうそう、噂通りの人ですな。
95年、大阪国税に踏み込まれるわけ。で、資料をどんどん持ってかれる。
こうなると、政治家や官僚の名前が知れちゃう。迷惑がかかるから前もって連絡しなくちゃいけない。
「泉井さん、何でも言ってきてください。できる限りのことはしますので」(小渕恵三さん・元総理)
「心配はしてないけど気にはしている」(森喜朗・元総理)
「僕がカネをもらってないと言えば、それでお仕舞いじゃないか」「1年か1年半くらい、僕と会わないでください。あなたとは付き合わない方がいい」(山崎拓さん)
検察が押収した資料にあるだけで、著者は山拓さんに2億7000万円も渡してるわけ。それ以外にも宴会等のつけ回しは日常茶飯事。
でも、いざとなるとこんな扱い。なんで? 山拓さんに便宜を図ってもらってたから?
どうもそうじゃないんですね。この人、おごり好きで世話したことはあっても世話になったことはないの。まあ、山拓さんというのはそういう人なんだろうねぇ。
人間、やっぱり人を見る目が大切だよね。で、こんなことは著者も口を酸っぱくして周囲に語ってた。でも、逮捕されて塀の中に落ちて気づくわけさ。
これまた国策捜査? たしかにそうかもしれません。
さて、稀代のおごり好きだから、毎年、忘年会をしてきた。1000万円くらいかけてやるイベント。けど、政治家は呼ばない。なぜか? 官僚が好きだから。政治家がいると官僚はコチコチになっちゃうんだって。
タニマチ人生を何年も続けた結果、わかったこと・・・いまの政治家には日本の未来など考えている人材はいない、ということ。見識も腹もない。あるのは目先の選挙と権力欲のみ。一方、官僚は出世にぎらぎらしているけれども、勉強もしてるし話題も豊富。話していて気持ちがいい。
だから、政治家を呼ばないの。
おごることが大好きなのは、ある意味、征服欲が満たされるからだろうね。
「人が意のままに動く」というのは快感なんですよ。この快感に比べたら、ほかの快感などお話になりません。根っからのパトロンなんだろうね。
340頁、一気に読めます。300円高。