2008年05月25日「異形の大国 中国」 櫻井良子著 新潮社 1575円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 しかし、困った隣人ですな。えっ、引っ越しオバサン? いえいえ、中国のことですよ。
 「詫びず、認めず、改めず」と帯コピーにありますけど、こんな隣人がいたら大変でっせ。引っ越しオバサンは警察が逮捕し、裁判も受けさせ、もしかしたら病院にも収容されたかもしれません。
 けど、相手が国家・・・となるとねえ。北朝鮮は「ならず者国家」? いやいや、本書を読むと、中国のほうがふさわしいことがよ〜くわかりますよ。 

 1949年、チベット建国直後から中国は軍事侵攻。120万人のチベット人を虐殺(この数字はチベット民族の2割に当たる)。以来、チベットは主権を奪われ、従属を強いられているわけ。

 この行為に対して、とうの中国はなんて言ってるかというと・・・「平和解放」のひと言。

 チベット人はたまらないだろうね。チベットの中心地ラサには中国から鉄道が敷設され、道路が完備し、ホテルが建設され、一見、都市として近代的に発展しているように見えますわな。
 さぞや、チベット人の生活も豊かになったかと思えば、潤っているのは中国人だけ。チベット人600万人に対して、入植した中国人はなんと750万人。こりゃ植民地です。

 少しでもまともな仕事にありつきたいなら中国語を覚えなければならないのね。
 中国も考えたね。こうすりゃ、チベット人は自然と母国語を捨てて中国語になじもうとするはず・・・中国政府は合理的にチベット文化を淘汰する仕掛けを施したわけか。

 ダライ・ラマ14世は、独立を求めないかわりにチベット人の文化、民族を尊重してもらいたいと中国政府に申し入れたんだけど、この提案を無視して、あい変わらず弾圧は続いてるわけ。
 今回、オリンピック直前のチベット暴動によって世界に実態が報道されてしまったね。

 実は、この傍若無人の中華思想は中国に根付いたもので、ちょっとそっとでは改善されるわけないと思うよ。
 だって、中国史をちょっと振り返るだけでもわかるもの。

 1950年から3年間、中国は北朝鮮とともに北緯38度線を越えて韓国を侵略。これだって、「アメリカ帝国主義が国連軍を指揮して朝鮮を侵略した。彼らは38度線を越えてまっすぐ中国辺境まで攻め上がり、わが国の安全をひどく脅かした」って、教科書で子どもたちに「歴史」を教えてるわけ。
 もちろん、ブッシュ大統領は抗議したけれども、改まる気配はいっこうにない。

 1954年には台湾で蒋介石の国民党軍と、62年にはインド、69年にはソ連、79年にはベトナム。次々と戦争を仕掛けてるのね。この間、59年に僧侶に大弾圧を加えてチベット動乱を引き起こしてもいます。

 とっても暴れん坊な国なのよ・・・ホントは。

 で、メンツを異常に重んじてるからけっして謝罪しない。認めない。当然、改めない。
 日本に対しても同じですな。05年の反日暴動による日本大使館、総領事館、日本企業への破壊行為、04年の領海侵犯、東シナ海の天然ガス、油田の一方的な開発についても一貫して謝罪してないもの。

 福田さんも胡錦涛さんと会ったときに、「あれ、どうなりました?」とひと言、確認すれば良かったのよ。まあ、あの人、親父さんと一緒で中国には変に腰砕けだからなあ。無理っすな。

 さて、引っ越しオバサン以上に困ることがあんのよ。

 93年に中国は石油輸入国に変身してるのね。で、それ以来、中国はなりふりかまわず資源獲得に突っ走ってるわけ。ビルマやイラン、それにアフリカだけじゃないよ。もうどこでも。
 で、経済大国への道を歩もうとしてるわけさ。外貨準備は世界一になったしね。
 
 まあ、たとえていえば、静かな住宅地で暮らしていたら、ある日、突然、工場ができて、毎日、騒音、汚水、排ガスなど、たっぷり公害を出されちゃってる・・・という感じ?

 「オランダ環境評価機関」によると、中国は06年にはすでに、二酸化炭素排出量でアメリカを抜きさり、世界一になってるんだって。
 まあ、そんな調査見なくたってわかるわな。でも、ほら、「認めない」国だからね。証拠を突きつけないと話にならんわけだよ。

 とくに海洋汚染は想像を絶する酷さだって。遼東湾、渤海湾、長江口、杭州湾をはじめ、中国の近隣海域の55%が汚染されちゃってる。
 どのくらい酷いかというと、海にはさざ波が立たずコールタールのようにねっとりネトネト。

 検出データをチェックすると、凍り付いちゃう。無機窒素17倍(海水基準値との比較)、活性リン酸塩23倍、石油類14倍、鉛49倍、銅11倍、水銀18倍・・・さらにカドミウム、タリウム、アンチモンなどの劇薬による汚染まで「全海域」にわたって広く、かつ「普遍的」に検出されてるそうです。ダイヤとか金とかならいいんだけどさ。

もちろん、地元の人間はよくわかってるから、天津の中国人は目の前の渤海湾で獲れた魚介類なんか口にしない。で、ほかの海で水揚げされたものを買う。けどさ、所詮、中国でしょ? こういうの、五十歩百歩というんでないかい?

 当然、中国政府はこれらのデータに対して反駁することを忘れてない。けどさあ、反駁して海がきれいになればいいんだけど、そんなことはないざんしょ。

 この「不都合な真実」をどうすんだろ? 経済と軍事一本槍だもんなあ、あの国は。それに、いまはメダルが加わったか。

 かつて、高度成長期の日本ではイタイイタイ病や水俣病、四日市喘息なんかがあったよね。たくさんの人が苦しんできたし、死んできた歴史があります。
 日本人ならどれだけ悲惨かわかってる。詫びなくていいし、認めなくていいから、改めてもらわないと・・・中国の子どもたちが可哀想だよね。

 困ったことに、隣国日本はこれらの汚染海水、汚染空気が流れ込んできちゃうわけ。中国から届くのは毒餃子だけじゃないの。鳥インフルエンザだけじゃないのよ。
 いちばん大切な空気と水・・・日本海沿いに巨大な空気清浄機と浄水器をとりつけんとあかんな。300円高。