2008年07月10日「逆臣 青木幹雄」 松田賢弥著 講談社 1680円 

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

「国家よりも、派閥(平成研)よりも、自身の飽くなき権力欲を満たすことが第一なのだ。国民に真っ赤な嘘つくことくらい、青木にとっては愛用の煙草チェリーで煙を吐くぐらいのことでさしたることはではないだろう」

 青木とは青木幹雄参院議員のこと。参院のドンだ。

 元首相竹下登の一介の秘書に過ぎなかった彼が島根県議に当選したのは1967年。以後5期20年近くにわたって、県議兼秘書として竹下の地元城代家老をつとめる。
 89年、リクルート事件で竹下総理は狙い打ちにされ、4月、総理の犠牲になるようにもう一人の青木。竹下の金庫番だった青木伊平さんが自殺するわけ。

「二人の青木は犬猿の仲だった。伊平が死んだことで、青木は竹下の一番の側近になった」

 平成研という竹下、橋本、小渕と続く派閥を率いる中、突然、小泉内閣にすり寄り、「派閥を売り渡した」と周囲を唖然とさせた。そういえば、野中広務さんが政界引退時に「裏切り者」呼ばわりしていたことを思い出すねえ。

 この人、小渕内閣の官房長官時代、脳梗塞でICUに担ぎ込まれた現職総理になりかわって、「過労で入院」「私に首相臨時代理に就任するように」と真っ赤な嘘をついて、采配をふるおうとしたわけ。
 で、意のままになる森を後継首相につけるわけ。

 ここから、小泉、安部、福田・・・と清和会の首相が続くわけですけど、キングメーカー森の背後に隠れて、糸を引いているのはこの人だわな。

 裏と表の顔を使い分けて、面従腹背。強いものには平身低頭し、弱いのには脅かす。「道路公団民営化」「郵政民営化」を骨抜きにする、と小泉に一筆書かせると、野中・古賀の「抵抗勢力」に口約束。「無理だったわな」と結局、彼らも裏切るわけ。

 一方、地元島根の道路・トンネル工事が中断すると、道路公団総裁に「秘書」と称して自ら電話。「あんたが死ぬか、こちらが死ぬかだ」と工事続行を迫る。まあ、政治家なんてこんなんだろうとは思うけど、田舎には産業がないから、こういう税金に群がることが彼なりの「政治」なんでしょうな。

 2001年、KSD事件で失脚する村上正邦さん(元参議院自民党議員会長)が正論を吐いてますな。それは参議院で郵政法案(民営化)が否決された時のこと。
「参議院での採決に不服だからと衆議院解散となった瞬間、二院制としての参議院は死んでしまった。参議院の責任者である青木さんはに見識はあるんでしょうか。本来、郵政法案は参議院で否決されたのですから、国会法に基づき、両院協議会に議決を求めるべきです。ところが国会法は無視されてしまった」
「すべては参議院議員会長の青木さんが責任を放棄し、小泉さんと解散に突っ走っていったからです」

 青木さんは小泉総理(当時)が本気で衆院解散をすることを知っていたんでしょうな。しかも、郵政民営化に反対する自民党議員を除名し、刺客をおくって政治家としての息の根を止めようとすることもわかっていた・・・はず。なぜなら、「敵」に対して小泉総理がしてきたことはそのまま青木幹雄という政治家の行動スタイルだったからだろうね。

 この本、「青木幹雄」という政治家をあらゆる角度から丸裸にしてるんだけど、一つ気づくのは、同僚からの恨み辛みが少なくないこと。
 これ、どういうこと?

 野党の政治家に対して攻撃することはよく聞くけど、身内ともいうべき同僚議員たちから「権力の権化」「政策なし。野心だけ」「欲のためならなんでもやる」・・・とまで言われるのは珍しいわな。
 
 けど、そのくらいがりがり亡者じゃないと政治の世界では生き抜いていけないんだろうね。ふつうの人間が住む世界ではありませんよ。

 政治の世界で信じられるのは自分しかいない。裏切りは世の常。利用できるものはすべて利用する。面従腹背と罠で虎視眈々と勢力を拡大する。政治家は戦国時代に生きている・・・。
 こういうことをいちばん理解している政治家なのかもしれませんな。

 ドラマ「CHANGE」の寺尾聰さんが演じている政治家は、きっとこの人がモデルなんだろうなあ。足を棒にしてインタビューしていることが伝わってくる力作ですな。300円高。



 どうでもいいけどさ、山本モナさんと巨人の二岡選手が五反田のラブホテルで不倫だとか・・・懲りない女性やねえ。恋多き女性ちゅうの? この人、32歳らしいけど、私、初めて見たときから、おばさんにしか見えんのよ。実物は若いんやろか?