2008年08月08日夏休みの特別読書道場! 「雨あがる」 山本周五郎著 小学館 2100円
毎日、暑い日が続きます。中国ではいよいよオリンピックの開会式。
世界が注目するのは、記録云々よりもテロがあるかどうかでしょう。中国の警察・公安はメンツにかけても阻止するでしょう。後々、「ジャッカルの日」のような本が出てきそうですな。
さて、「夏休みの特別読書道場」を開講したいと思います。
人間が学ぶべきことは2つあります。原理原則研究会のコンセプトでもありますが、1つは形而下の勉強=実学。もう1つは形而上の勉強=美学です。
ビジネスパースンにとって、実学はとても大切なことですよね。経営書、ビジネス本など、「10分で学べる○○」の類の本で学んでいる人も少なくないでしょう。夏休みに勉強、というと実学が目に浮かびます。
しかし、あえて、美学を特集したいと思うのです。とくに人の上に立っている人、これから立とうと考える人には、ぜひ美学を学んでもらいたいのです。
不思議なことに、立派な人ほど美学と実学のバランスが整っています。最初は調子が良くても先細りになる人は実学優位、美学劣位であることに気づきます。
なぜでしょうか?
たとえば、あなたがとっても仕事ができる人だとします。すると、どんなに上司が実学の人であっても、この人を支えていこう、この人について行こうとは考えないでしょう。「才」とはしょせん、そのようなものに過ぎません。
逆に、美学の人であれば、支えていこう、ついていこうと考えるのです。「人望」とはそういうものです。
「できる人」より「できた人」になる。そう考えてもいいかもしれません。
この夏休みの特集では、そんな本をいくつかご紹介できればと考えています。
さて、まず最初は「雨あがる」です。全集や単行本でもいいですが、「山本周五郎中短編秀作選集5 発つ」の中からご紹介しましょう。
黒沢脚本の映像化でも話題になりましたからご記憶の方も少なくないでしょう。主演は寺尾聰さん、宮崎美子さんでしたね。でも、いちばん最初に映画化したのは「道場破り」という作品ですよ。三沢伊兵衛役の長門勇さんは名コメディアン。その第1作主演映画ですから古い古い。参考までに妻のたえ役は岩下志麻さんでした。原作は「たよ」なんですけどね。
伊兵衛はめっぽう腕がの立ちます。その腕を見込まれて、いくつもの藩の指南役を仰せ使う人物。
けど、謙虚すぎるほど謙虚。この謙虚すぎる態度が災いします。あっという間に剣術で負けた相手に伊兵衛のほうが過度に恐縮するあまり、かえってバカにされたと感じてしまうのです。
せっかく藩の指南役となったところで、前任者から泣き疲れるとさっさと辞退する始末。どうも世渡りが巧くないのです。
浪人となって7年。長雨で止められた安宿。今日の食べ物にも事欠く人間たちが集まっています。無為な喧嘩、言い争い、憎しみあってもいないのに対立する・・・殺伐とする中、彼は賭け試合で儲けた金で宴会を企画します。
そんな彼が、藩士の私闘を仲裁した力量を見込まれて指南役にという声がかかります。しかし、結局はこの賭け試合が原因で破談となります。
賭け試合は常々、たよからも禁止されていました。悔やむ伊兵衛は次の藩に望みをかけますが、破談を聞いて逆にたよは笑うのです。
(わたくし、このままでもようございますわ。他人を押しのけず、他人の席ほ奪わず、貧しいけれど真実な人たちに混じって、機会さえあればみなに喜びや望みをお与えなさる、このままの貴方も立派です)
強いだけでは人はついてきません。そこに底抜けの優しさがなければ。
伊兵衛もたよも人の長所ばかりを見て暮らしています。しょせん、人は哀しい生き物だ。その哀しさに温かい眼差しを注ぐのです。人の痛みをわが痛みとして感じる。おかげで損ばかりしています。
「けど、それでいい」と覚悟して生きるのです。
忙しさにかまけてどこかに置いてけぼりにしてしまったものを思い出させてくれる1冊です。ぜひぜひ。500円高。
原作をかなりデフォルメしてますけど、丹波哲郎さんの存在が陰と陽を醸し出してますな。40年以上も前の作品ですよ。
黒澤明脚本を映画化。原作にほぼ忠実ですな。藩主が追いかけることなど原作にはありませんけどね。
世界が注目するのは、記録云々よりもテロがあるかどうかでしょう。中国の警察・公安はメンツにかけても阻止するでしょう。後々、「ジャッカルの日」のような本が出てきそうですな。
さて、「夏休みの特別読書道場」を開講したいと思います。
人間が学ぶべきことは2つあります。原理原則研究会のコンセプトでもありますが、1つは形而下の勉強=実学。もう1つは形而上の勉強=美学です。
ビジネスパースンにとって、実学はとても大切なことですよね。経営書、ビジネス本など、「10分で学べる○○」の類の本で学んでいる人も少なくないでしょう。夏休みに勉強、というと実学が目に浮かびます。
しかし、あえて、美学を特集したいと思うのです。とくに人の上に立っている人、これから立とうと考える人には、ぜひ美学を学んでもらいたいのです。
不思議なことに、立派な人ほど美学と実学のバランスが整っています。最初は調子が良くても先細りになる人は実学優位、美学劣位であることに気づきます。
なぜでしょうか?
たとえば、あなたがとっても仕事ができる人だとします。すると、どんなに上司が実学の人であっても、この人を支えていこう、この人について行こうとは考えないでしょう。「才」とはしょせん、そのようなものに過ぎません。
逆に、美学の人であれば、支えていこう、ついていこうと考えるのです。「人望」とはそういうものです。
「できる人」より「できた人」になる。そう考えてもいいかもしれません。
この夏休みの特集では、そんな本をいくつかご紹介できればと考えています。
さて、まず最初は「雨あがる」です。全集や単行本でもいいですが、「山本周五郎中短編秀作選集5 発つ」の中からご紹介しましょう。
黒沢脚本の映像化でも話題になりましたからご記憶の方も少なくないでしょう。主演は寺尾聰さん、宮崎美子さんでしたね。でも、いちばん最初に映画化したのは「道場破り」という作品ですよ。三沢伊兵衛役の長門勇さんは名コメディアン。その第1作主演映画ですから古い古い。参考までに妻のたえ役は岩下志麻さんでした。原作は「たよ」なんですけどね。
伊兵衛はめっぽう腕がの立ちます。その腕を見込まれて、いくつもの藩の指南役を仰せ使う人物。
けど、謙虚すぎるほど謙虚。この謙虚すぎる態度が災いします。あっという間に剣術で負けた相手に伊兵衛のほうが過度に恐縮するあまり、かえってバカにされたと感じてしまうのです。
せっかく藩の指南役となったところで、前任者から泣き疲れるとさっさと辞退する始末。どうも世渡りが巧くないのです。
浪人となって7年。長雨で止められた安宿。今日の食べ物にも事欠く人間たちが集まっています。無為な喧嘩、言い争い、憎しみあってもいないのに対立する・・・殺伐とする中、彼は賭け試合で儲けた金で宴会を企画します。
そんな彼が、藩士の私闘を仲裁した力量を見込まれて指南役にという声がかかります。しかし、結局はこの賭け試合が原因で破談となります。
賭け試合は常々、たよからも禁止されていました。悔やむ伊兵衛は次の藩に望みをかけますが、破談を聞いて逆にたよは笑うのです。
(わたくし、このままでもようございますわ。他人を押しのけず、他人の席ほ奪わず、貧しいけれど真実な人たちに混じって、機会さえあればみなに喜びや望みをお与えなさる、このままの貴方も立派です)
強いだけでは人はついてきません。そこに底抜けの優しさがなければ。
伊兵衛もたよも人の長所ばかりを見て暮らしています。しょせん、人は哀しい生き物だ。その哀しさに温かい眼差しを注ぐのです。人の痛みをわが痛みとして感じる。おかげで損ばかりしています。
「けど、それでいい」と覚悟して生きるのです。
忙しさにかまけてどこかに置いてけぼりにしてしまったものを思い出させてくれる1冊です。ぜひぜひ。500円高。
原作をかなりデフォルメしてますけど、丹波哲郎さんの存在が陰と陽を醸し出してますな。40年以上も前の作品ですよ。
黒澤明脚本を映画化。原作にほぼ忠実ですな。藩主が追いかけることなど原作にはありませんけどね。