2008年10月21日「素晴らしき哉、人生!」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 日銀がシビアな景気判断を下しましたけど、まあ、実体経済の中で生きる私たち庶民としては、とっくの昔にひしひしと感じていましたよね。

 今日の日経平均は昨日のダウや商品相場の好調を受けて全面高ですけど、明日は暴落でしょうな。忘れてもらったら困るがな。リーマンの膨大なCDSの値付け。早い話が損失の確定は今日じゃなかった?
 マーケットはあの程度の下落で大底打ったと思ってるのかな。ちと不思議です。

 こういう世界的うつむき加減の時代に必要なことは「希望」です。♪明日という字は「明るい日」と書くのね♪です。「アニー」じゃないけど♪l love ya tomorrow♪でんがな。
 アントニオ猪木さんはいいこと言ってます。こんな時代でも、「元気があればなんでもできる!」って。アントキの猪木さんも言ってます(違うか!)。
 これ、ホントにそうだと思いますよ。人間の意思の力って凄いもんなあ。

 さて、「サブプライム問題」はだんだん大きくなる津波のようなものですけど、本質は金融機関&格付機関のいかさま経営にあります。
 これがトラブったツケがいま、世界中に波状攻撃を仕掛けているというわけです。

 07年2月、住宅ローンの破綻が見過ごせなくなるレベルまで現実化し、不動産市場が一挙に冷え込みます。
 07年7〜8月はサブプライムローンが証券化され、いろんな金融商品に紛れ込んで、いったいどこがどれだけ損失を出してるのかわかんない・・・疑心暗鬼が「クレジット・クランチ」を招きました。
 08年は不良債権のロスを隠せない。マーケットが売りを浴びせる。結果、さらに債務超過・資本不足が露呈されるという「キャピタル・クランチ」へと飛び火してしまいました。

 で、いま、マルチ商法みたいなインチキシステムの胴元(投資銀行・金融機関)へとブーメラン効果。このマネーテロが世界中にばらまかれた結果、実物経済たる優良企業や、世界中の政府を巻き込み、いわゆる、「コンフィデンシャル・クランチ」へとつながってきたわけです。

 で、ウォール街のガリガリ亡者が次々と実質的に経営破綻へと追い込まれていったわけですね。

 さて、この映画。あの1929年の大恐慌前夜を舞台にしています。
 29年に651の銀行が、30年には1352行、31年には2294行が消えました。32年にはカウントするのも嫌なほどの破綻が繰り広げられます。 全米48州(当時)のうち、銀行が機能していたのは14州のみ。

 銀行が機能しなくなるとどうなるか? 庶民が勝手に物々交換するわけ。たとえば、鶏とか靴下で払うとかね。なんか、これ、「わらしべ長者」みたいで面白そうだけど、実際は大変ですよ。

 で、フーバー大統領からフランクリン・ルーズベルトに代わるわけですね。教科書で習ったテネシーダム開発事業とか、いわゆる、ケインズ流の公共事業にトライするわけですけど、実質的に復活するきっかけは第二次世界大戦でした。
 戦争は死に体の経済回復には最高のカンフル剤だもの。戦争になれば、超インフレになりますからね。特需で景気が沸騰しますもの。

 この映画の主人公はコツコツコツコツ、庶民の味方として働く住宅貯蓄貸付組合のリーダー(ジェームズ・スチュアート)。
 この男が町を牛耳り、庶民から富を収奪するハゲタカファンドの親玉みたいなヤツと対決します。

 でも、8000ドル紛失して、この嫌な相手に救いを求めるわけ。もちろん救ってなどくれません。これ、幸いと政治家や役人を使ってつぶしにかかるわけ。で、「大言壮語したのはどこのどいつだ? ざま見ろ」と追い返されちゃう。

 最後の手段として生命保険をポケットに橋から飛び降りようとするわけですけどね。先に飛び込んだヤツがいる。それが老いぼれの落ちこぼれ天使・・・。
 2時間13分もある長尺の映画なんだけど、飽きませんな。あのスピルバーグがベスト映画と評し、トリフォーが若い頃、フランス中の映画館にこれを掛けろと談判したというのは有名な話。たしかに、それだけの価値はあります。
 とくに、いま、元気が無くてギリギリまで追い込まれてる経営者にはぜひ見て貰いたいです。

 「この世に生まれてこなければよかった」とまで落ち込んだ人間が、なにかをきっかけにして目の色を変えます。こんなこと、あると思います(天津か!)。

 昔、変なタイトルって思ったんだけど、「It's A Wonderful Life」の直訳なのよ。まあ騙されたと思って見てみてよ。なにしろ、こんな名作が500円で売ってるんだからさ。こりゃ見なきゃ損だわな。