2008年11月14日「間違いだらけの経済政策」 榊原英資著 日本経済新聞出版社 893円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 日経ウェブで連載中の「社長の愛した数式」ですが、なんと連日9万人ものアクセスがあり、日経サイドがびっくり。すべてのコラムの中でダントツ1位となったそうです。これまで3万人の読者(それでも1位!)だったんですから当然でしょう。
 どうやらリーマン破綻後、一気に増えてしまったようです。
 
 韓国での翻訳本もとうとう20万部を超え、今月、日韓同時発売の新刊書が発売されます(といっても、日本の版元は非力で12月発刊がやっとですけど)。

 なんか小さな変化が胎動しているな、という感じがします。

 さて、今日からワシントンで金融サミット。麻生さんも束の間は「定額給付金問題」から逃げられますな。
 今朝はNYダウが高騰してますから、日経平均株価も堅調に上昇するでしょう。で、金融サミットが終わってから暴落したりして・・・そうならないことを祈るばかりです。

 けど、すべての商品が落ちるときは金価格も落ちる。すべての価格が上がるときも金価格だけは落ちる。
 なぜか? 年内解約締切が15日と設定されているヘッジファンドの換金売りが続いてるから?

 それもあるでしょうけど、主因は先に述べた通り、「金キャリートレード」にあります。
 連銀の金貸出による金融機関支援。日本がやってきた銀行支援のための0金利政策のバリエーション。で、本来、最高値をつけてもいい金価格が不当な低価格に陥れられている・・・と考えるべきでしょう。
 なぜ、そんなことするの? ドル防衛のためですね。ということは、円高阻止のためでもありますね。

 けど、いまの円高なんてCPIで調整したら、そんなにたいしたことはありません。80円くらいでも慌てることはありません。いままで円高で苦しめられてきた輸出企業にしても対策はきちんと講じられているんです。

 私から見れば「苦しい振り」をしてるだけにしか見えないんですけどね。まあ、具体的な企業の対策については12月に入ってから「社長の愛した数式」で述べましょう。来週水曜日更新分は「パナソニックと三洋電機の戦略」について述べてますから、お楽しみに。

 さてさて、財務省の元審議官、ミスター円と異名をとった榊原さんの最新刊です。

 いま、海外はインフレ。にもかかわらず、日本国内はここしばらくデフレが続いてますね。経済成長率にはCPIが影響しますから、他国と比較すると、デフレが足を引っ張りますわな。

 けど、著者は「日本ほどでないにせよ、米国もヨーロッパも東アジアの製造業、インドのIT産業などの影響を受けディスインフレ現象の傾向にある」「インフレとデフレの共存」と述べてます。

 このインフレとデフレの共存とは「価格構造の変化=価格革命」のことですな。
 20世紀末まではハイテク製品は希少品でした。で、資源やエネルギーは安価で大量に購入できるコモディティでした。いまや逆転。まあ、このへんは「レアメタル」という表現でもわかりますわな。

 この価格革命の変化に、金融システムの構造変化が重なっているわけです。

 従来のマクロ政策では、0金利政策や貨幣の潤沢な供給をせよという話か出てくるでしょうけど、これ自体がナンセンス。というのも、このモデルの前提は1財1価格。1つの財と価格に対する1つの貨幣量と1つの金利ということが前提で機能する政策なんですね。

 前提となる構造が大きく変化しているのは、過去のマーケットくむ政策でいくら論じても効果はないよ、というのが著者の主張です。

 では、どうすればいいの? ここから先は本書をチェックしてみてください。300円。