2009年01月24日「ミッドナイト・エキスプレス」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 若気の至りっちゅうのかね。ま、ハシシ(麻薬)をしたがるのはわかるけど、元々、法律で厳罰とされてるのに、わざわざやってとっつかまえられたら死刑にされても文句いえないでしょ?

 いったん決められた刑を服役してそろそろ満期というときになって、もう1度チャラにして「やり直し」つうのは国としてどうなってるのかね?

 1970年10月、トルコのイスタンブール。銀紙に包んだハシシを身体中にテープで巻いて友達への土産物にしようと考えた青年ビリー・ヘイズ。
 検査を運良くすり抜けてホッとしたのもつかの間。テロ事件が5日間続けて発生してた空港では、「自爆テロ侵入」の情報で、機内搭乗直前、テロ対策班が徹底した検査を始めるわけ。で、コイツ、そのとばっちりで逮捕されちゃった。

 バカなヤツ。

 脳天気にのほほんとしてたら、思わぬ厳しい展開にあわてふためくわけ。
 
 米国ほどトルコは自由じゃない。つうか、比べ物にならない前近代国家。裁判も刑務所も前近代。「まさか」という連続で、ビリーも青ざめるわけ。

 そのうち、米国から父親が駆けつけるんだけど、結局、5年以上の懲役を喰らうワケ。弁護士曰く、「勝ったも同然だ。終身刑だったんだから」。

 ひどい刑務所でね。それでも、5年経てば出られるんだけど。そこが70年のトルコ。執拗な検事がどうしてもビリーを終身刑にして、麻薬撲滅に懸命だという国の威信を回復したいわけね。先進国つうか、まともな国は一事不再理の原則があるけど、そこが70年のトルコ。ホントに終身刑になっちゃうわけ。



 精神的にもまいったビリーが考えたことは「ミッドナイト・エキスプレス」よ。これ、刑務所用語で「脱獄」のこと。何回もトライすんだけどね。失敗するわけ。

 で、最後の最後にやった脱獄は・・・刑務所の正面から堂々と出ること。いったいどうやって? それは映画を観てちょ。

 ところで、この映画は実話です。ニクソン政権下の米国とトルコは冷戦でしたからね。いわば、政治の犠牲になったようなもの。

 そうそう、沢木耕太郎さんの「深夜特急」はこの映画のタイトルからとったもの。
 タクシードライバーからハシシを買ったあそこの店は「プディングショップ」じゃなかったか? 原作をチェックすると、ビンゴ。映画を久しぶりに観ると、膝はガクガク、震えが止まらなかったとか。

 つまり、「若気の至り」と簡単に振り返って言えるけど、いま考えると、あのビリーと自分とどれだけの差があったのか? もしかすると、自分がトルコの刑務所で終身刑にされてたかもしれない、つうわけよ。
 
 ビリーがとっつかまたトルコは、実際にハシシをやって海外に持ち出そうという現行犯だったから文句は言えませんよ。けど、もアジアのあちこちの国ではいまだに悪徳警官が旅行者から金を巻き上げようといいがかりをつけるのが日常茶飯ですからね。「若気の至り」って怖いのよ。

 それでも、若さというのは冒険と同意語だからね。やらないで後悔するよりやって後悔したほうがええわな。