2009年03月09日「R25のつくりかた」 藤井大輔著 日本経済新聞出版社 893円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 リクルートのフリーペーパー「R25」ですな。
 2004年7月1日創刊。毎週55万部発行。東京、神奈川、千葉、埼玉の鉄道、コンビニ、書店などのスタンドで無料配布されてる、とのこと。52ページ構成。通勤電車というより帰りの車内で読みきるサイズ。1駅分のコンパクトを心がけているとか。
 「R25」という通り25歳から34歳までの男性。広告のターゲットとしてはほぼM1層ということになります。

 実は、私、手に取ったことないんです。フリーペーパーだから? 新聞すべてチェックしてるから? いやいや、いつ発行されるか知らないから、いつもラックが空っぽなのよ。そんだけ。

いまの時代、たしかに情報が氾濫しています。氾濫しているわりには、ものを知らない人が多すぎる。そう感じませんか?

著者は初代編集長。まずは100万部を目指したといいます。
 そのためのマイルストーンは3つ。
1テスト版のハケ率が7割を超えること。
2ターミナル駅の改札近くに配布ラックを置けること。
3大手広告主の広告を取れること。
 つまり、リピーターを高値で確保すること。普及基地をきちんと確保すること。そして、広告誌としての高いポジションを得ること、ということになりますな。

 けどね、これ、「とんでもなく高いハードル」なのよね。なぜなら、ターゲットが・・・M1だから。
 この層の特徴は、テレビ見ない、新聞読まない、本読まない。早い話が、草食動物に肉を食わせるようなものなのね。
 じゃ、ターゲットを換えたらどやねん? ところが、この広告誌の言い出しっぺたちがこんなことを言う。

「だって空いてるじゃないですか?」

 活字を読まない層だからこそ、逆に潜在的な可能性が詰まっているのではないか、というわけですね。空いてるからこそ一番乗り。創業者利益が得られるわけ。
 で、いろいろ知恵を絞ります。調査会社を使って調べます。

 すると、奇妙な結果が得られるのよ。「新聞は日経を読んでる」「雑誌は日経ビジネス、ダイヤモンド、東洋経済」・・・? テレビ見ないといいながら、「ワールドビジネスサテライト」「ガイアの夜明け」だと。
 つまり、バカと思われたくないから、ついついこんな回答しちゃったというわけ。
これ、わかるなあ。友人に某大手通信社のカメラマンがいるんですけど、いつも出勤時に英字新聞を小脇にに挟んでる。ところが、奥さん曰く、あれ、ポーズなの。英語できないもん、彼。

 こうなりゃ、本人たちを呼び出してグループインタビューだ。すると、最初はごまかしてたんだけど、ついつい本音が飛び出てくるわけ。
 そりゃ新聞読みたいよ、けど、ちょっとというか、かなり難しいし、どこから読んでいいかわかんないし、そもそも、新聞のハードルが高いし、使っている言葉が日常的じゃないし、自分たちより年上にってるような気がする。自分たち向けじゃないからしっくりこない。読んでみたいけどやっぱり読む気がしない・・・だって。
わかるなあ、その気持ち。

 彼らに身近なインターネットでも、ニュースは手に入ると思う。けど、深い背景や関係性というのは受け身では無理だよね。次から次へとネットクルージングでもしてもらわないとね。
 事実、彼らもニュースはネットでしっかりチェックしてるわけ。だけどそれはあくまでも点情報なのよ。点と点とを結びつけてこうなるんだ、という関数的な思考は無し。だから、消化不良になってるわけ。

 一言で言えば、情報を瞬時に大量に処理することに疲れてるわけ。

 彼らを取り巻く環境つうのは、ちょっとしんどいと思うね。といっても、彼ら自身は比較対照するものがないからわかんないと思う(ま、これがある意味、彼らの強みにもなるんだけど)。
 バブルがはじけて20年。バブルの実体験もない(参考までに「うちにバブルは来なかった」というのがわが家では通説となっております)。
 下手すると、子どもの頃はどん底の時代。中には途中で私立から公立に移ったという人も少なくないかも。家で聞く会話は景気がどんどん悪くなる話ばかり。明日は必ず今日よりいい・・・とはとても思えない世代。

 お互いにそれがわかってるから、あえていわない。重要なことほど相談しない。回答することが重荷になるとわかってるから。そんな心配りはできる。

テレビ、雑誌、ネット・・・「面白い」と思えるものはたくさんある。だから、考え方を改めた。これ以上、お腹いっぱいの人に無理矢理与えても受け付けない。「面白い」より「役に立つ」を優先しよう。

 フリーマガジンなのに役に立つ・・・ここを突いていけば先が見えるかもしれない。300円高。


参考までに「R22(新社会人向け・3月3日配布)」の特集企画の監修は私。どういうわけかマイコミの「フレッシャーズ」も私です。