2004年03月29日「フーゾクの教訓」「子宮鏡万華」「40歳からの仕事術」

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」


1 「フーゾクの教訓」
 月草志郎著 太陽企画出版 1400円

 メルマガを発行します。
 どんなメニューにするかというと、わたしが最近会った人の中で「これは面白い!」と思った経営者の紹介、その人のビジネスの極意や裏話、それから本や映画、芝居、ミュージカル、音楽などで感動した話。とにかく、ホームページと違ってクローズド情報だけに、「ここだけの話」に特化してお届けしたいと思います。
 「内緒だよ」「あなたにしか教えない」というとびっきり高感度の情報をプレゼントしますから、お楽しみに。

 「ボクのビジネススクールは『フーゾク』だった!」という通り、著者は二十歳の時からフーゾクで生きてきた人物。
 もちろん、いまも、フーゾクにこだわって活躍しています。
 この間、修業時代から独立まで一貫して、このフーゾクでマーケティング、マネジメント、フィナンシャルなどを学んできたそうです。
 「子供の頃からあれほど算数が嫌いだったのに、ビジネスになったら本気で勉強するようになった」というほど、ガンガン勉強しています。
 著者にとって、まさにフーゾクこそが ハーバードビジネススクールだったわけです。

 それにしても、フーゾクというと、あちらの世界の稼業であって、サラリーマンにとっては遊びはするけれども、「ビジネスとして自分がやるなんてとてもとても」というのが普通でしょう。
 けど、著者はフーゾク業こそ、ビジネスセンスのあるサラリーマンかやれば成功すると力説してやまないんですね。
 事実、著者の元には「フーゾクの極意を教えてくれ」というサラリーマンが引きも切らずに押し寄せているとか。
 この分野、あまり、マニュアル書などありません。たいていのフーゾクが違法行為だから、証拠に残したら大変だからですね。
 けど、著者の場合は法律に絶対違反しない。だから、堂々とマニュアルを作り、指導できるわけですよ。

 フーゾクというと、これ、危ない仕事なんじゃないの?
 わたしもはじめて知りましたけど、風営法が改正になり、裏稼業が表に出てきたんですね。とくに、インターネットの普及によって、いま、店舗型のフーゾクはがた減りになり、派遣型のフーゾクがガンガン増えてるんですね。

 違法か適法かの線引きはもちろん、法律を遵守しているかどうかです。
 たとえば、ファッションヘルスでマンションなどにチラシが入ってるのありますね。あれは違法。なぜなら、風営法では派遣型フーゾクではポスティングを認めていないからです。
 では、どうやって宣伝すればいいかというと、新聞、雑誌への広告掲載、そしてホームページなどの運営ですね。電話ボックスなどにチラシを貼るのも違反です。
 これをやってる業者は裏ビジネスの人たちですね。もちろん、そういう稼業は「本番」もやらせてるでしょう。
 著者の店は絶対に本番禁止。
 だから、女性コンパニオンの面接でも本番をしそうな女性は絶対に入店させないとか。

 このフーゾクというのは美味しいビジネスで、「3年で億万長者になれる」とか。
 このビジネスのメリットは、現金商売であること、そしてイニシャルコストがかからないことでしょうね。
 たとえば、100万円でも開業できるなんて、考えられませんよ。
 コンビニやラーメン店をオープンするのでさえ、千万円単位の資金が必要ですからね。
 著者は400万円用意したそうですけど、「余っちゃった」と言ってます。2店目は200万円でスタートしたそうです。

 著者はアイデアの塊で、続々とフーゾクを展開しています。
 最近はコンサルタントとしても活躍してますが、セミナーでの質問で多いのは、「フーゾクやりたいんですけど、どこかの店で修行したほうがいいでしょうか?」ということです。
 「そんなことはありません。素人さんでも十分、成功できます。へんにほかの店を見てしまうと失敗するかもしれません。見るなら、とことん。一〜二店舗だけ見ても役には立たないでしょう」
 これは真実だそうです。
 修業するなら、著者のように10年とはいわないまでも、3年はやらないと身にならない。
 この業界は半端ではありません。
 相撲の世界に人偏にゲンコツと書いて「兄弟子」と読むという言葉がありますが、こんなものではありません。時に人を人とも思わない理不尽きわまりない仕打ちもあるそうです。指導など絶対にしてくれませんし、運営方法を盗もうとしたら何をされるかわからない。
 ならば、自分のイメージでやったほうがいい。自分が客になってサービス内容を考えてみる。これが大事です。

 AVメーカーとして有名なソフト・オン・デマンドの高橋がなりさんが面白いことを言っています。
 「AV(アダルトビデオ)業界で成功するには自分の性癖をさらけ出せないとダメだ。これ、だれのためのAV? というように焦点が絞り切れてないと失敗する。レンタルと違って、セルの場合はお客は吟味の上に吟味する。シビアに商品を選択する。一本のAVに五個のジャンルを入れたら、五倍のマーケットがあるかといったら、そんなことはない。結果は全然売れない。一人の人間に絞れ。その裏には一万人のニーズがある」

 すなわち、熟女フェチと尻フェチと○○フェチというような総合デパートではダメ。専門特化しなければ、コアなお客様をつかめない。
 「だれでもいい」と門戸を広げても、周波数は合わないわけです。性の世界、とくにエロの性癖はオタク的な要素が濃いのです。

 自分の性癖をさらけ出して、お客様に提供するサービスを考えてみるといいのです。派遣型風俗ビジネスは法律に違反さえしなければ、どんなサービスを企画してもいいのです。このビジネスはものすごくバリエーションが豊富です。
 
 著者が派遣型風俗ビジネスにこだわる理由も提供できるサービスが多種多様、それだけ可能性があるからだそうです。
 たとえば、出張マッサージにはアーユルヴェーダ、インドエステ、タイ式マッサ−ジなども可能でしょう。著者自身、病院でアーユルヴェーダの施術を紙パンツで受けているうちに勃起してしまうそうです。
 「気にしなくていいですよ。みなさんそうですから」
 これは広い意味ではフーゾクではないか、というのが著者の意見です。

 ここ数年、人気のある韓国エステ、台湾、中国系エステでは垢すりやマッサージだけではなく、フーゾクのサービスを加味する店も少なくありません。これらと従来のフーゾクを絡めることは今後、十分考えられます。
 付加価値がある分、高いお金もとれるはずです。著者の店にもこれらの資格を取ってサービスに応用しているコンパニオンがたくさんいるそうです。

 リストラ、週末起業とうるさい昨今、一度、チャレンジしてみても面白いんじゃないかなぁ。

 今月はアマゾンの業務が遅いね。新刊のアップが間に合わないみたい。
 350円高。
購入はこちら



2 「子宮鏡万華」
 小早川かおり著 主婦の友社 1500円

 著者は「マネーの虎」こと、高橋がなりさん経営のソフト・オンデマンドの制作会社「ディープス」の女流AV監督。

 いったい、AV業界に飛び込んでくるスタッフ、男優、女優はどんな人たちなんだろうという好奇心にずばり応えた一冊。
 「ひと皮むけば、人間はみんな変態!」
 そんなコンセプトがビンビン伝わってきますな。
 「女流AV監督純情撮影日記」というサブタイトル通り、間違って入社した会社でもまれながら、自己実現を果たしていくOLの物語・・・かな。 

 女流監督になるタイプには大きく分けると2通りありますね。
 1つは本人がAV女優だったというタイプ。撮られる側から撮る側に変身するわけですね。
 もう1つは著者のように、ある日突然、あれよあれよという具合に違う畑から監督になっちゃうタイプですね。

 5年前は普通の主婦だったそうてず。
 結婚前は大手金融機関、それもトップ営業レディ。学校を卒業し、一応、秘書業務の勉強がしたくて専門学校に通ったものの、ひょんな縁で大手金融機関に入社。
 持ち前の好奇心と負けん気がいいほうに作用したのか、あっという間に成績優秀者として表彰されたといいます。
 アフターファイブに恋愛し、その彼とほどなく結婚。そして、寿退社。
 ところが、1週間もしないうちに後悔、後悔、後悔先に立たず、いやいや、後悔あとを絶たず。
 「あぁ、退屈!」

 人生というのは、ひょんな縁がきっかけになります。

 「どうせやるなら、いままでと正反対の仕事をしてみたい」
 書店で求人雑誌を見てると、出版社の広告が目に飛び込む。
 これ、応募してみよう。

 ところが訪問してみると、オフィスは雑居ビル。入り口には女の裸、下着姿、おとなのオモチャといった写真満載の雑誌が山積み。
 だからなのか、応募者はだれもいない。
 「こんな会社に入ったら、いつか、自分もあんな姿にされるのでは?」
 おそらく、ほとんどの応募者は身の危険を感じてUターンしてしまったのんでしょうな。
 
 で、著者はどうしたかというと、ここでも持ち前の好奇心が首をもたげて、どうせ落ちるに決まってるから見学するだけでもしておこう、と軽い気分。
 
 ところが、これが入社してしまうんです。

 AV作品のスーパーを入れるため、編集室で追い込みをかけている社員は、『笑っていいとも』を見ながらお昼を食べている。
 編集機のモニターには女優の秘部が丸見えのまま。
 「モザイクかけてる途中なんだから、触んないでよ」
 編集機の前にピンクローター。
 「壊れたから直してって頼まれたの、こないだロケで動かなかったんだってさ」
 商売道具だから、なんの躊躇もなく転がっている。バイブならまだいい。緊縛用のロープが赤・黒・白・紫ときれいに巻かれて並んでいる。
 とんでもない所に入社した・・・と思ったそうな。

 AVフリークからの困った電話も少なくないそうです。
 女性スタッフが増えると、それを目当てにした電話も掛かってくる。
 「新作のタイトル教えてほしいんですけど・・・」
 「少々おまちください」
 彼女たちはノートを広げ、またはホワイトボードのそばに行って、
 「○○ザーメンと、お姉さんの○ナニーと、肉棒○○です」
 などと教えてあげる。
 電話の向こうからは、
 「先月出たのも教えてください」
 するとまた彼女たちは、
 「デカまら2と、金蹴りと・・・」
 果てしなくタイトルを挙げるのだ。イタズラ電話だとわかっても、ガチャンと切れない。
 それでも、たまたま電話を受けると、
 「ブルセラ○○見ました。女の子が嫌がりながらぶっかけられるシーンが、すごく良かったです。僕は○ーメンの味を言わせたり、ソックスにもぶっかけるのが好きなんです」
 1年も2年も同じタイトルの同じ感想をわざわざ電話してくる人もいる。そして、1人で興奮している。
 あからさまなイタズラ電話もあって、男のADが出ても、
 「今日、なに色の下着はいてますか?」
 なんて人もいる。

 女の子からもイタ電は掛かってくる。AD宛てに、「会いたい」「欲求不満なの」「23時に目黒の駅前の・・・で待ってて」「いますぐテレホンセックスして、はぁ、はぁ」
 著者にもそういう電話はあったそうで、女医役(着衣のまま)でちょこっと出演したビデオを見たという女の子からで、どうやら、「彼氏とのプレイを見てほしい」という魂胆だったようです。

 「女だからデビューはレズがいいんじゃないの」
 「レズ病棟2」(99年制作)が著者の監督デビュー作と決まった。後にこの作品はシリーズ化されてアニメにもなりました。

 「へぇ、女が監督するだけで取材がそんなに来るの。俺は10年この仕事してるけど、そんなに来たことないよ。驚いたねぇ」
 当日、現場には取材が3件も入っていたそうです。女優より監督のほうが注目されてたんですね。
 女優はベテラン、著者より若いけれど現場のことをずっとよく知ってました。著者はまだまだにわか監督で、カメラがどう動いてくるかなんて予想できない。だから、シナリオ通りに進行しようとしても、
 「そうじゃなくてさぁ、私がこうやって騎上位になって挿入しようとするでしょう。そうするとカメラさんがこう、たぶんここをアップに迫ってきてくれると思うのね・・・」
 女優はAVにピンで出演できる女優だからプライドも高い。自分のAVがいいものに仕上がれば次の仕事に結びつくことをよく知っている。
 一生懸命頑張ろうとしているのに周りと歯車が全然合わない。「四面楚歌」という四字熟語が頭に浮かんできた。

 ロケ反省会。
 AD経験も女優経験もない著者がいきなり監督として席につく。
 「ADが『無いです』とか『ありません』という言葉を口にした瞬間、そのADはADじゃないんだよ。無かったら見つける、買いに行く。そこらじゅう探して、それでもどうしても無いときは自分で代用品を作る。『探してみます』か『どうにかします』しか言っちゃいけない」
 先輩監督が説教を始める。
 「監督を育てるのも優秀なADの仕事なんだぞ。ADだからって監督の言うことにすべて賛成する必要はない。監督の『想い』だけで作品を撮られちゃ困るんだ。『想い』だけで作品は作れない」
 いくら監督にこだわりがあっても、監督の『想い』を覆させるのもADの仕事なのだ。

 忘れちゃいけないのは、ADは監督になりたくてADをやっているということですね。Dとして務まらなければ、監督の道もない。それがあたりまえのAV業界だ。
 なのに、著者はど素人で突然入社し、ADを飛び越えて撮りたいものを撮っている。年下のADばかりの中、周囲は先輩ばかり。

 「小早川組をスムーズに進行できたら、いっぱしのADだ。小早川組を頑張って」

 いろんな男優、女優との触れあいが語られています。
 当初、「エッチな人間動物園」という目で読んでましたけど、著者の温かい視線が感じられる好著。

 けど、男優にしても、女優にしても、精力絶倫、変態、リストカッター、淫乱など、いろんな人がいますね。けど、これ、AVだからということではなく、「人間はみんな変態!」という著者の意見のほうが正しいのかも・・・。
 250円高。
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3 「40歳からの仕事術」
 山本真司著 新潮社 680円

 著者は経営コンサルタント。迷える40代ビジネスマンに向けて、いろいろ講義した一冊。
 講義の場所は酒場であったり、オフィスの一室であったり、といろいろだそうです。

 「40代というと、時間資源がどんど希少になっている。だから、何をやるかよりも、何をやらないかがポイント」だとのこと。
 たしかに・・・。
 戦略とは「捨てる技術」なのだと。

 わたしも40代なんですよね。若いつもりでも、昔、新人だった頃、40代なんて、とてつもないオヤジに見えたものね。
 あれもこれもできません。だから、何をやらないか、これだけは手を出さないという制約をかけたほうがいいかもね。

 たとえば、依頼される本でも、わたしが絶対に書かないのはビジネスマナー、恋愛論、教育論です。
 理由は簡単。
 わたしができないものばかりだもの。
 マナーなんて失格だし、恋愛は苦手だし(だって、浜野寅次郎こと、フーテンの寅さんだもの)、教育論に到っては100パーセント失格。息子に笑われてしまう。
 だから、それ以外のものなら書けるけど、この三つはダメ。来月は経営論を出しますからね、お楽しみに。

 仮説について「尻から考えよう」と著者は述べています。これはわたしがいうところの「バックキャスト思考」ですね。
 「尻から考えよう」というのはいい表現です。
 150円高。購入はこちら