2004年02月16日「日本一の大投資家が語る大貧民ゲームの勝ち抜け方」「負け犬の遠吠え」「斉藤一人 人生が全部うまくいく話」

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」


1 「日本一の大投資家が語る大貧民ゲームの勝ち抜け方」
 水澤潤著 自由国民社 1500円

 3月からメルマガを発行します。
 どんなメニューにするかというと、わたしが最近会った人の中で「これは面白い!」と思った経営者の紹介、その人のビジネスの極意や裏話、それからこの「通勤快読」で紹介できなかったけど、毎週、読んでる中から、「これ、いいよ!」という本の紹介などです。
 とにかく、ホームページと違ってクローズド情報だけに、「ここだけの話」に特化してお届けしたいと思います。
 「内緒だよ」「あなたにしか教えない」というとびっきり高感度の情報をプレゼントしますから、お楽しみに。


 ところで、竹田和平さんって人、知ってる?
 わたし、チートモ知りませんでした。著者も知らなかったらしいんですが、会社四季報を見てると、上場企業の大口出資者が明記されてるでしょ。ここでこの人の名前をちらほら見た。

 気にかかったんで四季報で数えてみると、なんと53社もの大株主なわけよ。それ以外にも出資してるから、トータル70社もの巨大個人投資家ってことですね。
 しかも、大株主として登場したのは、九九年以降です。

 この意味、わかります?
 そう、日本の株価は異常に低く貶められている、と考えているんですね。で、軒並み、投資してるわけ。
 けど、その目利きは独特のものがあるんです。それを紹介してるのが、この本です。
 どう、興味湧いた?

 さて、この人、いったいどんな人なのかを調べると、なんと、タマゴボーロってお菓子あるでしょ。あの会社の社長さんなんですね。
 祖父の代からスタートした事業ですけど、田舎の家族で糊口を凌ぐ零細企業に過ぎませんでした。
 それを苦労、苦労、苦労の末に技術を覚え、竹田さんが尋常ならざる才覚と努力、そして運で名古屋、札幌に工場を作って発展させた。創業期は大失敗で倒産の危機に見舞われることもあったけど、なんとか切り抜け、タマゴボーロの全国シェアの六割以上を独占してる、というわけ。ウエハースのお菓子でも有名ですよね。

 けど、本書はそんな竹田さんの立志伝ではありません。
 あくまでも、投資法の話なの。

 こういう本を発見できるのが、ウエブで本の探索をする楽しみですね。とても書店では見つけられませんよ。だって、置いてないんだもの。

 竹田さんはあくまでも四季報だけで投資してるみたいですね。その方法のエッセンスをまとめると、以前、本欄で紹介した「資産運用のカラクリ」(安間伸著・東洋経済新報社)とまったく対極にあります。

 というのも、「配当をきちんと出している会社に投資せよ」というわけですよ。「資産・・・」では、「配当で内部留保を切り崩すと設備投資などの資金がなくなって成長できない」という理屈でしたからね。
 でも、この人は「そんな資金は増資でまかなえ。それでこその上場企業だろ?」というわけです。

 「限りなく無借金経営の会社であること」
 こうなると、あのトヨタですら、投資の対象にはなりません。
 

 この人、暴走族を教育するのでも有名な人で、経営するボーリング場の駐車場に彼らがやってくると、「俺の話を聞け。メシ食わせてやるぞ。千円やるぞ。儲かるぞ」と食堂に連れていって儲けの極意、人生の極意を話すわけ。
 これが面白いんだ。
 この方法は投資している上場企業の経営者にも同じことをします。というのは、折を見て「あなたは配当をたくさん出してくれました」という表彰状「株主感謝賞」を送ってるんですね。
 それも2オンスの純金メダルと合わせて送ってるんです。

 「株主欄に個人投資家の名前がたくさんある会社」
 これも投資先を見抜くポイントです。こういう会社は個人投資家をきちんと優遇する会社だからです。

 「経営者が役人感覚だったり、天下り感覚の会社は絶対ダメ」
 たとえば、数年前に破綻した日貿信というノンバンクみたいな金融会社がありました。頼まれて、この会社にも昔、出資してたんですね。けど、八一年に上場してから、官僚的な経営者ばかりが続いて嫌になってしまった。この時、岐阜の地方銀行が竹田さんの持ち株を買いたいと言ってきたわけ。
 「全部、売ってあげるよ」
 「半分で結構です」
 「どうして?」
 「銀行の序列を守らないといけないんで」
 竹田さん以外の大株主はすべて銀行。となると、銀行の序列にしたがって出資も自主規制しちゃうわけ。出る杭は当たれないようにってことでしょうね。さすがというか、姑息というか、銀行らしいというか・・・。
 で、彼は半分、その地方銀行に売り、残りは市場ですべて売却してしまった。そのあと、どうなったかはご存じの通り。
 
 「ボクは夢を買いません。投資先の会社の明日なんて、その会社の社長にだってわからないんですから」
 たしかに。
 「だから、直近のバランスシートを見て判断する」
 「一株あたりの最終利益を見る」
 「株主資本比率の高い会社であること」
 「配当利回り」
 「売上高の伸び率」
 どんなに粉飾決算しようと、無借金経営、あるいはそれに近いところまでは、ごまかしようがありませんからね。
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2 「負け犬の遠吠え」
 酒井順子著 講談社 1400円

 この本、落語家の林家彦いちさんが、「いい、いい」というので買いました。
 で、どうだったかというと、まぁ、なんと言いますか。エッセーなんですね。ですから、論が張ってあるわけでもありません。
 ということは、書きっぱなし、言いっぱなしの感が否めません。

 で、どうだったかというと、負け犬の条件とは三つありまして、「嫁がず、産まず、この年で」。もっと具体的に平たく言うと、「30代以上、未婚、子ナシ」の女性ということですね。
 この中で「未婚」とは離婚経験のある場合の含まれます。とにかく、「いま、結婚していない」という状況が大事なんですね。

 「でも、○○さんみたいに結婚なんかしてなくたって、バリバリ仕事してて輝いていて綺麗だよね」
 こういう反論もあると思います。
 たしかに、子育てでくたびれ果てて、服はユニクロかスーパー。化粧なんて忘れちゃった。本も読まなければ映画も見ない。コンサートや演劇なんてここ十年、行ったことがない。
 こういう人も少なくないと思います。

 それでも、「既婚、子持ち」という絶対優位の法則には、バリバリキャリアウーマンも影が薄いのだ、というわけですよ。

 その根拠として、著者があげているのは「生産性」です。
 ビジネスの生産性は、いずれ取って換わられるものです。その点、自らの地位をしっかと確保している「既婚、子持ち」は強いってわけですかねぇ。

 そうそう、男性の負け組は、これが40歳以上(39歳まではセーフ)に年齢が少し緩和されるだけだとか。

 で、どうだったかというと、「余計なお世話ですよね」。
 なんて言いながら、「結婚なんてしなくていいから子ども作っておいたほうがいいよ」なんて、あちらこちらで言った覚えのある人には、「そうか、これって、セクハラの極みで、親切というよりも優越感の発言だったんだ」と反省することしきり・・・ではないでしょうか。

 負け犬増殖の根元的な問題は、不倫。そして、女性の高学歴。
 たとえば、東大進学率ナンバーワンの女子校に楼蔭高校がありますが、出身者に確認すると、「卒業生の負け犬率はひっじょうに高い」とか。
 これはほかの名門にも共通してあてはまる傾向で、結果として、日本はヤンキーの子孫ばかりが増えていくという事態が続いてるんです、と。

 たしかにそうかもなぁ。

 この本、ある意味で物議を醸しました。マスコミでも話題になりましたね。

 けど、この人の本で「かわいい顔して」(角川書店)という本がありますが、この中の「新婦の友人顔」という項を膨らませて書いたのが本書ではないかなぁ。
 「笑顔の影に嫉妬あり」というサブがついてるんだけど、披露宴にお呼ばれした時、未婚女性の複雑な心境をえぐった内容なんですけどね。

 「結婚できない」んじゃなくて、「結婚しない」だけ。

 飛びっきりの美人。だけど、どういうわけか、未婚という人いますよね。
 「いくらでも男性からアプローチはあっただろうに」と思わせる人、いるよね。
 おそらく想像するに、「わたしに釣り合うもっと男、もっといい男、いないかしら。こんなレベルじゃダメ。モアベターよ」なんて、小森のおばちゃま(古いか!)みたいなこと言ってる間にタイミングを逸したんでしょうな。

 ものごと、なんでもタイミングってのが重要なんです。結婚なんて、まさにそう。

 かの、オスカーワイルド先生曰く、「判断力の欠如で結婚し、忍耐力の欠如で離婚し、そして記憶力の欠如で再婚する」ってさ。
 熱にうなされて判断力がなくなったときくらいしか、チャンスはないんだよ。
 いつも冷静で、「もっと、もっと、モアベターよ」を望んでると判断力を狂わせることはありません。
 きっと判断力を狂わせるほどの恋愛ができないんだろうね。

 で、どうだったかというと、結論! あまりよくわかりませんでした。これがテレビ、雑誌で取り上げられることすら「?」です。
 けど、こういう本も読んどいたほうがいいね。
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3 「斉藤一人 人生が全部うまくいく話」
 斎藤一人著 三笠書房 533円

 ご存じ、億万長者の斎藤一人さんの本です。もうベストセラー作家ですよね、この人。

 どの本、読んでも同じです。斉藤ワールドですね。やっぱり、心が落ち着く点が人気の源泉でしょう。

 「感謝の多い人は絶対に成功する!」
 いつも感謝できる人ならなにをやってもとことんうまくいく、だとのこと。
 感謝ってのはいいことが起きた時しかしませんよ、普通はね。けど、悪いことが起こった時でも感謝する。こういう人は結局、謙虚だし、反省する心を持っている。
 トラブルが発生した時、怒り、焦り、イライラなんて感じても、冷静じゃないからさらに失敗するだけだものね。
 つまり、どんな時でも感謝できるほど、心に余裕があるから、ものごとを広く見て判断できる。そこで成功を呼び込む、というわけでしょうな。

 かつて、松下幸之助さんが免許皆伝と認めた大経営者に丹羽正治さんという人がいらっしゃいました。
 松下電工の社長、会長を長年、務めた人ですね。松下の大卒第一号でもありました。幸之助さんのことをいちばんよく知ってる人ですよ。

 この人に「幸之助さんの特長は?」と聞くと、「失敗したら自分が悪い、成功したら運が良かった。徹底して、こう考える人でしたね」と言下に言うのです。
 幸之助さんについて、なんでもたくさん知っている人です。けど、一つだけ、「ズバリ、これだ」ともっとも象徴的なことをわかりやすく話してくれたのです。丹羽さんはやはり、幸之助さんから免許皆伝されただけのことはありますよ。
 普通、失敗すると、あいつが悪い、時期が悪い、営業が悪い、製作が悪いとかね、お互いに罪をなすりつけるものです。けど、そうしない。
 「自分が悪い」とすぐに考えて、対策を講じる。
 これっつて、当事者意識があるからですね。あいつが悪い、営業が悪いと言っている間は当事者意識がありません。これは他人事と考えているからするのです。

 成功したら自分のおかげ。こう考える人もたくさんいると思います。けど、成功の余韻に浸っていられるほど、世の中、そんなに甘くはありません。
 「運が良かった」という謙虚さがどこまであるか。もう一度、チェックしてもいい頃ですね。
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