2003年07月28日「だめだこりゃ」「美女の教科書I 美人学編」「美女の教科書 II 美容学編」
1 「だめだこりゃ」
いかりや長介著 新潮社 438円
阪神優勝となるとなんと十八年ぶりということになりますが、その阪神優勝の年(1985年)に終わったのが、あの伝説のお化け番組「8時だヨ! 全員集合」です。
そう、ドリフターズの公開番組ですね。これはわたしの子ども時代とリアルタイムですから、そのデイテールまでよく覚えています。
チョーさんがジミー時田と一緒に「マウンテン・ブレイボーイズ」の一員として、横田の米軍キャンプでカントリー&ウェスタンの演奏をしてた時、米軍の将校からつけられたあだ名が「スマイリー」。
まったく笑わないバンドだったからです。なんたる皮肉。
演奏が下手でも、くだらないジャグでも、とにかく米兵たちは愉しまなくちゃ損、損という気持ちで来てるわけです。だから、とにかく、笑顔を絶やすなと釘を刺されます。
そこで、くだらないギャグを披露するわけ。
たとえば、メンバーがセンターマイクに集まり短いバックコーラスをすね時、大きなベースを抱えたチョーさんだけがワンテンポずれる。これだけで米兵たちはやんやの喝采。箸が転がっても笑う、という感覚ですな。
このバンドでもトラブルがあると、自然とリーダーでもないのにチョーさんが出張って解決するわけ。渉外はめちゃくちゃうまかったみたいですな。
けど、バンドで買った車をぶつけて、事務所としっくり行かなくなる。それがきっかけでもないけど、ちょうど、桜井輝夫という男から「うちのドリフターズ。クレージーキャッツみたいなギャグバンドにしたいんだけど、ちょっと見てくれない」と言われて、少し見ていると、預からなくちゃいけなくなってしまうわけ。
ドリフのリーダーといっても、チョーさんで三代目なんだよね。
チョーさんというのは仕事に厳しい人で一日中怒鳴っているわけ。
「やる気無いなら、辞めちまえ」という口癖で、ある時、いつものように「辞めちまえ」と言うと、「わかりました」と四人が辞めてしまう。
それが後にドンキー・カルテットというギャグバンドになります。
この時、「俺が辞めるから、おまえたちはこのままやってくれよ」と頼むんですが、どうも、ドンキーとしての仕事をすでにいくつも取っていた計画的な仕業だったわけ。だから、彼らも受け付けない。
かわいそうなのは、その四人に引っ張られなかったカトちゃん。
「おまえはどうする?」
「カトちゃんはドリフにいたほうがいいんじゃないの?」というメンバーの声で居残ることに・・・。だって、カトちゃん入れたら、五人になっちゃってカルテットじゃなくなるものね。
これが運命を分けます。
「おまえと加藤の二人でこのままやれねえか?」
これが桜井オーナーの言葉。チョーさんだけだったらダメだけど、カトちゃんがいればなんとかなる。あと、三人、どこかで引っ張ってくればいいから、というわけです。
ところが、これが大誤算。
なんとピアノの弾けないピアニスト荒井注、なんの味もないギタリスト仲本工事、へたくそな高木ブー。これらをとにかく一週間で間に合わせたわけ。
だから、ひどいもんです。「ギャグバンドをするから」という一言だけ納得させて集めた。
しかし、クレージーを見習って、メンバー交代は絶対にしなかった。どんなに下手デモね。
ドリフの成功はギャグが独創的であったわけではありません。
五人のメンバーの「位置関係」で笑いが取れていた。つまり、役割分担がきちんとできていたからです。
いじめ役のチョーさん、いじめられ役のカトちゃん、我関せずの荒井注、自分だけ良ければいいという仲本、ただのデブ高木。この位置関係が絶妙に面白いわけ。
それだけに、荒井注が抜けて志村けん加入後のドリフはギャグの連発という形になってしまったんです。
ところで、チョーさん、荒井注、加藤茶などの芸名はすべて、ハナ肇さんの命名です。しかも、酔っぱらってつけたからいい加減なの、これが。
「全員集合!」は居作昌果(いづくり・よしみ)というプロデューサー(後、TBS制作局長)が仕掛けたものです。
当時、土曜七時半から「お笑い頭の体操(後にクイズダービー)」というヒット番組の作っていた勢いで、「低迷している土曜八時を何とかしろ」と厳命されていたんです。なにしろ、裏番組は日本テレビは「巨人戦」、フジテレビは「コント55号の世界は笑う」。もうお化け番組だから、なにをやってもダメ。
しかし、この居作さんは「毎週、公開ナマでコントをやる。この迫力でいけば勝てる」と踏んでたみたい。
でも、公開ナマですよ。しかも毎週、毎週です。
以来、毎週、木曜会議はネタで悩むチョーさんの姿が見られるようになります。タブーにしても、カトちゃんぺっにしても、あのギャグ、チョーさんが考えたやつなのね。
1969年10月から85年まで休んだのはたった一回、日中国交特別番組の時だけ(しかし、視聴率はひと桁しかいかなかった)。
視聴率が五十パーセントを超えるんですから、とんでもない番組でした。
でも、「カラスの勝手でしょ」というギャグなど、「7つの子」を冒涜するものだ、という三千人の署名による抗議があったり、世の中、いろんな人がいるんですね。
ところで、わたし、学生時代にこの居作さんに会ってるんです。
面白い人だったなぁ。
「TBSを受けないか?」と言われて、一度だけ話を聞きに行ったことがあるんです。相手がだれかも知らないで、適当に相づち打ってただけ。まったく入る気、なかったもの。三千倍くらいの競争率だったから、どうせ入れてもくれなかっただろうけど・・・。
「君、学校行ってるの?」
「行きたくても行けないんです」
「なんで?」
「船、乗ってますから、あまり陸にいないんです」
「じゃ、勉強してねぇんだ」
「えぇ、四年間のうち、数時間しか講義聞いてないかも。ゼミも一回も出ずにクビになってるくらいですから」
「ギャハハハハ。いいねぇ、そういうの。でも、もうちょっと行けよ、学校。せっかくだからさ」
「はい、すいません」なんてね。せっかくだからって、いったいどこがせっかくなのかね。先輩に聞くと、この段階でほとんど落ちて、わたしだけが通っていたとか。まっ、結局、そのあと、行かなかったけど。
あとで、「あれ、居作さんだったんだよ」と聞いてびっくりしましたよ。
そんなこんながありまして、いよいよ、全員集合は終わりました。視聴率も裏番組のタケちゃんマン(オレたちひょうきん族)に押されてしまったものね。
「あれ、俺、土曜日に街なんか歩いてるよ。こんなとこでのんびりしてていいのかよ」
これは番組終了後のチョーさんの感想です。たしかに、燃え尽き症候群みたいになっちゃうよね。
その後、かつてのクレージーのメンバーがそうしたように、55号の二郎さんがそうしたように、チョーさんも演技の世界に飛び込んでいきます。
いままでは自分が演出し、ダメ出ししていた立場。それが今度からは演出してもらうほう。
ところが、これが快感。はまってしまいます。
「どうしていままでこんな世界を知らなかったんだろう?」
いま、「踊る 大捜査線」の和久指導員という役どころが当たってます。日本アカデミー助演男優賞ももらったちゃった。
参考までに、これ、ジーン・ケリーの「踊る紐育」とシドニー・ポワチエの「夜の大捜査線」をチャンポンにしたタイトルなんですね。
まだ若い監督。しかし、才能豊か。チョーさんはこの若い監督にすっかり頼り切っているとか。
250円高。購入はこちら
2 「美女の教科書I 美人学編」
齋藤薫著 文藝春秋 1500円
「女性はメイクだけで美しくなれるわけではない」−−女を磨くさまざまなスキルを精神論からテクニックまで「美容のカリスマ」が伝授する一冊。雑誌『CREA』連載中から話題を呼びました。
男が読んでもかなり面白い。
化粧品、美容法など、著者オリジナルの情報に、天地真理、叶姉妹からファラ・フォーセット、ジャクリーン・オナシスの写真をたっぷり使ったエッセイまで。これはしっかり元が取れる一冊です。
「美人とブスの美人学」で紹介するヒラリー・クリントン(元アメリカ大統領の奥様)。学生時代は誰が見てもブス。それが五十歳を超えてからの美しさは自信に満ちています。
彼女が変身した理由は?
答えは簡単。
ひとえに「美人風の服を着て、美人風の髪型に、美人風のメイクをして、美人の仲間に入ろう」という「強い意思」を持てたかどうか。「努力といってもそれだけすれば、誰でも美人になれる」というメッセージは思わず信じたくなる一言です。
でも、ブスな大人がいるのも事実ですよね。
「美人風は美人だけに許された装いで、やっちゃいけないと自己規制してしまったせい」
元々、ブスと美人なんて紙一重の違いもないのです。これは「顔の中の嫌いな部分が実は魅力の正体」というアンケート調査でも明らか。
そもそも、「美人」とは何なのか。
実は男と女が考える美人には「ズレ」があるんですね。
男は和服が似合う女性を美人とし、女は洋服が似合う人を美人と認識します。
ところが、ここ数年、この定義も怪しくなってきました。「疑いようのない美人」よりも「AさんとBさんとで評価が分かれる美人」が美人と認められるようになってきたのです。
その代表は「チャーリーズ・エンジェル」のキャメロン・ディアス。
たしかに・・・。
250円高。購入はこちら
3 「美女の教科書 II 美容学編」
齋藤薫著 文藝春秋 1500円
これもいい。男が読んでもいい。
帯コピーに「即効!読む化粧品」とある通り、一冊まるごと化粧品、美容法の本。しかも井川遙、小池栄子などがどうして人気があるのか。その秘密を化粧品と美容法の観点から紐解くのも興味津々。わたし達にもすぐ真似できそう。
前著ともっとも違う点は、「化粧品と美容法に関する悩み解決」に徹していることでしょう。
「洗顔料ばかりがなぜ安い? 美容液やクリームはなぜ高い?」という疑問はだれでも感じるけど、業界のタブーかもしれないしわからない。
しかし、著者はズバリ回答します(本文をご参照)。
突撃体験手記は本書でも健在で「目の下の隈、アゴニキビ」はどうしてできるのか」「9万円のクリームはどこまで効くか?」「毛穴を消すにはどの化粧品がいちばん効くか?」「テカリとツヤをどう見分ける!」「いま買うべき整形コスメ ベストテンは何か?」などなど、自ら実験台になって解決法を指南。女心をよく知ったテーマにはつくづく感心します。
極めつけは、「化粧品版 買ってはいけない!」でしょう。
日本には数千社もの化粧品会社があります。それでもなお、たくさん輸入品が入ってきます。こんな現実が成立するのも、結局、「化粧品には正解がない」からでしょう。
なぜなら、効果の半分は暗示だからです。だからこそ、「化粧品の9割は不要」と断言するわけです。
たとえ口紅が100本あっても、あなたを本当にキレイにしてくれるものは3本もあればいいほう。著者自身、「これは!」という口紅にはまだ数本しか出会っていない、といいます。
プロのアーティストはいまだに複数の口紅を混ぜて仕上げてますが、「完全な唇」を作ろうとすれば、一本では無理なんですね。
250円高。購入はこちら