2010年05月20日「下流の宴」 林真理子著 毎日新聞社 1680円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 へえ、430ページもあったのか・・・というほど、一気に、愉しく、引き込まれるように読んでしまいました。
 さすが林真理子さん。「エンタの女王」ですな。

 それにしても、「下流」って嫌な言葉ですよね。いつ頃から使われ始めたのか。たぶん、小泉内閣の政策によって「中流」が吹っ飛んだ頃からでしょうか。上流=セレブがあれば、中流も下流もある。つうことは、源流とかどん詰まりなんてもあるわけ?

 けど、下流って、いったい何なんでしょうね。

 たしかに、この小説でも「下流の人々」が何組か登場します。たとえば、翔くん。父親は有名私大の理工学部出身で大手企業から出向先で部長。出世街道からは外れちまったけど、まあまあでしょ。母親は田舎の国立大文学部。
 で、本人は中高一貫校に入ったのはいいんだけど、高校で不登校、そしてリタイア。つまり、学歴的には「中卒」なわけ。定職につくわけでもなく「プー状態」。ニューヨークにもパリにも関心なし。「努力」「進歩」「奮起」という言葉といちばん遠い世界の住人。いまが愉しければそれでいい、という20歳。

 そんな翔くんが「結婚したい」だと。人生舐めてるとしか言いようがないけど、「親なんかに反対されたって関係ないね」というタイプ。ま、甘ちゃんでんねん。

 相手は南琉球島出身の22歳の女の子。母親が地元で飲み屋やってる。で、離婚経験あり。ちゅうか、この島の人、離婚が多い。父親のちがう弟が2人いる。
 この娘、たしかに上流じゃないし、マナーとか一般常識には疎い。人前で「母」ではなく「うちのおかあさん」と言っちゃうしね。
 でも、人との距離感とか愛情とか、暖かさとか思いやりとか・・・そういう「ホントの教養」に溢れてる女性。社会の厳しさも覚悟してる。なにより頑張り屋。私から見たら、ブスだけど、この娘はいい子だよ。

「うちのバカ息子にはもったいない」と言わなくちゃね。

 ところが、まあ、翔くんの両親は「文化が違う」から結婚なんてさせたくない。いまはプーだけどいつか変わる、大検受けてそこそこの大学に入る・・・と信じてるわけね。
 
 いろんなトラブルが起きます。いろんな誤解が生まれます。さて、どうなることやら。「音声&続き」はこちらからどうぞ。