2010年09月03日「ストーリー・セラー」 有川浩著 新潮社 1365円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 私の大好きな大好きな大好きなあなたへ。

「作家になれて嬉しかった。あたしの作品が好きだって言ってくれる人がこんなにいたんだってすごく嬉しかった。あたしは飛べないと思っていたのに、飛べるって教えてくれたのはあなたなの。それに作家になったことは病気に関係ないかもしれないよ」

 妻の病気は致死性脳劣化症候群。複雑な思考をすればするほど脳が劣化するという病気。この「症候群」という言葉は便利で、原因も治療法もわからない病気はすべて症候群にされちゃう。

 テレビを見て笑う、本や漫画を楽しむ。これらは刺激に対する反応だからOK。けど、そこから、どうしてこれは面白いのだろうなどと感想を突き詰めて考えることはNG。ああ面白かった、で終わるのがポイント。会話も日常的な範囲なら大丈夫ですが、議論などは危険です・・・。

 脳は「休息」を求める信号を感知できず、薬で強制的に鎮静させない限り、完全に覚醒した状態で彼女の脳を酷使し続ける。

 これが医者の診断。

「その医者、ここに連れてこい! あたしにいまから息だけして生きていけってか! あたしの前でそう言ってみろ!」

 こんなことになると知っていたら・・・。
 知っていたら?
 小説は自分だけが読んだ?
 無理でしょ?
 みんなにも読ませたいでしょ?
 広い世界で思う存分飛ばせたいでしょ?

 昨日に続く有川浩さんの小説。A面からB面へと続くラブストーリー。なるほどねぇ、そうなってんだ・・・。続きはこちらからどうぞ。