2011年06月17日『ほんとうは失敗続きだった「経営の神様」』 中島孝志著 メトロポリタンプレス 1785円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

「神様」と呼ばれた人はめったにいませんね。
 サッカーの神様ペレくらい。学問の神様は菅原道真、マンガの神様は手塚治虫、打撃の神様は川上哲治さん、ギターの神様はエリック・クラプトン、プロレスの神様カール・ゴッチ、相撲の神様双葉山。。。くらいかな。
 で、「経営の神様」といえば、この人しかいません。

 松下幸之助さんですな。

 けどね、初代に名門無しという通り、最初から神様だったわけではありませんね。神様にも丁稚時代があるわけです。経営のど素人時代があるわけですよ。

 幸之助さんも泥縄で独立したのはいいけど、あてが外れて破産寸前まで行ったことがあります。
 たまたま、ホントにたまたま、「こんなのでけるか?」「急いでるんや」「大晦日までに頼むわ」というとんでもない仕事を引き受けざるをえないところまで追い込まれてた。
 あるいは、完全に騙されてしまいましてね。騙されたというと人聞きが悪いけど、商売人としての甘さですな。そこにつけ込まれて大失敗しとりますな。

 でも、そうやって頭を叩かれながら1つ1つ仕事というもの、経営というもの、なにより人間というものを体得した。だから「神様」になれたわけでしょうな。

 経営はだれも教えられません。痛い目にあって覚えるしかありませんな。
 成功体験はいらないどころか邪魔ですな。
 失敗こそ徹底的に学ばなあきまへんな。
 ほんとうは経営のど素人なんや。けど、ど素人だからこそできたんや。
 まだ経営理念を語ってはいけませんな。
 小さな会社なら資金繰りは奥さんに任せなあかん。社長は売れる商品づくりとセールスに懸命にならんと。
 理と利の2つを両立させまひょ。
 少しせっかちくらいのほうがいいですな。
 わからなければ聞いたらよろし。
 無理難題は笑顔で返さなあかんで。

 神様になってからの幸之助さんはどうでもええねん。大切なことは、そこまでにどんだけ痛い目にあって知恵を絞ってきたか。
 それと、幸之助さんというと、やっぱり古い。いまのパナソニックの経営がどうなのか、そこにどう活かされているのか、どこがどうすごい経営なのか、ここを明らかにしないで、勝手に神様に祭り上げたら、本人の本意ではありませんな。

 本書はそこをきちっと押さえた・・・と著者みずから自負してるんですから、ま、そのように理解してくださいませ。いままでの幸之助さんの本や幸之助さんのことを書いた本のどこにも書かれてない話をわんさかご紹介しました。

 とくにいまのパナソニックの経営にどう活かされているか、パナソニックのユニークな経営手法のあれこれについても初公開しております・・・(続きは会員のみ視聴できます)。