2011年11月19日「プレシャス」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 この2ヶ月間、映画館にも行かず、たまに観るDVDといえば、「スパルタ総攻撃」「ハンニパル戦記」「ベン・ハー」「トロイ」「キングダ・オブ・ヘブン」「クロムウェル」「アッティラ」とヨーロッパのヒーローものばかり。

 そんな中でなかなかの秀作がこれ。



 主人公は「プレシャス=宝物」というミドルネームからはとてもとてもほど遠い16歳の女の子。

 1987年のニューヨーク・ハーレム。実の父と義理の父からレイプされて2人の子供を産み、「男」をとられた母親からは虐待の日々。

 生活保護を詐取するだけで自暴自棄の母親の口癖は、「おまえみたいなバカに教育はいらないよ」「勉強したって仕事はないよ」。

 でも読み書きのできないプレシャスは、娘たちのためにも勉強したい、そして尊敬されたいと願っているんだけど、妊娠がばれて退学処分になっちゃう。

 フリースクールで出会った女教師(これがポーラ・パットンという超美人女優)に刺激を受けて、勉強の喜びを実感するんだけど・・・ある時、母親が学校に訪ねてきてひと言。

「父親が死んだ。エイズだった」

 調べてみたらプレシャスも陽性。絶望にさいなまれるわなあ。これでは。。。

「恋人もいなかった。レイプされただけの人生。獣といわれ続けてきた。私のことなんてだれも愛してない」
「子供たちはあなたのこと愛してるよ」

 プレシャスにとって唯一の楽しみといえば、「妄想」。つらいことがあると必ずダンスと歌が巧いスターになってチヤホヤされてる自分を夢見てようやくバランスをとってる。この点、「どですかでん」の乞食親子の世界だわな。

 貧富の差、教育格差、近親相姦、DV、移民、ドラッグ、エイズ。。。いまもなお悪化しているアメリカの抱える病巣がベースになっている映画。

 う〜ん、こんだけ暗いのに、なぜか明るいのはなぜなのか。哀しすぎて笑うっきゃない、つうことか。。。

 それにしても、ソーシャルワーカー役ですっぴんのマライア・キャリーが好演してますな。最初見たとき、あれ、どこかで見たことあるぞ。だれやろ。。。あのムチムチイメージをすべて消し去ってましたね。

 プレシャスのダメな母親を演じたモニーク(コメディエンヌ)がアカデミー助演女優賞。うん、それだけの作品だと思う。