2012年10月29日「冬の運動会」

カテゴリー中島孝志のテレビっ子バンザイ!」

 徹底的に本の整理をしました。ついでにDVDも整理しちゃおう。ざっと3000本はあります。

 ホント、いろいろあんの。黒澤、小津もあれば、「高校教師」「ビューティフルライフ」「幸福」までありますからね。


 見っけ。向田邦子さんの作品シリーズ。見ちゃいました。


「おまえも持ってたのか? アジトを?」
「アジト?」
「隠れ家さ」

 男の気持ちを書かせたら、やっぱ向田邦子という人は巧いですな。

 家が嫌いなのに、どういうわけか、足は家に向かう。厳格な祖父は元裁判官。70過ぎたいまも大学で教える身。口やかましい父親は総務部長。司法試験に4回も落ちてサラリーマンになった。

「ボクの時間を返してくださいよ。この人は、こいつはできが悪い。とてもオレの子とは思えない、とおふくろに言ってたんですよ。それがどうですか? このザマは」

 じいさま、半年前に知り合った女を引いて、ま、せっせと通ってたわけ。そのカノジョがくも膜下で突然逝っちゃった。通夜の席で自分も倒れちゃう。で、枕元で父親が祖父に問いただすわけ。

 アジト。隠れ家。

 家ではなにもしない。ふんぞり返って、「お茶!」としか言わない人物。女の家では下着まできちんと折りたたむ。

 口やかましい父親は、これまた、わが子に完璧さを求め続ける。自分の息子には高校時代に万引きで補導されたことをいまだに責めるくせに、亡くなった親友の奥さんとその息子には愛用のゴルフセットまでプレゼントする。

 実は、この奥さんに好意を寄せてる。奥さんのほうもまんざらでもない。だから見合いを勧められても断り続けてる。

 孫はといえば、祖父と父が同席して、かつて法律的に助けてやって再建できた会社にコネ面接。万引き経験のことまで社長に話す父親にプライドを傷つけられて飛び出る始末。で、バイト先の靴屋の老夫婦のことを父さん母さんと呼んでいる。

 素直になれない。そういうリズムがある。 



 向田邦子さん不朽の名作「冬の運動会」。岡田准一、長谷京、植木等、國村隼、樋口可南子のみなさんが出演。

 家庭のほかに隠れ家や擬似家族を抱えてる。その秘密が明らかになったとき、男たちは互いにどんな顔をするのか・・・。

 血が繋がってないほうがかえって仲がいい。表面的にはね。家族だから衝突する。諍い、対立、緊張、ストレス、不満、反感。。。少しの間だけでも息抜きできる時間とか場所がほしいのかも。

 踊り場? そう、アジト、隠れ家は自分らしさを取り戻す「踊り場」のことかもしれませんな。

 長谷京がこんなに可憐に見えたドラマはありませんな。オリジナルはいしだあゆみさんがやった役だけど、長谷京のほうがずっといい。


 さて「中島孝志の 聴く!通勤快読」でご紹介する本は『決断する力』(猪瀬直樹著・PHP)です。詳細はこちらからどうぞ。