2012年12月25日「楽園のカンヴァス」

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 実は、これ、来年1月半ばにご紹介しようと思いまして、すでに吹き込んでいたんですね。
 ところが、TBS系の情報番組「王様のブランチ」で紹介され、しかも作者にインタビューまでしてましたからね。

 しょうがない。もう取り上げちゃいましょう。



「おのれの情熱のすべてをぶちまけろ、とピカソは言った。新しい何かを創造するためには、古い何かを破壊しなければならない。世間を敵に回しても、自分を信じる。それこそが、新時代の芸術家のあるべき姿なんだ。息子ほども年の離れた天才画家の進言を、ルソーはそう解釈した」

 表紙はアンリ・ルソーの描いた「夢」という絵画。そう、ピカソが絶賛した天才にして、毎度のことですが、カンヴァス1枚買うカネもなく、不遇のままこの世を去った芸術家の絵ですね。

 これとまったく同じサイズ、構図で描かれた「夢を見た」という絵画。謎ばかりのこの絵画をめぐって、スイスバーゼルに住む世界一のコレクターから「真贋」の鑑定を依頼された2人のキュレーター(学芸員)。



 それぞれ野心を抱えながらも芸術には真摯に臨み、どこまでもフェアプレイを繰り広げる。

 端正な文章です。なんつっても、ルソーの清貧な生き方を「入れ子構造」で読ませる技はなかなかのもの。すっかり満喫してしまいましたよ。ルソーについて何冊も本と画集を買い込んでしまいました。

 この本、実は直木賞・芥川賞作品。落選作品のすべてを高校生読書委員会が精査、比較検証。結果、落選ながらもダントツ1位に押されたもの。選考委員会のセンセ方より高校生のほうが目利きやわあ・・・。

 さて「中島孝志の 聴く!通勤快読」でご紹介する本は『楽園のカンヴァス』(原田マハ著・新潮社)です。詳細はこちらからどうぞ。