2013年01月18日アベノミクスってどうなるの? 第4弾

カテゴリー中島孝志の不良オヤジ日記」

 安倍さんもあちこちで言及してますし、その周囲のブレーンたちも盛んに言ってますね。

 いえね、次期日銀総裁のことですよ。もち、いまの白川方明さんだって再任されるかもしれません。まあ限りなく可能性は低いでしょうが。

 それにしても、いろんな条件をつけてまんなあ。英語ができること、(外国大学の)博士号を持ってること、企業経営の経験があること。な〜んてね。

 こんな枝葉末節はどうでもいいんでしょう、ホントはね。

 白川さんは修士号(シカゴ大学)しか持ってないけど、博士課程に通うほど暇じゃなかったんでしょ。「もらう」より「与える」立場になっちゃったわけでね。
 こんな格付けなんて、服部料理学校の服部先生に、「そういえば、あなた、調理師の資格持ってなかったよね」というのと同じですわな。実績を云々する以前に「資格」をあげつらうとこなんざ、彼らの世界は「身分制度」なんかねえ。つまり「階級社会」てヤツ。

 階級社会という限定された特権社会に憧れてるんでしょうなあ。。。

 物価上昇率の数値目標=インフレ・ターゲットにしても、「物価も賃金も上がらない状況が長く続いた日本経済では現実的でない」とばっさり。デフレにしても、「日本の消費者や企業は物価は上がらない、というのが普通の感覚」という正論を白川さんは述べています。

 ま、そういうわけで再任はありえませんな。白川さん憎しの御仁はウハウハでしょうね。

 安倍首相と政府の本音は、デフレ対策に熱心な人であること。そのための量的金融緩和を徹底したり、物価上昇率に数値目標をもって当たる人。。。これでしょ。ま、そうなりゃ、合理的に政府債務を減らせますからね(言い換えますと、「国民からの富の収奪」ということです)。

 もうお忘れかもしれませんが、民主党政権てありましたよね。あの政権にカンチョクトという政治家がいました。2015年から所得税、相続税の増税をしまっせ、と安倍政権は発表しましたけど、これは「税と社会保障の一体改革」でカン政権が決めたことですね。で、このカン政権では「物価上昇率を数値化し、成果を上げられなければ、総裁をクビにする」という法案も用意してたんです。

 で、最近の流れを見てますと、これはいよいよ「インフレ・ターゲット」にコペルニクス的転回をするしかないんかなあ、と思わざるをえなくなりました。

 というのはね・・・。
 
 不況の原因はデフレではなく、90年代から一貫して非効率的な分野に血税を注ぎ込んできたこと。成長率が低いのも当たり前。こんだけムダ打ちしていまのレベルで収まってるのが奇跡ですわな。

 それはひとえに勤勉で慎ましい国民のおかげです。

 さて、不況になると過剰設備が整理されますね。時代遅れの設備はおシャカにし、コストばかりかかって儲からない、つまり、採算の合わないビジネスはやっていけなくなります。道楽や趣味でビジネスはできなくなります。

 ダメな経営者は解任されます。株主も取締役会も従業員も労組も堪忍袋の緒が切れます。いいことですな。そうやって企業という生き物は新陳代謝を繰り返し、よりマーケットに順応した組織へと進化するわけですね。「好況よし、不況またよし」と松下幸之助さんはよく言ってましたもんねえ。

 不況になると、衰退産業がマーケットから追い出される一方で、未来産業とか成長産業、ニュービジネスの芽が少しずつ出てきます。で、その産業が設備投資を盛んにします。失業者もこういう成長産業が吸収します。あるいは、安い労賃を求めて海外進出してた製造業に成り代わって、コンビニだとか介護ビジネスなどが人をたくさん採用するようになります。つまり構造転換ですね。

 設備がいよいよフル稼働する頃には、なんとか景気が持ち直して税収も増えてきます。

 で、何年か経ちますと、フル稼働してるうちにマーケットに製品やサービスの供給量が増えてきます。ある程度まで増えると需要を超えます。すると、商品がだぶつき始めるわけですね。
 このように「供給過剰」になると、ものが売れなくなります。売れなくなると価格を下げたり、10個ワンパックで激安みたいな売り方を考えるなど、創意工夫しなければなりませんね。

 つまり、買い手市場になると売り手はよりいっそうの創意工夫と真剣さで勝負しなければ生き抜けないわけですね。

 市場競争力のなければ、利益を吐き出して債務超過となってマーケットから消えざるを得ない企業も出てくるでしょうし、「まあ潮時かな」とさっさとキャッシュを手にして解散を決め込む起業家もいるかもしれません。
 で、またまた不況になると、賃金が減らされ、巷には失業者があふれ、税収が減り、失業手当を求める人が増えると、政府は増税したり、国債を発行したり、歳出を絞る緊縮財政に走るようになります。

 税収が減る中、いままでと同じサービスを提供することは、まあ難しいでしょうな。ふつうの発想ではね。

 資金繰りに窮した企業は不動産を売却したり、賃下げをし、従業員のリストラを断行し、株や債券、国債を投げ売りします。投げ売りになると国債価格は暴落します。価格が暴落すれば利回りは上昇します。企業経営者は融資を求めて金融機関に殺到します。すると貸出金利が上昇します。高い金利でも借りなければ倒産するとなれば、経営者は泣く泣く手を出しますわな。価格が下がり、金利が上がれば、国債をたくさん保有する生損保のなかには逆ざやになって経営が厳しくなるところも出てくるでしょう。

 債権が無事に回収できればいいですが、不良債権が増えると何%かは回収できなくなります。で、債務超過に陥る金融機関も出てくるかもしれません。こうして金融システムが破綻することになります。

 世界恐慌はこんな流れで発生したわけですね。そして国債価格が暴落した結果、長期金利が急騰します。

 ところが、日本の長期金利(10年物国債)の利率はどうかというと、ただいま1%未満です。こんな低金利は500年前のジェノバ以来ですから、「歴史的事件」です。日本の国債は円建てですから、いざとなれば、円を刷ればいいだけのこと。万が一、急騰したら、日本どころの話ではなく宇宙規模で大恐慌になっていることでしょう。
 日本は金本位制でも管理通貨制度でも、どちらでも生き残れる地球唯一の国家なんですね。

 安倍さんとちがって、民主党政権には野心的でクールな政策アドバイザーがいなかったのか、バブル崩壊以降、100兆円超の「方向ちがいの公共投資」を繰り返した、かつての自民党政権のように、衰退産業に血税を投入しています。たとえばLCC勃興の昨今、コスト・パフォーマンスの低い新幹線建設に3兆円の予算をつけるなど、いかに近視眼、ドメスティックな視座しかないかがわかります。

 バブル崩壊時の国債発行残高は161兆円。それがいまや1000兆円超となりました。

 インフレ・ターゲットへとコペルニクス的転回をしたいのは、政治家は景気には敏感でも、デフレやインフレにはあまり関心がないこと。電力料金がめちゃ上昇してインフレ率が2%を超えても、「まだ不景気だ」「うちは儲かってません」と衰退産業のボスたちが政治家に陳情したら、「量的緩和をもっと続けろ」「新発国債を引き受けろ」と日銀に圧力をかけないともかぎらないからです。

 ならば、政治家がごちゃごちゃ言えないように、物価上昇率が2%超になった瞬間に金融を引き締めてしまう「インフレ・ターゲット」へと、はなから切り替えてしまう方法もありかな、と思うのです。

 どうせ再任されないからすべては後任にまかせる、という諦観もあるでしょうが、やはり、これだけは譲れない、という時限爆弾を仕込んでおいてもいいのではないでしょうか。


ようやく増刷分ができあがりました。「友人が読みたいというんで虎ノ門書房の本店に行ったら売り切れてたぞ」とお怒りのT論説委員殿。もう入ってます。けど、私にどこに売ってるか聞かれてもねえ。。。


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