2013年03月15日「法外の法、理外の理」ということ。

カテゴリー中島孝志の不良オヤジ日記」

 高知県の山中に1人の老婆がいた。長男はあるのに次から次へと子どもが生まれる。避妊法も知らないから、つい妊娠してしまう。貧しさゆえに生活もできない。自然、間引きとなった。

 徳川の時代が続いたのはほかでもない。間引きを認めていたからだ。

「子どもらはみなこの床の下にうずめてあります。わたしはその上に毎晩寝ております。極楽へなぞいこうとは思いません。地獄でたくさんです。あの世でどんな苦労をしてもいい。早く死んだ子どもたちと一緒に賽の河原で石を積もうと思います」

 江戸時代の人口は中期以後一般に停滞したとみられていますが、部分的にみれば増加しています。東海地方で志摩・伊勢・尾張・三河・遠江、東山地方で美濃・飛騨・信濃・出羽、北陸は若狭をのぞいたすべて。山陰もほぼ全体にわたり、山陽は備中以西、四国は全体。九州は筑前・筑後・肥前・肥後・日向・薩摩が増えています。浄土真宗で産児殺しが罪悪と考えられる社会では人口は増えていき、やがて生産と生活のバランスがとれなくなるわけです。

 ある村で大きな梵鐘をつくったものの、それを吊り下げることができなくて困った。
 村の子どもの中に、まず梵鐘に合わせて鐘楼をつくり、鐘の竜頭を梁につないで、鐘の下の土を掘っていけば梵鐘はおのずから吊り下がることになるのではないか、と考えた者がいました。
 村人たちはなるほどと思って、そのようにしてみると簡単に鐘を吊り下げることができた。

 同時に、「こんな子どもは将来なにをしでかすかわからない」と空恐ろしくなり、村人たちはその賢い子どもを殺してしまった、というのです。

 こんな話が民俗学者の宮本常一の本にあります。どれもこれも哀しい。無知と貧困がなせる罪業かもしれません。しかし、これが苦しい中、庶民が編み出した生活の知恵であることも事実。

 法外の法、理外の理。世の中にはそういうものがデンととしてあるものです。

 物価高を阻害されたくなくて、「消費税還元セール」を法律で禁止するのだとか。アベノミクスの学者さんたちが考えそうなことです。「景気は気です。気分です」「心理が大きく作用するのです」とわかっているならば、こんな小手先の策を弄することもあるまいに、と思います。

 ああ、そこまでしなければインフレには向かないんだな、と透けて見えてしまいました。たぶんインフレにはならんのでしょう。 

 ご存じのように、上場企業の内部留保・剰余利益は積もりに積もり、かといって設備投資には回さず、安倍首相の懇願でベアを決めた企業も出てきました。パナソニック、ソニー、シャープ、東芝が束になってかかって3倍してもサムスン1社の時価総額にかなわないのです。さあて、円安がどんどん進む中、M&Aを仕掛けられたらどうするのでしょうか? 

 ロジカルに考える。一見、正しいようです。けど、「なんとなくおかしい」「どことなく変だ」と訝しげに感じる庶民の感覚。このほうがずっと正しいのです。
 商品は安いほうがいい。ライバル店より1円でも安くします。税金はとられたくない。あれこれいろんな選択ができる・・・この社会を壊してはいけません。


 さて「中島孝志の 聴く!通勤快読」でご紹介する本は『エネルギー論争の盲点 天然ガスと分散化が日本を救う』(石井彰著・NHK出版)です。詳細はこちらからどうぞ。