2003年11月17日性急に回答を出してはいけない

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いい加減な政府

 近頃、不思議なことがたくさんあります。とくに不思議なことは次のこと。

 なぜ、「先送り」の大得意な日本政府が、こと、イラクへ自衛隊派遣についてだけはそんなに急ぐのかということです。

 面倒なこと、難しいことは、「それ、後回し!」とすぐに未決箱に入れてしまうのに、これだけは早い、早い。おかげで派遣される自衛隊員は腹をくくっていることでしょう。

 「愚かな政府のためではなく、自衛隊の誇りにかけて行ってくる!」と。

 イラクは報道の通り、フセインの故郷である北部はもちろん、最近では南部までが混沌としています。暴動とテロ。国内のそこかしこでテロ行為があれば、米国軍も消し止めることは無理です。

 だんだん、ベトナム戦の二の舞という様相を呈してきましたね。

 さすがに、政府も防衛庁から調査隊を派遣し、その間、自衛隊員の派遣は延期となっています。これはトルコ政府が派遣を中止したことを受けて、諸外国の動向に連動しただけのことでしょう。

 実はイラク国内がもっと混沌としてくれば、日本政府は米国に対しても言訳ができるわけです。

 いまこそ、得意技の「先送り」を取り出す時ではないでしょうか。伝家の宝刀をいま出さないで、いつ出すのか。




北朝鮮より怖い!

 自衛隊のイラク派遣については、与野党がまともに議論もせずに閣議決定となるなど、きわめていい加減な判断としかいいようがありません。

 「どこが戦闘地域がぼくに聞かれてもわかるわけないじゃないか!」

 小泉さんのおっしゃる通りです。「どこが」という限定的なものではなく、テロというのは「全地域」が狙われているのです。アメリカを悩ませたベトナム戦でも、ゲリラの本質はテロ行為でした。

 自衛隊派遣については、「東京にテロを起こすぞ」というアルカイダの報復メッセージもあります。

 地震より怖い、北朝鮮より怖いのは、このテロ行為かもしれません。トルコもテロ行為があったから、政府は派遣を取りやめたのです。

 こうなると、日本を取り巻く環境はどうも関東大震災時と似てくるような気がします。あの時、震災後のどさくさに、「朝鮮人が暴動を起こすぞ」というデマが流れ、たくさんの人が殺されました。無政府主義者の大杉栄が殺されたのもこの時でした。

 日本の場合、たいていのイスラム教徒は外見で判別できます。となると、警視庁を管轄する東京都の石原さんのことですから、片っ端から中東人を職質し、パスポートの掲示を求め、なければ即刻、逮捕でしょうな。「麻薬やシンナーの密売摘発と併せて、ちょうどいい機会だ」となるかもしれません。

 いちばん怖いのは、日本人の間でイスラム教徒に対する忌避感情がいたずらに広がることです。「慢性的過剰反応発作症」の日本人のことですから、テロ一発で国民はガラリと変わりますよ。

 一つなら「イラク派遣中止!」の国民的シュプレヒコール、もし二回続いたら、「憲法改正 イラクに派兵しろ!」となるでしょう。こうなると、民主党には出る幕がありません。小泉さんの持論があっさり通ることになります。