2003年08月11日踊る大総裁選

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効果的なコントラスト

 以前、本欄で「コントラスト効果」を紹介したことがある。

 かいつまんで言うとこうなる。

 心理学の実験で次のようなケースが報告されてます。

 まず、四種類のグループを作る。第一のグループは終始一貫して誉めちぎる。

 第二のグループは、これとは逆に否定的な言葉だけを浴びせるようにする。

 第三のグループは、最初に誉め、次第に非難するようにする。

 そして、第四のグループは最初は否定的な評価を与えるものの、最後の最後には称賛するようにする。

 まったく事情を知らない人は、どのグループに好意を持つか?

 正解は第四グループです。ほとんどの人がこのグループをあげる。心理学では、これを「コントラスト効果」という。

 あなたにも経験があると思う。

 たとえば、手を熱い湯の中に入れておく。次に普通の水に入れると、これがとても冷たく感じる。あるいは、「おまえ、バカだなぁ。だけど、気だてはいいよな」と言われるほうが、「おまえ、気だてがいいな。だけどバカだよな」と言われるよりもいい。これは コントラスト効果の変化球。表現の順序を入れ替えただけで効果がガラリと変わるのである。

 人は最初から認められるより、はじめは叱られたり、否定されたりするというマイナス評価でも、後になって誉められたり、尊敬、信頼といったプラス評価を得られれば、それまでの嫌なことがすっかりいい想い出に変わってしまうのである。

 反対にもっともダメなグループは、第3グループ。最初は人気取りに固執するけど、次第に非難へと変節するタイプ。どんなに理があろうが、変節漢、狡猾漢と映るわけだ。

 「あの野郎、最初のうちだけ乗せといて、最後に本性をあらわしやがった」

 こうなると信頼関係は総崩れになる。




ドミノ倒しがはじまる

 さて、自民党の総裁選が熱気を帯びてきた。

 いまのところ、小泉さんの対抗馬として早々と亀井静香さんが名乗りを上げ、全国を行脚してるようだ。

 この人は現実路線。とにかく、いまを良くしようという対処療法的な政治家である。だから、現実主義であり、ばらまき行政の典型的な政策を掲げるだろう。政治は結果責任だから、これで停滞する景気に風穴を開けられればいいが、はたして、どうか。

 橋本派は乗るだろうか? 乗らないと思う。なぜか。この人では衆院選は勝てない。まして、来年の参院選も勝てない。選挙に勝てない総理では支える意味はない。だから、少なくとも総選挙はなくなる。

 投票という現実路線では小泉さんは劣勢である。だから、解散総選挙を担保にとって、ブラッフをかけている。しかし、亀井さんのおかげで小泉さんは得をした。「ますます構造改革をしなければ、日本は危うくなる」と国民、とくに首都圏の有権者は再認識したのではなかろうか。これは亀井さんとのコントラストのおかげである。小泉さんにとって、亀井さんは怖くないと思う。ぜひ出馬して欲しいとさえ考えているだろう。いま、取りざたされている候補者なら、まったく怖くない。いちばん困るのは、最後の最後になって亀井さんが降り、落下傘のように穴馬が出てきた時だろう。

 自民党は政策的に割れる。いや、すでにもう割れている。唯一の絆は政権を失いたくない、ということだけだ。政権を失った小泉さんは新生民主・自由党連合と提携するという選択肢もあるのではないか。自民党右派、左派と割れることもないではない。

 実はそうなって欲しい。

 菅さんは厚生大臣当時から反官僚政治を推進するのは小泉さんとタイプが似ている。小泉さんよりもしたたかで官僚に騙されない。小沢さんはもっとしたたかだ。やはり、何度も言うが、「小泉グループ+自由党+民主党鳩山グループ」が合同するのがいちばんすっきりする。

 自民党総裁選から、いよいよ、日本の戦後既得権益をめぐるドミノ倒しがスタートする。