2003年08月04日「成功する人材がしていること」「通販だけがなぜ伸びる」「脳が若返る30の方法」

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」


1 「成功する人材がしていること」
 小松俊明著 アスペクト 1200円

 著者は元々、住友商事に勤務後、ベンチャー出版社を経て、現在、外資系ヘッドハンティング会社に在籍しています。
 早い話が、ヘッドハンターというわけです。

 で、本書も転職に成功する人、しない人という切り口になってるんだけど、内容が実話のオンパレードなんで面白い。アパレル、広告代理店、外車販社、製薬会社といったように、業種もバラエティに富んでるから、転職を考えている人には必読書ではないかと思う。

 これがマニュアル本、ノウハウ本だと途中で捨てたと思うけど、組織の中で成功する人材ってどんな能力、資質が必要なんだろう、と考えた時、参考になるアイデアを提案してくれている。
 わたしは転職本ではなく、ごくごく普通の自己啓発書として読ませてもらいました。

 転職時にはいろんな質問がされます。
 たとえば、
 「過去の上司で最悪だった人を思い浮かべて欲しい。その人がなぜ、最悪だったのかを教えて欲しい。もし、具体的な人物像が浮かばなければ、どんな上司なら最悪かを教えて欲しい」
 この質問には要注意。
 というのも、実は罠が隠されているからです。この回答次第で、その人の仕事に対する価値観が透けて見えるんです。いったい、この人は仕事に何を求めているのか。どんな仕事ぶりか、どういうことをされると我慢ならないのか、がわかるんですね。

 たとえば、「女性だからといって軽い仕事しか与えない人」と答えたら、この人物はキャリア志向が強く、「女性だからといって」という価値観が強いということがわかる。
 「もっと権限を委譲して欲しい」と答えた場合、この人は上司を使う技術が下手な人だ、とわかる。
 「指示が曖昧で困りました」という回答に、「あなたは仕事の進捗状況をどのように報告していたのですか?」と突っ込まれて、当人から明確な回答が何も返ってこなかったことがあります。
 「明確な指示がない」と非難する本人が実は明確な報告をしていないということがわかるんです。
 当然、この人は採用を見送られました。
 理由?
 「そもそも指示が明確ではない、といった程度の上司を最悪の上司とはいわないから」ですよ。

 アメリカでは、レファレンス(照会活動)が転職時の常識です。
 レジメ(職務経歴書)やインタビュー(面接)だけでは判断できません。そこで、信頼すべき第三者から情報を仕入れるためにレファレンスをするわけです。
 採用側の狙いは、ズバリ、候補者の人間性、仕事ぶり、実力を聞き出すことにあります。
 それだけに、応募者のほうも、口裏を合わせてくれる人を候補に上げるんですね。「この人に聞いてくれ」という具合に。
 会社を辞めようとする人は、「もし転職する時、ぼくのレファレンスを引き受けてくれますか?」と、それとなく、上司や取引先にサウンドしたり、依頼、折衝することも少なくありません。

 ところが、このレファレンスがくせ者でこんなことがあります。

 「彼は優秀だから、素晴らしい点がたくさんあるのは百も承知。だけど、ここだけは何とかならないか。こうすれば、もっと素晴らしいビジネスパースンになるのになぁ、というポイントをあえて上げるとしたら、どこだろうね?」
 「彼は仕事はずば抜けてできるますよ。保証します」
 「けど、完璧な人ってのはあまりいないでしょ。ここだけはもっと勉強するといいっていうポイントがあるでしょ?」
 「それはね、あれだけ優秀だから一人で突っ走る傾向があるかなぁ。そこが周囲からちょっと浮いてしまう懸念なんだよね。今度の会社では周囲の意見を聞くようにって、ボクもアドバイスしてるんだけどね」
 「いいアドバイスですね」
 「そうでしょ? それからね・・・」とどんどん聞き出してしまうわけ。
 で、応募者はこの雄弁なレファレンスのおかげで見事に落ちました。ジャンジャン!
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2 「通販だけがなぜ伸びる」
 鈴木隆祐著 光文社 740円

 いま、いちばん元気な業界じゃないかな。なにしろ、朝から深夜まで一日中、通販番組やってるでしょ。
 以前は落ち目のタレントばかり使ってたけど、最近は売れっ子を呼んだり、かなり充実してきました。やっぱり、もういい年の女優を見るのは辛いですよ。
 物真似されてるジャパネットタカタの社長なんて、もうバカ売れでしょ?
  三洋電機のカーナビ「ゴリラ」。ソニーのワイドテレビ「ベガ」なんて、ジャパネットだけで2万台も売ったというんだから、もうすごいものです。

 ところで、日本通信販売協会では、01年度の通販業界の売上規模を2兆4900億円と発表しています。
 前年度比4.2%といったところ。
 この時期、小売業全体では百三十六兆円。通販業は全体の1.83%しか占めてません。 けど、成長率は凸凹もあるけど、右肩上がりであることは事実。

 利用率は男性が53.6%に対して、女性76.9%となってます。これはテレビ、ラジオを聞いてる率の差でしょう。
 内訳は女性が30代(88.6%)、40代と続くのに対して、男性は60代、20代がほぼ60%前後で拮抗しています。
 通販の利用媒体としては、一位はカタログ(52.6%)、以下、テレビ、雑誌広告、DM、折込、ネットが20%前後でほぼ同等。やはり、紙媒体が圧倒的なんですね。

 参考までに、わたしの好きなのは世界文化社の「食べ物カタログ」ですね。これ、かなり質のいい商品をラインナップしてますからね。あと、「セコムの食」。これも商品が吟味されてるからいい。
 いずれにしても、食べ物関係しか興味がないから、ほかのカタログは見ません。
 以前、アスクルを使ってたんだけど、これ、カタログはものすごくいいんだけど、インターネットの場合、ものすごく使いづらい。注文しづらい。
 どうなってるんだろう。
 インターネットで注文するより、実際に買いに行った方が早い、というくらい使いづらい。いまのところ、コクヨよりも売上が大きいようだけど、こと、インターネット分野だけを取れば、時間の問題じゃないかな。それくらい、使いづらいと思う。

 さて、ジャバネットタカタは元々、「カメラのたかた」という町のカメラ屋さんでした。
 27歳の高田社長は父を手伝っていたわけです。記念撮影に旅行の添乗、宴会場での出張撮影など、売上は月間55万円前後。
 「これをなんとか300万円にしよう」と細かく戦術を考えます。これは松浦市の商圏から考えて、ほどなく達成してしまいます。
 その後、86年、株式会社たかたを設立。カメラ業の傍ら、ソニーの特約店としてビデオカメラを扱っておりまして、一軒一軒、訪問販売を繰り返します。
 この時のセールストークがいま、役立ってるんですね。

 通販との出会いは、90年、長崎放送「通販九州」でラジオ通販をしたのがきっかけ。といっても、深夜枠の30分番組でした。
 お金もないし、人材もいない。そこで、すべて自分でMCをやってしまったわけ。
 このスタイルがいまでも続いているというわけです。たいしたもんだねぇ。
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3 「脳が若返る30の方法」
 米山公啓著 中経出版 1300円

 この著者、ずいぶん本を出してるんで、医療ジャーナリストだとばかり思っていました。ホントのお医者さんだったんですね。

 さて、IQの高さとビジネスや研究などでの成功度で比例するのは一割しかないんです。
 そういえば、嗅覚では犬や狼に勝てず、スピードではチーターに勝てず、パワーでは象に勝てず、泳ぎではイルカに勝てない。それが人間です。いくら知識の宝庫でも、その使い方、パフォーマンスが悪ければ、お金持ちにはなれませんし、仕事も地位も成功するところまではたどり着けないでしょう。
 IQと成功はあまり関係がありませんね。
 IQより、他人とのチームワークができる人、素直な人、周囲の力を活用するのが巧い人、アイデアが画期的な人のほうが、こと、ビジネスでは成功をつかむ確率が高いですね。

 たとえば、絵の巧い人もいる。営業が巧い人もいる。同じ仕事を3年間もやっていれば、向き不向きがわかってきます。
 さて、その時、どこに力を注ぐか。どこに資源をフォーカスするか。どこにスポットライトを当てて生きていくか。それを考えないといけません。

 本書は脳の本ですが、脳はどう使えば効率的なのかということに少しだけ言及しています。
 たとえば、脳は好きなことをしている限り、あまり疲れない。
 それどころか、好きなことをするためにどんどん能力が進化していく。脳神経細胞同士のネットワークが変化するからですね。

 「何が向くか?」を考える時、わたしは音叉の共振効果をイメージしてもらえばいいと思います。
 やっててびんびん響く、黙っててもその仕事に創意工夫がどんどん湧いてくる。こういう仕事は向いてるんです。
 たとえば、ものすごい大金持ちの人がいます。仕事もできます。
 けど、本人は学校の勉強などまったくできません。本書には「頭の善し悪しは遺伝ではない」と書いてありましたが、この人の家族はみんな勉強ができません。ものすごく高い家庭教師を雇ってましたが、結局、子ども達はみんな大学には行きませんでした。
 だって、勉強が嫌いで嫌いで苦痛だったからです。
 けど、彼らは料理が大好きで、いま、フランス料理店を営んでます。成功というところまではいってませんが、好きで好きで堪らないといいます。
 だから、創意工夫も苦になりません。

 さて、この親父さんはものすごく商売が巧いのですが、その方法は違法行為すれすれです。
 子どもの頃から勉強はできなかったけど、悪事になるとどういうわけかガンガンと湧いてくるそうです。悪知恵を考えると、ワクワクしてくるそうです。
 だから、もちろん、疲れない。三度の飯より、悪事が好き。
 こういう人は悪党に向いてるんです。それがたまたま商売上もうまくいってしまった、というわけです。
 本書には書いてありませんが、脳には正邪という判断はありますが、回転数には正邪の別はないんですよ。

 どんな対象であれ、使えば使うほど脳神経細胞は活性化するんです。
 たとえば、ロンドンタクシーの運転手さん。この免許取得は大変厳しいことで知られています。
 ロンドン大学のエレノア・マグアイアー博士がタクシー運転手16人、一般人50人を調査したことがあります。
 SMRI(構造的核磁気共鳴画像法)で脳の構造を調べたところ、運転手さんの脳には「海馬」が顕著に発達していることがわかりました。ここは記憶を一時的に残すメモリー機能があるところですね。海馬の後方右側が3%発達するだけで、脳神経細胞は20%もアップするんです。
 プロとアマとの差というのは、ここなんですね。

 プロは創意工夫を厭わない。どんどん研究する。勉強する。そういう人の脳はどんどん活性化するんです。
 これは年齢には無関係であることが最近の研究で明らかになっています。
 ということは、何ごとにも好奇心がなく、いつも「疲れた」「めんどくさい」という口癖の若者の脳はおそらくどんどん小さくなっているはずです。
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