2003年04月07日戦争と経済
カテゴリー価値ある情報」
「上のもん」がいない
先頃、亡くなった深作欣二監督の作品に「仁義なき戦い」というものがあります。
これは五部作なんですが、第3部が「仁義なき戦い 代理戦争」。脚本は笠原和夫さん。
主人公の広能昌三にはたった1人の義兄弟がいます。その男がまだ網走刑務所に収監されていた広能を訪ねてきます。
「兄貴、いま、広島はガタガタじゃ。兄貴が出てくるまでに、わしが広島の地ならしをしといちゃる。みな、ぶっ殺したる」
「テルよ。戦争は斬った張ったよりも後かたづけが大変なんじゃ。それは若いもんにはわからんけぇ、上のもんが教えてやらにゃいけんのよ。おまえらは知らんのよ。後かたづけがどれほど大変なものかをのぅ」
「なに、いうちょるんな? 兄貴はムショの病気にかかっとるんじゃないの?」
「そうかもしれんがのぅ」
このテル役、実は主人公を演じるはずだった松方弘樹さんが演じていましたね。
いま、後かたづけがどれだけ大変なのか。それを教える「上のもん」がいません。
世界最強のアメリカは力は強大ですが、頭に血が上っていますからね。正義を振りかざした熱血漢ほど、たちの悪いモノはありません。
北朝鮮にも「上のもん」がいませんね。いま、封切の映画「007」を先週観ましたけど、あれは北朝鮮が舞台です。「上のもん」の言うことを聞かず、反目し、最終的には飛行機の中でドンを殺す息子。
アメリカは先輩格の歴史あるヨーロッパにしても「上のもん」ではなく、落ち目の存在、格下と見てるでしょうな。
データを見ると面白い
さて、4月1日から「めざましテレビ」に週1〜2回出てますが、周囲の反応は「たったこれだけ?」「あっ、出てる。妻を呼んでる間にコメントは終わって、画面が切り替わってる」という声が聞こえます。
そうなんです。10〜20秒くらい。ホントにひと言なんだよね。でも、あれ、収録は1時間〜2時間くらいあるんですよ。
どうしてそんなに長いのか?
はい、アナウンサーやほかの人が話す台本も、すべて、わたしが話した内容から構成されてるからなんです。データにしてもそう。舞台裏はこうなってるんですね。
さて、実は明日、また収録があります。お題は「有事と株価について」です。
番組側の質問は「株価はどうして決まるのか?」「有事のドル買いはいまでも通用するのか?」「ドルの性格は?」「物価の動向は?」「日本のマーケットはどうなる?」「戦争と株価の関係は?」といろいろあります。
この中で面白いのは「戦争と株価」ですね。好奇心の赴くままに、「日経プロフィル」で過去の戦争時の株価推移を調べてみると、これが傑作。
たとえば、不透明なイラク情勢の影響を受けて、ニューヨーク株式市場も下落基調が強まっています。ダウ平均株価(工業株30種)も「8000ドル」を挟んで前後500ドルという不安定な状態ですけど、91年1月の湾岸戦争時、当時、アメリカの株価は、「ベトナム戦争の二の舞では?」といった思惑から、開戦までの半年間は株価が低迷してたんですね。しかし、開戦後、すぐに終結したことで株価は一気に上昇。日本の株価は当時もいまも米国株に連動してます。日米は安保だけではなく、経済的にも一蓮托生なんですね。
個別に見れば、上がる銘柄も必ずあるんです。たとえば、「有事株」。
イラク、北朝鮮とも大量破壊兵器が問題になり、防毒マスクが注目されるから、そのメーカーで興研(東京都)と重松製作所(同)は短期間に5割アップもしてるんですよ。
さて、戦時下のダウ工業株30種平均は総じて上昇してるんです。戦争開始時は下落しても、軍事支出増や復興需要などを期待する投資家が多いためですね。
では、一気に大昔の話をしましょう。
過去の戦争と株価の推移
たとえば、太平洋戦争。
日本軍が米軍基地への攻撃を開始した12月7日(現地時間)は日曜日で株式市場は休場。翌日のダウ平均は前週末比3.5%安の112ドル台。欧州大陸で戦火が拡大していたため、その前からダウ平均は下落基調を辿っていたが、翌年4月には100の大台を割り込み92ドル台まで下げます。これは開戦前に比べ2割減。けど、その後は戦況の好転とともに上昇基調に転じ、終戦の末には192ドル台に上がります。
たとえば、朝鮮戦争。
アメリカの株式相場は下落する局面があったものの、同年は年間を通じるとダウ平均は18%上昇。50年末から休戦協定が成立した53年末にかけては20%上昇してます。
日本ではどうか。朝鮮戦争の数字の流れを確認すると、たしかに戦争勃発から日経平均はガンガン上がっています。50年6/25スタートですから、この時の終値が86.17円。それが大納会では101.91円、翌51年は1月が115.43円からはじまり、大納会は166.06円です。一年で日経平均が2倍になってます。同様に52年は362.64円、そして53年7月は386.13円と日経平均はなんと4倍です。ところが、終結直後に450.87円をピークに、54年になると320〜350円の間で行ったり来たり。
たとえば、ベトナム戦争。
アメリカでは末期の72年11月にダウ平均は1000ドルの大台に乗せます。当時、「ニフティ・フィフティ」(すばらしい50銘柄)と呼ぶイーストマン・コダックやシアーズ・ローバックなどの大型優良株に資金が集中し、株価が高騰するバブルが起きます。これが崩壊するのは73年1月に和平調停が調印されてから。74年末に577ドルまで下げ、高値からの下落率はなんと45%。
日本はどうか。ベトナム戦争は64年8月北爆開始直後からどんどん下がってます。そして、持ち直すのは翌年末。それまではガタガタ。
面白いのは終結前後のほうですね。68年に停止しますが、それからガンガン上がってます。やはり、日本にとっては朝鮮戦争は直接、儲かったけど、ベトナム戦争はすでに泥沼にアメリカが引きづりこまれたために、終わってからのほうが景気が良くなった。すなわち、顧客がまともになったということですな。
先頃、亡くなった深作欣二監督の作品に「仁義なき戦い」というものがあります。
これは五部作なんですが、第3部が「仁義なき戦い 代理戦争」。脚本は笠原和夫さん。
主人公の広能昌三にはたった1人の義兄弟がいます。その男がまだ網走刑務所に収監されていた広能を訪ねてきます。
「兄貴、いま、広島はガタガタじゃ。兄貴が出てくるまでに、わしが広島の地ならしをしといちゃる。みな、ぶっ殺したる」
「テルよ。戦争は斬った張ったよりも後かたづけが大変なんじゃ。それは若いもんにはわからんけぇ、上のもんが教えてやらにゃいけんのよ。おまえらは知らんのよ。後かたづけがどれほど大変なものかをのぅ」
「なに、いうちょるんな? 兄貴はムショの病気にかかっとるんじゃないの?」
「そうかもしれんがのぅ」
このテル役、実は主人公を演じるはずだった松方弘樹さんが演じていましたね。
いま、後かたづけがどれだけ大変なのか。それを教える「上のもん」がいません。
世界最強のアメリカは力は強大ですが、頭に血が上っていますからね。正義を振りかざした熱血漢ほど、たちの悪いモノはありません。
北朝鮮にも「上のもん」がいませんね。いま、封切の映画「007」を先週観ましたけど、あれは北朝鮮が舞台です。「上のもん」の言うことを聞かず、反目し、最終的には飛行機の中でドンを殺す息子。
アメリカは先輩格の歴史あるヨーロッパにしても「上のもん」ではなく、落ち目の存在、格下と見てるでしょうな。
データを見ると面白い
さて、4月1日から「めざましテレビ」に週1〜2回出てますが、周囲の反応は「たったこれだけ?」「あっ、出てる。妻を呼んでる間にコメントは終わって、画面が切り替わってる」という声が聞こえます。
そうなんです。10〜20秒くらい。ホントにひと言なんだよね。でも、あれ、収録は1時間〜2時間くらいあるんですよ。
どうしてそんなに長いのか?
はい、アナウンサーやほかの人が話す台本も、すべて、わたしが話した内容から構成されてるからなんです。データにしてもそう。舞台裏はこうなってるんですね。
さて、実は明日、また収録があります。お題は「有事と株価について」です。
番組側の質問は「株価はどうして決まるのか?」「有事のドル買いはいまでも通用するのか?」「ドルの性格は?」「物価の動向は?」「日本のマーケットはどうなる?」「戦争と株価の関係は?」といろいろあります。
この中で面白いのは「戦争と株価」ですね。好奇心の赴くままに、「日経プロフィル」で過去の戦争時の株価推移を調べてみると、これが傑作。
たとえば、不透明なイラク情勢の影響を受けて、ニューヨーク株式市場も下落基調が強まっています。ダウ平均株価(工業株30種)も「8000ドル」を挟んで前後500ドルという不安定な状態ですけど、91年1月の湾岸戦争時、当時、アメリカの株価は、「ベトナム戦争の二の舞では?」といった思惑から、開戦までの半年間は株価が低迷してたんですね。しかし、開戦後、すぐに終結したことで株価は一気に上昇。日本の株価は当時もいまも米国株に連動してます。日米は安保だけではなく、経済的にも一蓮托生なんですね。
個別に見れば、上がる銘柄も必ずあるんです。たとえば、「有事株」。
イラク、北朝鮮とも大量破壊兵器が問題になり、防毒マスクが注目されるから、そのメーカーで興研(東京都)と重松製作所(同)は短期間に5割アップもしてるんですよ。
さて、戦時下のダウ工業株30種平均は総じて上昇してるんです。戦争開始時は下落しても、軍事支出増や復興需要などを期待する投資家が多いためですね。
では、一気に大昔の話をしましょう。
過去の戦争と株価の推移
たとえば、太平洋戦争。
日本軍が米軍基地への攻撃を開始した12月7日(現地時間)は日曜日で株式市場は休場。翌日のダウ平均は前週末比3.5%安の112ドル台。欧州大陸で戦火が拡大していたため、その前からダウ平均は下落基調を辿っていたが、翌年4月には100の大台を割り込み92ドル台まで下げます。これは開戦前に比べ2割減。けど、その後は戦況の好転とともに上昇基調に転じ、終戦の末には192ドル台に上がります。
たとえば、朝鮮戦争。
アメリカの株式相場は下落する局面があったものの、同年は年間を通じるとダウ平均は18%上昇。50年末から休戦協定が成立した53年末にかけては20%上昇してます。
日本ではどうか。朝鮮戦争の数字の流れを確認すると、たしかに戦争勃発から日経平均はガンガン上がっています。50年6/25スタートですから、この時の終値が86.17円。それが大納会では101.91円、翌51年は1月が115.43円からはじまり、大納会は166.06円です。一年で日経平均が2倍になってます。同様に52年は362.64円、そして53年7月は386.13円と日経平均はなんと4倍です。ところが、終結直後に450.87円をピークに、54年になると320〜350円の間で行ったり来たり。
たとえば、ベトナム戦争。
アメリカでは末期の72年11月にダウ平均は1000ドルの大台に乗せます。当時、「ニフティ・フィフティ」(すばらしい50銘柄)と呼ぶイーストマン・コダックやシアーズ・ローバックなどの大型優良株に資金が集中し、株価が高騰するバブルが起きます。これが崩壊するのは73年1月に和平調停が調印されてから。74年末に577ドルまで下げ、高値からの下落率はなんと45%。
日本はどうか。ベトナム戦争は64年8月北爆開始直後からどんどん下がってます。そして、持ち直すのは翌年末。それまではガタガタ。
面白いのは終結前後のほうですね。68年に停止しますが、それからガンガン上がってます。やはり、日本にとっては朝鮮戦争は直接、儲かったけど、ベトナム戦争はすでに泥沼にアメリカが引きづりこまれたために、終わってからのほうが景気が良くなった。すなわち、顧客がまともになったということですな。