2003年03月31日「ヤクザに学ぶ交渉術」「ヒットビジネスの発想術」「東京コメディアンの逆襲」

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」


1 「ヤクザに学ぶ交渉術」
 山本重樹著 幻冬舎文庫 533円

 この著者、愚連隊とかヤクザものを得意としてるんで、すっかり、「本職」だと思ってたんです。ほら、安部穣二さんのケースもありますからね。
 でも、フリーライターだったんですね。

 中身はすべて具体的なヤクザの交渉例のオンパレード。すべて実話だから、迫力満点。
 やっぱり、交渉事に情報力と理論武装が必要。そして、何よりも何よりも大事なことは、「自分の利益のために黒を白と言い張るだけ性根がすわってなければできない」ということでした。
 なるほど、だから、外務省じゃダメなのか。
 なるほど、だから、河野洋平センセのような甘ちゃん大臣は舐められたのか。
 なるほど、だから、「国益よも私益」を優先する政治家は北朝鮮に米を送り続けたのか。

 この世界、普通の世界とは違います。
 白を黒と言い張れる世界なんですね。で、それがまかり通る世界です。ただし、この背水の陣、絶対に折れないという根性がある時は、どんなに強大な相手でも認めるんですよ。
 それは些細な損でケンカをしたくない。男を下げたくない。相手の根性に敬意を表する。いろんな理由があると思います。
 「これを押し通せば、世間はどう言うだろうか? 他人はどう思うだろうか?」というような他人の目よりも、ヤクザは自分がどう思うか、どう考えるかというほうが大事なんです。

 早い話が「思い込みの美学」といったものがあるんです。
 これは強い。総会屋だって、ちょっとした相手企業の無礼に腹を立てて、結果としてお金をむしり取ることになっても、「これは正義だ」「いま、オレがやってることは弱い人たちのためなんだ」と思い込んでる時はむちゃくちゃ強いんですね、彼らも。

 「あんさん、それではスジが通らんやろ?」
 このスジというのが、彼らの美学であり、ロジカル・シンキングなんですね。
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2 「ヒットビジネスの発想術」
 西村晃著 成美堂出版 524円

 これは簡単に読めますよ。1項目3ページくらいの情報の羅列ですから、10分あれば大丈夫。
 「なぜ?」「待てよ!」というコピーなど、「疑問力」という本によく似てます。やっぱり、逆転の発想というのは疑問力が大事なんですね。

 タクシードライバーでもなんでも、上位ベストテンにランキングされる人の顔ぶれはたいてい変わりません。
 だから、浮き沈みや運が左右されそうな仕事であっても、そこに必然性というものが出てくるんですね。偶然ではなく、必然です。
 たとえば、インフルエンザが流行れば病院で客待ちをする、運転免許センターに来る人は自分で運転しない人が多いからそこで待つ。イベントを新聞や雑誌でチェックして、その終了時刻に行く。
 長距離乗車する客には、名刺を渡す。こんな具合ですね。ただ、この最後の部分はたしか違反だと思うんですけどね。

 深夜営業というスタイルでも、コンビニとドンキホーテでは客の目的が違う。
 コンビニは欲しいモノがすぎ手に入るのが身上だから、売れ筋商品がいつもの場所にある。すぐに見つけられることが大事。けど、ドンキは「深夜のジャングル」だから、ぶらぶら歩き、そぞろ歩きの暇つぶしが目的。新宿にもありますけど、始発待ちの人たちが緊急避難的に来てるもんね。
 わが書斎から車で5分のとこにもありますけど、わたしはできるだけ行きません。わたしのようなせっかち人間には向いてないかも。プリンタのインクが無くなった、という時しか行かないな。

 100円ショップですけど、これは内容が充実してきてますね。
 元々、「五百円玉一個で三十分遊べるエンタテイメントビジネス」と創業者の矢野さんは言ってましたけど、いま、100円ショップ専用の本まで出てるくらいですからね。国語事典も100円。これが1日50冊も売れる。店舗数が2400もあるから、1日12万冊ですよ。
 10日で120万冊。とんでもない本屋ですね。
 こんな事例ばかり、たくさん掲載された1冊。
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3 「東京コメディアンの逆襲」
 西条昇著 博美館出版 1200円

 著者は作家、構成作家、お笑い番組のプロデューサーをしてる人です。たとえば、加藤茶とか志村けんとかの番組ですね。
 元々、高校出てから三遊亭円歌師匠(むかしの歌奴)のとこに弟子入り。でも、これは2年くらいで辞めて、俳優とか構成作家を目指したとのこと。
 俳優といってもエキストラなんだけど、寅さん映画の「サラダ記念日」に出てる。しかも、この時のエキストラ募集で出川哲朗と一緒だったというんでチェックしてみました。
 たしかに出てます。オープニングで寅さんがいんきちのシューズを売ってる。そこに現れた客が笹野高史さん演ずる詐欺師。ちゃっかり履いてそのまま逃げちゃうわけ。それを追いかける若者役が出川と著者なんです。

 さて、お笑いオタクとして、子供の頃からかなり突っ込んで研究してることがよくわかります。芸人と現場で一緒に呼吸しているから、その歴史や経緯がよく伺える好著。とくに、欽ちゃんと横沢彪さんとの対談も面白い。よく突っ込んで、彼らの記憶をうまく引っ張り出してますね。

 たとえば、志村けん。
 欽ちゃん曰く、「昔、日本テレビのディレクターから言われたの。欽ちゃん、気をつけた方が良いよ。怪しげな男が1人いるから。毎週、毎週、コント55号の台本無いですかって、買いに来る。不気味でしょ? 後から欽ちゃんを追っかけてくるとしたら、あいつじゃないかね」
 と言われたらしい。これがドリフに入る前の志村けん。
 ディレクターも目利きですな、ホントに。

 「欽ちゃんのドンといってみよう」という番組があったんだけど、この時、この無番組でディレクターに「大阪からだれか面白いの連れといで」といったら、ジミー大西とダウンタウンを連れてきた。
 だけど、この時のダウンタウンは遠慮しいしいで、彼らの型破りな持ち味がまったく出てなかったらしい。2人ともかなり控えめだったようです。まっ、欽ちゃんの前ではあがりますよね。

 ところで、出川が著者とエキストラのオーディションで鉢合わせしたように、この世界、めちゃくちゃ狭いのよ。
 たとえば、いま、司会で活躍してる久本雅美、柴田理恵、そにワハハ本舗の親玉の佐藤正宏、座付き作家の食始(くい・はじめ)にしても、元々は、東京ヴォードビルショーにいたのよ。彼らが集団で脱退して旗揚げしたのがワハハなわけ。
 で、このヴォードビルショーは佐藤B作が主宰してるんだもんね。佐藤B作にしても、あの柄本明(東京乾電池の座長)と一緒にいたのが自由劇場。
 わたしはどうも佐藤B作の芝居って好きじゃないんです。先日も紀伊国屋ホールで、吉本和子さんに客演した芝居を見ましたが、退屈で1時間ほど爆睡してたらしい。でも、起きた時にそのままストーリーにすっと入っていけるのが凄かった。
 さて、このヴォードビルショーで研究生をしてたのが、極楽とんぼの加藤と山本です。

 大竹まこと、きたろう、斎木しげる、これに風間杜夫は同じアパートで暮らしてたんだけど、つかこうへいの劇を上演してた劇団暫(しばらく)にしばらくいて、その後、シティボーイズを結成すると、竹中直人、いとうせいこう、中村有志と一緒にユニットを結成して活躍するわけ。

 井上ひさしが座付き作家として活躍したテアトル・エコー。
 ここは熊倉一雄さんという名優がいすが、ここの養成所にいたのがコント赤信号、野沢直子、電撃ネットワークの南部虎弾、それにダチョウ倶楽部の寺門ジモンと上島竜兵といった面々。
 三宅裕司が主宰するスーパー・エキセントリック・シアターにしても、ここにいたのが岸谷五朗、寺脇康文。
 俳優にしても、芸人にしても、売り出す前にはいろんなとこで草鞋を脱いで勉強してるってことですな。
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