2005年05月09日「視聴率200%男」「放送作家になろう」「企画の王道」
1 「視聴率200%男」
安達元一著 光文社 680円
6月24日(金)に開催する「キーマンネットワーク勉強会」の特別講師が、著者です。
いやはや、アイデアの塊ですな。
「ガキの使いやあらへんで」「SMAP×SMAP」「ぐるナイ」「伊東家の食卓」・・・といった高視聴率番組がありますが、この番組を企画し、そして放送用の台本を書いている人。それがこの著者です。
こういう仕事を「放送作家」って言うんですね。古くは永六輔さんとか前田武彦さん、それにいまやセンセイとなった大橋巨泉さんに亡くなった景山民夫さんといった人がいますね。そうそう、東京都知事だった青島さんも放送作家でしたね。
この人の自慢は「バラエティタレント国士無双」をあがった、ということがあります。
国士無双というのは麻雀の役満(最高の役ということ)のこと。
つまり、バラエティ部門のタレントで大御所と呼ばれるタモリ、たけし、さんま、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、とんねるず、ナイナイ、SMAPの番組を担当してるわけです。
で、いま、彼の番組のすべての視聴率を足すと200%(週間)になるんです。そのまんま、タイトルにしちゃったわけですな。
さて、放送作家の仕事について具体的に見ていきましょう。
たとえば、プロデューサーやディレクターに呼ばれて会議に出る。
「今度、情報系の番組をやりたいんだけどなぁ・・・」という発言があった。
このとき、実は彼らの頭の中にはすで4〜5パターンは持ってるはずなんです。
放送作家たるもの、10〜20くらいはひねり出せないとお呼びがかからなくなります。
「ダイエットや健康ブームだから、健康クイズ番組にしよう」
「いままでないものをしましょうよ。歴史は案外、穴場です。歴史上の偉人がなんでそんなことをしたのか。教科書に載ってない歴史クイズをやりましょう」
「いや、まじめな情報は受けないから、実験クイズにしましょう」
「やっぱり、子供。子供の素朴な笑っちゃう行動をウォッチングして、それをクイズにしましょう」
「スタジオではおもしろくありません。マラソンしながら、クイズに答えてもらいましょう」
「クイズに答えがあることが呪縛だ。前代未聞。答えないクイズ番組にしよう」
こんな風に、いいにつけ、悪いにつけ、とにかく多くのアイデアを出す。そうやって、会議でメンバーの企画の幅を広げてやるというのも仕事の一つです。
「13年間のキャリアのなかで580本の企画書を書いた」と言います。このすべてが実現したわけではありません。ものになったのは、「30〜40程度」です。打率5パーセントですよ。でも、この数字は驚異的に高いんです。放送作家業界のイチローなんですよ。だから、こんな本まで書けるんです。
もちろん、業界用語でいうところの「1翻あげる(なぜか麻雀用語の多い業界だなぁ)」ことは大切ですよ。これはもう一ひねり、もうワンランク上げるという意味ですね。
いずれにしても、要諦はアイデアに最初から完成を求めてはいけない。アイデアは山のようなくだらない、使えないもののなかから、どんどん絞られていって最終的に使えるものが生まれる、てなことですね。
ところが、世の中には人の意見にチャチャを入れる奴が少なくありませんね。
「それは実現しないね」
「そんなことできるわけないだろう」
「つまんねぇの」
こういうタイプが1人でもいると、議論はどんどん尻すぼみになります。最後はみんなして腕組みして、「ウーン」。
どうしてそうなるか?
それは人の意見を否定するからですよ。オズボーンのブレーンストーミングでは「否定しない」が原理原則でしょ。否定しないで、それいいね。おもしろいね、とどんどん乗せて、乗せられ、アイデアを積んでいくわけです。
放送作家にもいろんなタイプがいると思いますが、彼の場合は身をもっていろんな実験をしてみるタイプですね。とくに、その実験というのはユニークで人がやらないことをする。こういう感じです。
たとえば、自動車免許。書き換えを失念して失効してしまいました。さて、そのとき、どうしたか。
普通は教習所にいってもう一度習う、一発受験を繰り返す、政治家にお金で頼む・・・。いろんな方法がありますが、彼が選択したのは「海外で国際免許を取り、それで日本で運転する」というものでした。
で、さまざまなルートをたどって、単身、フィリピンに渡り、現地法人の社員になって国際免許を無事、取得しました。フィリピンでは現地の芸能プロとか映画会社の人と知り合いになって、仕事になったとか。
さて、このとき、自分の体験をベースに「いちばんいい方法」という番組企画を考えました。免許を取るには、どこで、どんな風に取ればいいのか。プラチナチケットが欲しいなら、いったいどうやればベストなのか。
こういう「いちばんいい方法」を検証、紹介するという企画なんですね。
残念ながら、この企画は実りませんでした。番組にはならなかった。
でも、どこかでこんな企画、見たことありませんか?
そう、「伊東家の食卓」です。ウラ技紹介があるでしょ。あれです。つまり、回り回って、この番組で活かされたというわけです。
彼はどうして放送作家を志したのか。
それはラジオの深夜放送の投稿マニアだったんですね、中学生のときに。わたしもそうでした。せっせと投稿してましたもの。で、読まれると翌日、学校ではヒーローなんですよ。
「おい、昨日、読まれたな、すげぇなぁ」ってなもんですよ。彼の場合もそれが快感で、しかも採用率がものすごく高く、それで放送作家という職業を知ったらしいですね。
でも、アマとプロでは違うでしょ。当然、彼もプロになろうなんて考えず、「大学出て、いい会社に入って」という真っ当な(?)選択をします。だから、放送業界に入ろうという憧れを抱きつつ、本能だと思うんですが、放送作家セミナーみたいなのに参加します。そこで、放送作家事務所の代表の目にとまって一声かけられた。
それがきっかけなんですね。
あとから、どうして声を掛けられたかを知ってびっくり。別に書くものに才能があるとかないとかいうものではなかったんですね。
決め手は性格です。
テンションが高い。バカで仕切り屋。リーダーシップ。とにかく目立つ。これだけだったそうですよ。
放送作家というのは、書く仕事4割、しゃべる仕事(つまり、アイデアを出す仕事)が6割。つまり、コツコツ真面目に机に向かって書くというタイプではないんです。その人がいると、そこにハイテンションになる。場が活性化する。こういう波動の持ち主だったというわけですね。
これはポイントですよ。こういう人材は実はリーダーに必要な資質なんですね。
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2 「放送作家になろう」
佐竹大心著 同文書院 1365円
「笑っていいとも!」というフジテレビ系の長寿番組がありますね。
これが長生きしてきた理由。それはひとえに最初のコーナー、「テレフォン・ショッキング」にほかなりません。
一応、司会はタモリ。だけど、いまや、彼は刺身のつま。仕切ってるのは爆笑問題であったり、中居君であったりね。
さて、このコーナーで、タモリは連日、ゲストとトークします。
このコーナーは、いわば、番組の中のポジショニングとしては、NHKの朝ドラのようなもので帯番組になっているんですね。ゲストが日替わりで登場する。
次のゲストが誰なのかその時にならないとわからないというハプニング性もあります。
このコーナーが終わってから、その他の企画がはじまるんですね。いわはほ、オープニング・セレモニーなわけ。
タモリの出番はこれで終わり・・・でもいいと思いますよ。
けど、これで番組の屋台骨というか、鉱脈を見つけ、結果として番組に基礎体力がつきました。
お笑いって筋肉だと思います。年を取れば落ちてきます。スピードもなくなってきます。鍛えようとしても、筋肉そのものが落ちてしまってはダメだもの。
で、「恋のから騒ぎ」という明石家さんまさんが司会の番組がありますね。これって、「若い女性に説教したい!」というさんまさんの一声ではじまったらしいね。
この人、企画内容にもどんどんアイデアを出していくらしい。やっぱり、使われてるだけのタレントじゃダメなのよ。
プロデュースとか、アイデアの提案とかできないとね。
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3 「企画の王道」
王東順著 カンゼン 1680円
この著者はちょっと古いけど、というか大御所ですね。
あの懐かしい「クイズ ドレミファドン」「なるほど!ザ・ワールド」なんてヒット番組をプロデュースした業界の名物男です。
フジテレビに35年間勤めて、その後、CSデジタル放送の立ち上げてます。
「テレビの笑いは、家族に受け容れられるためには、ニヒルではなく健康的なものでないとダメ」
「一瞬で伝わるような、わかりやすい内容でないとダメ」
たしかにおっしゃる通りです。
「関口宏の東京フレンドパーク」って番組がありますけど、これ、タイトルに「東京」とつけたとたんに視聴率がガンガン上がっていったわけ。このアイデア、使えますよ。東京というイメージか大きいのね。
アイデアはいったん出続けると癖になります。癖になるまで考え続けると、どんどん湧いてきます。
立案に行き詰まったらひたすら考え続けるんです。
「2パーセントでもいいから視聴率を上乗せしよう」じゃダメ。「2倍を目指せ!」でないと、人は燃えない。
フジテレビの朝の情報番組の司会者に大塚範一さんという人がいます。この人、元々はNHKのアナウンサーで、「クイズ百点満点」「サンデースポーツ」といった人気番組の司会なんかをやってたわけ。
朝の情報番組という、やっぱNHKとか日テレが強いわけで、フジは弱いのね。
で、だれかキャスターをもってこないといけない。局アナじゃパンチもないし・・・。
だけど、放送2カ月前になっても、司会者も決まっていなければ番組タイトルも決まっていなかったのね。「めざましテレビ」というタイトルだって、著者が考えたんだもの。
で、ほんの些細な縁しかなかったけど、幹部から頼まれて、著者が説得にいくわけ。
「男ならやってみませんか? ボクだったらやりますね」
「メリットは収入が倍増することです。デメリットは保障がなくなることです」
「40代後半は、人生においても、体力面においても最後のチャンスかもしれません」
「チャレンジできる大塚さんが羨ましい」
これでフジテレビに引きずりこんじゃったわけ。
200円高。
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