2002年05月13日根っからの町人

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瀋陽の日本領事館事件


 中国で発生した北朝鮮家族の亡命問題。これがいま、世界注視のテーマになってますね。

 知人の中国人5人に聞くと、「あれは日本領事館保護のため、しかたなかったんじゃないの?」という意見で共通してました。

 「でも、女の子も連れてたよ?」

 「そういうテロだってあるんじゃないか?」

 「・・・」

 ないと思うけどね。

 発表によれば、中国側曰く「日本領事館の了解を得た」「感謝の意を呈してくれた」などと主張してますが、まっ、そういうでしょう、絶対に。そう言い張らなくちゃ、自分たちが大変だもの。そりゃ、必死ですよ。

 幻聴と思われようが、そう言い張りますよ。

 昔、トム・ジョーンズが売れないときに、ハンバーガーを買ってこいと言われた。

 「途中で落としちゃったんだ」

 その口のまわりにはケチャップがたっぷり。でも、最後の最後まで落としたんだと言い張ったわけ。こういうのを「藪の中」というんです。芥川龍之介の作品にもありました。

 これだけ注視されると、逆に中国側が意固地にならないかどうかだけが心配です。予定では、第三国経由で韓国に亡命することになってますが、本人たちはアメリカへの亡命を希望しているとか。

 アメリカのほうが手厚いことを知ってるんですね。


その罪、万死に当たる

 問題は、危機管理の欠如ということだけではありません。

 もっとも大きな波紋は、「日本人に人権感覚無し」「日本人に人類愛はない」「日本人にヒューマニティ無し」というイメージが世界中に広まったことです。

 これは大きいですよ。

 外務省という役所は、かの太平洋戦争時にも宣戦布告の書類をアメリカ政府に届けるのを失念して、パールハーバー攻撃を「不意打ち」にさせた張本人です。現在、真珠湾攻撃は事前に解読され、アメリカ政府は開戦の大義名分として、今か今かと待っていたことが知られています。

 しかし、使命感無き木っ端役人のおかげで、いまだに日本人は「卑怯者としてのイメージを払拭できないでいるのです。

 時は移って、60年後。世界に流れた映像は、泣く子を抱くこともせず、中国武装警察官の帽子を奴隷のように拾う姿ばかりでした。

 「あぁ、宦官のような人たちだ」

 当事者意識のあまりに耐えきれない薄さです。1864年8月、イギリス・フランス・オランダ・アメリカ合衆国4国の連合艦隊が攘夷派の拠点であった長州藩(山口県)制圧のために下関を砲撃し占領したことがありました。この時、彼らは上陸して驚いたそうです。農民や町人が怖がらないんですね。その理由を聞くと、「戦(いくさ)は侍のやることですから」とひと言。

 思わず、「あっ、そうか。日本は亡命なんてする人いないもんなぁ。駆け込み寺じゃあるまいし、こんなに必死になって、この人たちなにやってるんだろ? ラグビーのトライの練習かな?」と領事館員が感じたとしても無理はありません。なぜなら、この人たちは骨の髄まで「根っからの町人」なんですから。

 日経ビジネスが、昨年、「9.11同時多発テロ事件」の時に、在米アメリカ大使館がニューヨークにいた日本人に対してどんな扱いをしたかを詳細に報じていました。焼け出された日本人にホテルの情報すら教えなかったり、身内の接待に忙しくて、在留邦人の世話など後回しだったのです。

 この人たちは、四畳半の仲良しクラブの中の評判だけを気にしてるのでしょう。

 ムネオ議員たった1人で外務省全体を簡単に蹂躙できるのですから、この人たちにできる交渉などたかが知れています。

 中国はいま、ひとえにアメリカの意向を気にしています。日本など、何にも考えていません。中国にいちばん経済的な貢献をしている日本という国を完全に舐めています。

 なぜ、舐められるのか。

 それは今回の事件で浮き彫りになった日本人の行動を見れば明らかです。

 中国で生き恥をさらしてまで生きたのが宦官です。宦官が中国ではもっとも軽蔑される人間です。

 あの外交官たちは宦官以外のなにものでもありません。

 「日本人は宦官なのだ」

 今回、世界にイメージづけた罪は万死に値するものです。