2016年10月10日「後妻業の女」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 忘れんうちに、週末14日(金)の博多原原。ゲスト講師は奥村眞吾先生。で、二次会はいつもの「花唄」貸し切り。東京、名古屋、大阪メンバーで一杯! 奥村先生からとびっきりのワインを献上してもろとります。お楽しみに。。。


 「好きなことは読書と夜空を見上げること…わたし、尽くすタイプやと思います」

 この女。公正証書遺言をつくらせたとたん豹変します。
 「だって釣った魚に餌やったらハヨ死なへんやろ」

 で、死んだら正体さらけだしますんや。
 「あんたら父親捨てたくせに、死んでから娘面するんじゃないよ」

 う〜ん、豊田商事事件を思い出させますな、これは。

 封切りもう終わりっしょ、つう間際で滑り込みました。痛快でんなあ。笑えるわー。いや、笑えんわー。
 黒川博行さん、直木賞受賞後第一作の『後妻業』。家族にも見向きされないけど、金だけは持っとるジジイの「後妻」に収まって、その財産すべてを吸い取ってしまう。

 そう、「吸血女」が主役でんねん。

 孤独死、孤老死が頻発しとりますからね。あちこちで起きてますやろ。黒川さんもそうとう取材されたと思いますな。

 監督は『愛ルケ』の鶴橋康夫さん。まあ、飽きまへんわ。あっという間に2時間20分。で、主役の後妻が大竹しのぶさん。さすがでんな。巧いわな。いわんでもわかる、思うけど。

 私、この女優、デビューの時から嫌いなの。でも、演技力あるわあ。日本を代表する女優でんな。で、後妻業を裏で仕切る結婚相談所のボスが豊川悦司さん。私、この人、デビューからずっと好き。『青い鳥』『愛していると言ってくれ』『兄貴』・・・どれも良かったっす。


全編関西弁。「大阪=金」つうより「大阪=笑い」やからやと思う。化粧をすべてはぎ取った裸の人間ばかり登場するから「喜劇」なんやでー。

 「あんたらが捨てたジジイ、私が看取ってやったんや。金はどうせあの世にもっていかれへん。ええ夢見せてやったんや。そのお代や」

 笑ったのが鶴瓶さん。不動産業という触れ込みなんだけど、ホントは棹師なのよ。股間をさらしたとたん、「通天閣や。いや、スカイツリーや」やて。。。棹一本で女をメロメロにしちゃう。後妻業の女も魔力に吸い寄せられる処が人間らしくてええわー。

 欲の突っ張り合い。欲と欲とのガチンコ。人のことは笑えません。多かれ少なかれ煩悩の子ですからね。金、オンナ、セックス・・・こんなんはむき出しの欲でっしゃろ? 「あの世に金はもっていけない」なんぞと思うのはビンボー人。金持ちは「地獄の沙汰も金次第」と思っとるわけ。歴史的絵画だって、「わしが死んだら一緒に焼いて欲しい」と欲ボケするのが人間なわけ。

 幸せになりたい、成功したい、年金ちゃんと欲しい、家族に看取ってほしい、葬式にはたくさん来て欲しい・・・些細な欲だけど、多かれ少なかれ「欲の虜」なのよ。身の程知らずの欲か、丈にあった欲か。欲の主人になるか、奴隷になるかなんやろなあ。

 なーーーんもいらん。金もいらん。家族もいらん。命もいらん。
 仏陀の心境ですな。しっかし、たまらんやろな、そんな人生。欲の奴隷のほうが似合ってますな、私には。。。