2017年05月25日「うさき追いし 山極勝三郎物語」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

アマゾンKindle「本日の日替わりセール」に選出され、お陰様で総合2位にランクインしました! なかなか1位は難しいですね。昨日1日のみのキャンペーンでした。ありがとうございました。



 ウォーキング中に電話。1つは、外資系生保からの連載依頼。まあ、広報誌にはかなり書いてますからね、いまも。ウエルカムです。8月末から掲載されるらしいっす。
 で、もう1つがテレビ通販番組への出演だって。なに売るんかねえ。「金利手数料すべて○○負担です! いますぐご検討ください!」な〜んてやんのかしらん。
 よく聞いたら、あるテーマについて噛み砕いて解説すればいいらしいわ。ちゃんとMCがいるんだね。そらそうだわな。
 こちらは要検討。決まっても告知しませんから。恥ずかしいもん。NHK「テストの花道」出演も内緒にしてたのに何回も再放送してんのよ。まいるよなあ。。。


 さて、月1回は映画三昧の日を用意してましてね。ま、DVDは見ますけど、やっぱおっきなスクリーンで見たい映画はありますよね。原節子とかひばりの映画とか。浅丘ルリ子さんの映画なんてのはそう。テレビじゃやっぱダメ。

 作品が良ければ関係ないのかもしれんけど、やっぱ首までどっぷり浸かるつう感覚は映画館かな。場末でいいのよ。私ゃたいてい場末通いですから。

 つうわけで、次の3つを梯子しちゃいました。迷わないからね。ネット予約とか席の選択、リザーブなんて洒落たことできないのよ。とにかく「小屋」に行くしかないんだわ。


アカデミー賞総なめの映画。

ようやく来ました。待ってたのよん。DVD未発売だったのね。

こういう映画大好き。エンケンさん、静かな熱演でした。

 で、今回は「うさぎ追いし 山極勝三郎物語」をご紹介しまひょ。。。

 国立がんセンターとか、がん研有明病院設立に東奔西走した人つうより、世界初の人工的がん発生実験に成功し、その発生原因と治療法の解明に道を拓き、「数度」にわたってノーベル賞候補に推薦された医学者なのよ。
 
 16年のノーベル医学生理学賞は「オートファジーの仕組みの解明」により東工大の大隅良典教授が受賞されました。21世紀になって、日本人受賞者が急増してますけど、90年以上前の人ですからね。もし受賞してたら日本初=有色人種初となったでしょうね。あの頃は、絶対、有色人種には受賞させませんでした。北里柴三郎博士も高峰譲吉博士も横取りされてます。

 「近代日本を創った人を医学界から1人だけ選べと言われれば山極先生を挙げる」という人ばかり。

 ただいま、がん罹患患者数は年間90万人超の日本。町医者の婿養子として後継を義務づけられていた山極勝三郎が、がん研究にのめりこむようになったのは、ドイツの病理学者ウィルヒョウの発がん仮説=刺激説に着目。それを証明しようとしたわけです。

 外来刺激で細胞ががん化する、という説でしてね。化学物質による発がんてのは典型例です。
 もち、寄生虫でがんが発生するつう説も広く信じられてました。たとえば、デンマークのフィビゲル博士の「寄生虫原因説」ですね。

 ただし、がんと証明するには細胞が血管などに浸潤していること、ほかの臓器に転移することを示さないといけない。で、ウサギの52の耳に32個の乳頭腫(良性腫瘍、最短76日で発生)が、3耳にがん種(悪性腫瘍、最短150日)ができ、静脈への湿潤も認められた。350日までの観察でリンパ節転移も確認・・・。この偉業で山極は勲一等瑞宝章を受章。帝国学士院賞、ドイツのノルドホフ・ユング賞も受章しています。日本のがん研究のパイオニアでした。

 けど、ノーベル財団は1926年、寄生虫発がんを証明したデンマークのフィビゲル博士にノーベル医学生理学賞を授けます。山極博士との共同受賞という提案も退けられてしまいます。完全に人種差別ですよ(後年、フィビゲルの証明は誤りと判明したため授賞は間違いだったとされています)。

 東大病理学教室3階ロビーに山極の胸像があります。昔、論文作成で、養老孟司先生に疑問をぶつけて指導を受けたことがありましてね。たしかに胸像がありましたよ。

 山極博士の一番弟子長與又郎先生(後の東大総長)は日記にこんなことを残しています。
 「山極先生のもっとも優れたる点はその意志の強固たること、堅忍不抜、不撓不屈、勤勉、確固不動能(大事業を完成し、よく病魔を征服す。強固たる意志。意志の勝利・・・」
 
 がんなどできっこない、と多くの研究者から陰口を叩かれても、デンマークのフィビゲル博士に先を越されても実験を続けました。何がそうさせたのか?
 研究者にとっていちばん大切なことは成功でも名誉でもなく、ただただ真実を突き止めることにあります。山極博士はどうすればがんは人工的にできるのか、できるまでやる、という強い思いが実験を続けさせたわけです。

 わが国では、悪性腫瘍による死亡者は全死亡者の13%。81年から死因トップはがんです。2010年には3割を占めています。「不治の病ではなくなりつつある」といいながら、一進一退。けど「人間がつくったものなら必ず治せる」という山極博士の信念というか確信、仮説には元気をもらえるような気がします。


 さて、今日の「通勤快読」でご紹介する本は「怪しい人びと」(東野圭吾著・514円・光文社)です。