2017年07月30日「地獄絵ワンダーランド」(三井記念美術館)

カテゴリー中島孝志の「日本伝統文化研究会」」

 このイベント。太宰府でやってたんですよね。見損なっちゃってね。

 COREDO室町のついでに寄ったら、どんぴしゃ。

 平安時代、恵心僧都源信が『往生要集』を著しました。延暦寺ってのは、死んでいく僧侶にもインタビューしてたわけ。

 「あの世はどうだ?」とかね。

 けどさ、死と生とは道元さん言ってるように「前後裁断」なわけ。連続してないんですよ。「生」の次に「死」がある
考えてるのは人間だけで、「生」の次の世界なんてだれも知らんわけですよ。

 だから、死にゆく人に「生」のこと聞けばいいけど、「死」のことを聞いたってわかるわけないっしょ。臨死体験はあくまでも「生きてる側」からのレポですからね。三途の川を渡った人の話じゃないんだから。

 ま、そんだけ関心がある。恐怖の世界だったんだと思うよ。昔はね。


水木しげるさん絵もたくさん。。。

 悪行をなせば「六道輪廻」の悪循環(業=カルマ)から抜け出せず、現世よりもっと酷い苦界へ堕ちるんだ、と伝わることで、恐怖と不安はますます高まるわけ。

 六道のなかでも「地獄」が突出して恐ろしい世界として描かれてきたわけでね。

 六道輪廻から抜け出した人のことを「仏陀」というわけです。苦悩のない安らかな世界で生きる。どんなにありがたいか。あの道長でさえ極楽浄土をこいねがったわけでね。

 このイベントは地獄と極楽を美術を通じて描かれたモノです。死生観と来世観ですね。まさに「地獄絵ワンダーランド」ですな。



 仏教の説く地獄システムてのは、古代日本人にとってまったくの異文化ですよ。『古事記』に記された黄泉の国は神道ですから。汚れの世界ですね。
 六道輪廻とインド発祥の世界観です。地獄について仏典はかなり詳しく描いてます。こりゃゅ団鬼六先生の世界か、つう感じ?

 鎌倉時代以降に中国から「十王図」が伝わります。リアリズムに軸足がありまして、死者の審判者=十王てのはインドではありません。
 冥界を司る閻魔さんはインド産です。けど、中国の民間信仰と習合して10人の審判者に拡大しちゃいました。

 で、富山県の立山連峰は古代から死者の魂が集う霊峰として知られています。同時に過酷な自然環境から、山中に地獄と浄土が共存すると考えられてきました。