2005年02月28日「ただ、顧客のために考えなさい」「草原からの使者」「霊ナァンテコワクナイヨー」

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」


1 「ただ、顧客のために考えなさい」
 原 年廣著 ダイヤモンド社 1470円

 これ、プルデンシャル生命に勤務する知人から頂いた本です。で、内容はプロデンシャル生命についての話。
 だって、著者はこの会社がアメリカから上陸した時の営業の責任者だった人だもの。
 こういう実話本はコンサルタントが客観的に整理し、きれいにまとめた本よりドラマティックで面白いですな。

 いきなり、阪神淡路大震災からはじまります。
 あの時のことは、わたしもよく覚えてます。
 1995年1月17日の早朝ですもんね。わたし、その時、起きてました。すると、グラグラ。
 あっ、地震だ。揺れてるねぇ。長いねぇ。まいったねぇ。テレビ、つけてみました。全国的に揺れてるような・・・。
 で、あれだけの大惨事。当時の首相がちょっと呆けてたから、被害はさらに甚大なものになりましたね。
 この時、機動力を発揮したのはやはり民間企業。それに民間ボランティア。ホント、いざとなると、国とか役所はあてにはなりませんな。

 プルデンシャルの営業マン(ライフプランナーというらしい)も同じ。北大阪支社の半数の営業マンがバンに分乗して、顧客の元をしらみつぶしに回ったとか。いなければ、メモを残してね。
 すると、次に立ち寄った時に、そのメモに返信が書いてあったりするわけ。

 あまりいないでしょ。こういう営業マン。地震があって、顧客の状況確認に手分けして回るとかさ。阪神地区の営業マンが心配になって、経営者が視察にくるとかね(これはありそうだけど)。
 これって、ものすごく大事。社員教育というか、モチベーションのためにね。

 この会社で成功する人材とは、「根っからの営業マン」「潜在的に愛情の豊かな人間」であること。
 売って売って売りまくる。人の何倍も頑張る。人の何倍も人間に合う。すると、刺激を受ける。本当の勉強をする。
 「こんなんじゃダメだ」と気づく。
 バリバリ営業マンから脱皮する。一回り違う人間になる。顧客が困っていること、悩んでいること、望んでいること、そのニーズをつかんで、懸命に答えていく。
 「会社をたんなる優秀な営業マンの集団にはしたくなかった。心豊かな人間の集まりを目指した」
 会社の立ち上げで東奔西走した坂口会長(故人)はそう述べてます。

 阪神大震災の後の行動にしたって、そういうことです。
 わたしたちはたんなる営業マンではない。顧客との重要な架け橋としての役割を全うしなければならない・・・とかね。
 使命感、職業観を改めて確認する。そして、修正したり、後悔したり、「やっぱり、この会社で良かったんだ」と」と確信したりね。
 人の上に立つ人は、仕事ができればいい、させればいいってレベルではダメですね。モチベーションを高める、使命感を植え付けなければ、なんにもなりません。

 米国プルデンシャル保険の創業者はジョン・F・ドライデンさんですね。
 彼の創業の理念とは、「顧客のために」。それを具現化したのが「週払い3セント」という保険の販売です。
 なんてたって、創業したのは1875年ですよ。日本で言えば、明治時代になったばかり。
 アメリカは不況のまっただ中。
 都市はスラム化し、一般大衆の死亡率はどんどん上昇。とくに多かったのは乳幼児の死亡ね。
 でも、埋葬費がないわけ。

 保険金額は最低10ドル、最高500ドルに設定。で、それを週払い3セントでOKなわけ。
 めっちゃくちゃ価格破壊。
 10ドルあれば、葬式が出せるわけね。

 「この契約がなければ、私どものような貧しく惨めな家族は、あの子に何もしてやれなかったことでしょう。私には信じられない。プルデンシャルに幸あれ!」
 これ、15歳の子どもを事故で亡くした両親からのサンキュー・レターなんです。24時間以内に支払った。それで埋葬費を賄うことができたんですね。

 ある日、ライフプランナーが「友人が自殺した」ということを知ります。昔、ラグビー部で一緒だった人。
 「あいつ、保険、入ってたよな」とチェックすると、振り替え措置で失効を免れていた。急いで家族を探して、奥さんに報告。ほかの保険はすべて失効していた。
 「これで息子にもパパのことをきちんと伝えられます」
 学費、生活費を賄うことができるに足る金額だったわけ。

 生命保険って、いろんな使い方があるでしょ。
 独身の時はいらないけど、わたしは結婚と同時に加入。子どもができたら増額。独立したらさらに増額。
 だって、これ、家族に対する責任だものね。
 いつも迷惑かけてるから、死んだ後にはお金だけでも残してやりたいじゃないですか?
 いわば、最後のプレゼント。
 150円高。
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2 「草原からの使者」
 浅田次郎著 徳間書店 1680円

 これ、「沙高楼奇譚」の第2弾です。
 沙高楼ってのは、サロンのことね。女装の主人が夜な夜な、各界の名士を集めて開催している秘密の集まり。
 「沙高楼にようこそ。今宵もみなさまがご自分の名誉のために、また、ひとつしかないお命のために、けっして口になさることのできなかった貴重なご経験を、心ゆくまでお話しくださいまし。語られる方は誇張や飾りを申されますな。お聞きになった方は、夢にも他言なさいますな。あるべきようを語り、巌のように胸に蔵うことが、この会合の掟なのです」

 で、今回は4人の語り部による独白。

 これ、いま気づいたんだけど、「悪い奴ほどよく眠る」って黒澤明さんの映画があるでしょ。あの中で新聞記者の三井某という役者がいたね。
 彼の役回りをしているのが、このサロンの感想を述べている私と友人の小日向賢吉君ですな。
 作り方としては、女装の主人によるイントロがあって、語り部の独白へと続くわけ。

 第1話「宰相の器」。
 語り部は、総理を狙う代議士の秘書。
 彼が小心者の代議士から依頼されたことは、長期政権を築いた元総理二人が頼りにした霊能者を捜し出すこと。
 目的は、総理総裁選に出るべきか・・・勝てるかどうか、その一点。なにしろ、失敗したら政治生命は終わっちゃう。3代目の政治家だから、いままで勝負なんかしたことない。ただでさえ小心者。だから、信頼すべき霊能者のご託宣にすがろうってわけよ。
 さて、どうなることやら・・・。

 第2話は「終身名誉会員」。語り部は、国家予算の数分の1という財産をすべて失った男。
 いったい、どうやってすべてパーにしたか。まるで、狐につままれた話。

 第3話は「草原からの使者」。
 語り部は、無頼の男。実家は競走馬を何百頭も飼育する名門企業。
 とうとう父親が死ぬことになります。血がつながっていない父親には三人の子どもがいるわけ。
 父親を嫌ってさっさと独立した銀行員の兄、父親の経営する会社にたかって生きてきた自分、それから唯一、父親の血を受け継ぐ妹。妹には生真面目な婿がいるわけ。これも獣医としての腕は確か。
 で、父親の哲学は一子相続。だから、一人にすべてを委ねるつもり。
 そのためには彼が提案したことは、あの昭和48年5月27日の日本ダービーの競馬です。
 一人百万円。この競馬で勝つこと。いちばん多い金額を残したのが相続すること。
 さて、どうなることやら・・・。

 第4話は「星条旗よ、永遠なれ」。
 語り部は日本語ペラペラのアメリカ人。元陸軍大佐。
 男には哀しい、悲しい物語。だ、オレには早いけどさ・・・。

 小説っていいな、というのは長編物語もいいけど、こういう珠玉の小品と出逢った時ですな。
 150円高。
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3 「霊ナァンテコワクナイヨー」
 美輪明宏著 PARCO出版 1680円

 霊なんて怖くないって、読んでたら十分、怖いよ。
 お化けの話ばかりなんだもの。
 この人、天草四郎の生まれ変わりなのね。

 この世は魂の修行の場です。どんな人間と出逢って、どんな仕打ちを受けるか。これすべて試されているんです。
 いま、あなたを苦しめている人。悩ませていること。
 それって、実はあなた自身が前世で他人に対してしてきたことなんですよ。それをいま、自分が体験させられているってこと。
 わかるかなぁ・・・。

 いま、この世で解決しないと、また来世への宿題として持ち越しになります。いつまでたっても、魂は浄化しません。
 浄化というより、ステージがレベルアップしないということね。

 美輪さんが体験したこと、相談を受けて回答したこと。その一部が本書には収められています。「ハチロー(つまり、血脈ね)」の原作者の佐藤愛子さんとか、瀬戸内寂聴さんとか・・・ね。
 呪われていると感じたり、嫌なことばかり起こるのは、メッセージなんですね。
 自分のステージを上げれば、波長が変わりますからもうそんなことにも合いませんよ。
 ただ、魂のレベルを上げるにはどうすればいいか?
 それは本書を参考にしてください。
 150円高。
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