2018年04月04日向田邦子さんの素敵な素敵な素敵な最期の講演「言葉が怖い」を聴いたことありますか?

カテゴリー中島孝志の不良オヤジ日記」

 忘れないうちに・・・来週スタートの名古屋と大阪原原の2次会案内メー・リストを流しています。どちらも大型新人加入でますますパワーアップです。お楽しみに。


昨日、向田邦子さんのドラマ『幸福』について振り返ってみました。
 で、今日は「ついで」といってはなんなんですが、彼女が飛行機事故で亡くなる半年前に講演してるんですが、それについて少しお話したいと思います・・・。

 「頭がいい人」は掃いて捨てるほどいますが、観察眼が鋭い、人間がよくわかっている・・・となると、ほとんどいませんな。で、向田さんはそのレアな人間の1人だと思います。つうか、その代表ではなしかしらんとも思います。

 作品をご覧になればすぐにわかります。
 「よくまあ、こういう言葉が思いつくものだ。このシーン、このひと言しかありえないな」と恐れ入るばかりです。センスとか感受性というより、よく考えている。プロとしていつも言葉を「カンチャン待ち」してることがわかります。

 「カンチャン待ち」というのは麻雀用語ですから、そんな賭け事しらんよと言われたらひれまでなんですけど、ま、平たく言えば、「ほとんど期待薄の処に、ホントかよ、と声を上げそうになるほどドンピシャ。おお、ラッキー!ツイてる」つうことなんです。

 「言葉が怖い」

 こんなことが言えるのは、言葉を商売にしてるからというだけではなく、人に対してめちゃくちゃ優しいからですね。
 傷つけたくない。できることなら励ましてあげたい。そう思えばこそ、の言葉です。けど、実態はいつも知らないうちに人を傷つけてしまう。言ったとたんに、あっ、と気づいて唖然とする。「私ってダメね」と絶望的になる。そんなことが私には山ほどあります。

 「そうか、雄弁はせいぜい銀止まり。沈黙は金だもんなあ」とつくづく思い知らされるわけです。

 
とてもカッコイイ。「おばさん」なんて絶対呼べません。男は基本的にバカなオンナが嫌いではないけど(安心できるから)、中身ぎっしり。話せば話すほど味があって、たまにバカもできるオンナはたまらんと思うな。享年51歳。

 友和・百恵の披露宴ではたくさんのゲストがお祝いの言葉を述べたそうですけど、やはり森繁さんがサイコーだったとか。

 ロンドン公演で時間がある時にベンチで60代の女性が編み物をしてた。すると、彼女は森繁さんを突いて言うわけ。

 「靴の先を見なさい」

 なにか落ちているのかと思うと、また、「靴の先を見なさい!」といわれた。

 ふと見ると、ローレンス・オリビエが女性を連れて歩いてる。思わず見つめていると、「靴の先を見なさい」とまた言われた。
 「彼らはいまブライベートタイムだからじろじろ見てはいけない」
 
 この逸話に会場は拍手喝采。つまり、百恵さん夫婦に、子供いいつ頃かとか、余計なことは聞くな。彼らはいまプライベートタイムなんだ、という話です。もちろん、そんな話がパパラッチなんぞに通じるわけがありませんけどね。

 向田さん、思った通りの声でした。優しいけど、意思が鮮明できりりと鉢巻きをしめた雰囲気があります。 

 「言葉が怖い」。だから言葉を話さない猫を飼っているとか。面白いなあ。
 

 さて、今日の「通勤快読」でご紹介する本は「流行のライフスタイルに憧れて」(津田かおり著・1,188円・産業編集センター)です。