2018年05月05日「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」
カテゴリー中島孝志の不良映画日記」
あなたは教会のように孤独。外には人が行列をつくっているというのに。
これは映画というより「詩」ですな。
生きるモチベーションてのは人それぞれ違うんでしょうけど、やっぱ、「存在が求められている」とか「価値を認められている」という「実感」にあるのかもしれませんね。
「実感」てのは「主観」ですから思い込みでもいいんだけど。
一昨日ご紹介しましたけど、見てきましたよ。またまた。今月末で閉館するテアトル横浜。
支配人がどことなく淋しそうだね。
伊勢佐木町は日本最長モールなんすけど、サイドに場所取りしてる人たちがたくさんいまして、警官とボーイスカウトが交通整理してるわけ。
なんだろ? えっ、開港記念イベント? そうか、もうそんな時機ですか。
つうことはテレビ局も・・・来てる来てる。
パレードがあんのね。それにしても少なくなりました。昔は観客で立錐の余地なしだったのよ。人口が減った、ディズニーに行ってる、だけが理由じゃないな。イベントが毎度毎度のパレードだけなのよ。おもしろくないの。関係者だけじゃないの、見てるの。野毛の大道芸は先々週に終わっちゃったし。
来年はもっと減りますよ。雨降ったら終わり。
ふさがってる道をなんとかスペース見つけて映画館へ。
いつもがら空きの映画館にしてはそこそこ混んでるほうじゃないかな。けど、やっぱ、この雰囲気は場末だわな。ばあさん、じいさん。オヤジにおばさん。若いカップルは来んわなー。
モードはリュウマチを患って身体は変形。歩くのも少し苦手。家族は見栄っ張りで甲斐性のない兄。この前、ジャズクラブを倒産させたばかり。
おもりは規則にうるさい叔母。どちらからも「邪魔者」扱いされてきました。
「おまえはなにもできない」
「保護なしでは生きられない」
けど、モードは自立したい。いつもそのチャンスを狙ってるわけ。
そんなとき、短気で偏屈な男がメモを掲示板に貼り付けた。
「家政婦求む。掃除道具持参のこと。エベレット」
メモをひったくってモードは出かけていきます。
孤児院育ちの男はぶっきらぼう。人間関係をなかなかつくれないタイプらしい。でも、モードが描いた鶏を「天使か?」と。つまり、悪い人じゃない。
魚の行商をしたり、薪を売ったり。男は魚の注文を失念。NY出身の洒落た女サンドラがクレームを言いに来た。
「犬が食べたとか」
「飼ってない」
「猫は魚好きよ」
「飼ってない」
「・・・」
「これ(鶏)、あなたが描いたの?」
「いちばん幸福だった頃を描いたの」
幸福とは、チキンスープをつくるためにモードが殺すまでのことらしい。
これがきっかけとなってモードの絵を買い上げるようになります。ポストカードよりも大きなサイズの絵を求めるようになります。
魚の行商よりカネになるばかりか、ニクソン副大統領までが注文するわ、新聞やテレビ局が押しかけるわで、この男女は有名人になってしまいます。
ニクソンが副大統領ってことは、アイゼンハワーの時代でしょ。朝鮮戦争直後だわな。
モードは一族でいちばん不幸だと思われていました。たしかに、モードが産んだ娘は障害をもって生まれすぐに亡くなり、モードが一度も抱くことなく埋葬されてしまったとか。本人はリュウマチがこうじて背中が曲がり、その奇形のために子供たちから石を投げてからかわれたり。
でも、絵が売れた。はじめて絵が売れた。自分が描いた絵を買う、という人が現れた。「バカがいて良かった」とエベレットは言う。
絵の理解者が増え、モードの存在や価値を認める人が少しずつ増えていきます。そうして自己実現をかなえていくのでしょうか? どうもそうではないようで。売れようが売れまいが絵を描くことでしか寂しさを紛らわす術がなかったわけでね。
哀しい時、絵を描く。泣きたい時、絵を描く。絶望にうちひしがれる時、絵を描く。でないと、ホントに死んでしまいそうだから。
自尊心を満足すると、次は、だれの賞賛もいらない。自分が納得すればそれでいい、という(自己実現欲の)レベルに達する、とエイブラハム・マズローが言ったとか。
自己実現欲にはマネーは関係ありませんが、自尊心にはマネーが「付録」としてついてきます。マネーってとっても便利な道具ですよね。
でも、モードは贅沢からはほど遠い生き方をしてましてね。美味しいモノが食べたいとか、サンドラの綺麗な靴を賞賛しますけど、欲しいとは思わないし、まして自分が似合うとはさらさら思わないし。
せいぜいハエが家に入ってこないよう、網カーテンが欲しいな、というのがモードの夢といえば夢。
ちっぽけな夢。すぐにでもかなえられる夢。けど、エベレットがOKしなければかなえられない夢。そして、エベレットがかなえてくれた夢。
それだけで喜んじゃう。
絵が売れてると知った兄がモードの処にやってきました。マネーを管理するマネジャーになってやる、というわけ。でも、借金のために勝手に実家を売却した兄をモードは追い払います。
叔母は叔母で後悔したまま死んでいきたくない、とモードを呼び出して「秘密」を打ち明けます。。。
ま、これ以上は野暮なんで。一昨日に続いて、これも実話。
なんとも素敵な絵です。
これは映画というより「詩」ですな。
生きるモチベーションてのは人それぞれ違うんでしょうけど、やっぱ、「存在が求められている」とか「価値を認められている」という「実感」にあるのかもしれませんね。
「実感」てのは「主観」ですから思い込みでもいいんだけど。
一昨日ご紹介しましたけど、見てきましたよ。またまた。今月末で閉館するテアトル横浜。
支配人がどことなく淋しそうだね。
伊勢佐木町は日本最長モールなんすけど、サイドに場所取りしてる人たちがたくさんいまして、警官とボーイスカウトが交通整理してるわけ。
なんだろ? えっ、開港記念イベント? そうか、もうそんな時機ですか。
つうことはテレビ局も・・・来てる来てる。
パレードがあんのね。それにしても少なくなりました。昔は観客で立錐の余地なしだったのよ。人口が減った、ディズニーに行ってる、だけが理由じゃないな。イベントが毎度毎度のパレードだけなのよ。おもしろくないの。関係者だけじゃないの、見てるの。野毛の大道芸は先々週に終わっちゃったし。
来年はもっと減りますよ。雨降ったら終わり。
ふさがってる道をなんとかスペース見つけて映画館へ。
いつもがら空きの映画館にしてはそこそこ混んでるほうじゃないかな。けど、やっぱ、この雰囲気は場末だわな。ばあさん、じいさん。オヤジにおばさん。若いカップルは来んわなー。
モードはリュウマチを患って身体は変形。歩くのも少し苦手。家族は見栄っ張りで甲斐性のない兄。この前、ジャズクラブを倒産させたばかり。
おもりは規則にうるさい叔母。どちらからも「邪魔者」扱いされてきました。
「おまえはなにもできない」
「保護なしでは生きられない」
けど、モードは自立したい。いつもそのチャンスを狙ってるわけ。
そんなとき、短気で偏屈な男がメモを掲示板に貼り付けた。
「家政婦求む。掃除道具持参のこと。エベレット」
メモをひったくってモードは出かけていきます。
孤児院育ちの男はぶっきらぼう。人間関係をなかなかつくれないタイプらしい。でも、モードが描いた鶏を「天使か?」と。つまり、悪い人じゃない。
魚の行商をしたり、薪を売ったり。男は魚の注文を失念。NY出身の洒落た女サンドラがクレームを言いに来た。
「犬が食べたとか」
「飼ってない」
「猫は魚好きよ」
「飼ってない」
「・・・」
「これ(鶏)、あなたが描いたの?」
「いちばん幸福だった頃を描いたの」
幸福とは、チキンスープをつくるためにモードが殺すまでのことらしい。
これがきっかけとなってモードの絵を買い上げるようになります。ポストカードよりも大きなサイズの絵を求めるようになります。
魚の行商よりカネになるばかりか、ニクソン副大統領までが注文するわ、新聞やテレビ局が押しかけるわで、この男女は有名人になってしまいます。
ニクソンが副大統領ってことは、アイゼンハワーの時代でしょ。朝鮮戦争直後だわな。
モードは一族でいちばん不幸だと思われていました。たしかに、モードが産んだ娘は障害をもって生まれすぐに亡くなり、モードが一度も抱くことなく埋葬されてしまったとか。本人はリュウマチがこうじて背中が曲がり、その奇形のために子供たちから石を投げてからかわれたり。
でも、絵が売れた。はじめて絵が売れた。自分が描いた絵を買う、という人が現れた。「バカがいて良かった」とエベレットは言う。
絵の理解者が増え、モードの存在や価値を認める人が少しずつ増えていきます。そうして自己実現をかなえていくのでしょうか? どうもそうではないようで。売れようが売れまいが絵を描くことでしか寂しさを紛らわす術がなかったわけでね。
哀しい時、絵を描く。泣きたい時、絵を描く。絶望にうちひしがれる時、絵を描く。でないと、ホントに死んでしまいそうだから。
自尊心を満足すると、次は、だれの賞賛もいらない。自分が納得すればそれでいい、という(自己実現欲の)レベルに達する、とエイブラハム・マズローが言ったとか。
自己実現欲にはマネーは関係ありませんが、自尊心にはマネーが「付録」としてついてきます。マネーってとっても便利な道具ですよね。
でも、モードは贅沢からはほど遠い生き方をしてましてね。美味しいモノが食べたいとか、サンドラの綺麗な靴を賞賛しますけど、欲しいとは思わないし、まして自分が似合うとはさらさら思わないし。
せいぜいハエが家に入ってこないよう、網カーテンが欲しいな、というのがモードの夢といえば夢。
ちっぽけな夢。すぐにでもかなえられる夢。けど、エベレットがOKしなければかなえられない夢。そして、エベレットがかなえてくれた夢。
それだけで喜んじゃう。
絵が売れてると知った兄がモードの処にやってきました。マネーを管理するマネジャーになってやる、というわけ。でも、借金のために勝手に実家を売却した兄をモードは追い払います。
叔母は叔母で後悔したまま死んでいきたくない、とモードを呼び出して「秘密」を打ち明けます。。。
ま、これ以上は野暮なんで。一昨日に続いて、これも実話。
なんとも素敵な絵です。