2005年09月14日「決断力」「2分以内で仕事は決断しなさい」「エキスペリエンツ」
1 「決断力」
羽生善治著 角川書店 720円
著者は棋士。かつて王将位、名人、竜王、棋聖、王位、王座、棋王の7冠を独占したという天才。
で、本書は棋士にとっていちばん大切な、「決断」ということについて語ってます。
けど、この決断。
経営者、ビジネスパースンにとっても、いちばん大切なことでしょうね。
いろんな能力を必要とされてますけど、進むのか、右に行くか、左に行くか、止まるか、後退するか・・・これを決めるのがリーダーの仕事。
今日はランチを食べるのか、それとも食べずに頑張るのか。それも決断。
結婚、離婚、再婚・・・と考えれば、人生というのは人間には一生、ついてまわる作業なんですね。
てなわけで、彼の言葉。
「人間には2種類あります。不利な状況を喜べる人、喜べない人。ピンチに陥って奮い立ち、知恵を出せるタイプもあれば、ひるんでしまうタイプもあります。プロ棋士は勝負師だから、圧倒的に前者が多い。というか、前者じゃないと生きていけない」てな具合。
「実戦で十手先の局面を想定できるか?」という質問をよく受けるといいます。
実際、1時間あれば、千手は読めるそうです。けど、勝負の現場ではそんな風にしては決めていない。
「一局の中で、これがいちばんいいだろうと閃いた手のほぼ7割は正しい選択をしている」
将棋ではたくさんの手が読めることも大切だけど、最初にフォーカスを絞り、「これが良さそうだ」と絞り込めむことがいちばん大切。
すべての手を考えるのではなく、「これが良さそうだ」という候補を2〜3考える。それが「直感力であり、勘です」とのこと。
対局を見ていると、「長考」というシーンに出くわすことがあります。これ、1時間、2時間は当たり前。もっと長いケースもありました。
この時、あれだけ長時間、考えているからうまくいく・・・とはかぎらないんですね。というより、ほとんど逆。うまくいかないことが多い。
あれだけの棋士でも、「この手で間違いない」と確信をもって指していることはなく、「これでいいのではないか?」と何となく思って指している。
意表をついた手を指されると、それに対して、「こうではないかな」と思ってまた指す。この連続なんですよ。
「1時間以上、考えているときはたいてい迷っている時」
霧の中で道にはぐれているようなもの。同じところをグルグル回っている感覚。やっぱり、この筋はムリだ、と結論が出ても、その頃には何時間も考えてるから、その手に情が移ってしまてるわけ。
で、この手筋を捨てることができない。それで失敗するわけ。
勉強し、経験を積むから、判断力がつくということはなく、かえって迷う。「思考の迷路にはまる」ってのはこういうことですよ。
将棋って、人間らしいゲームなんです。だから、面白いのかもね。
200円高。
2 「2分以内で仕事は決断しなさい」
吉越浩一郎著 かんき出版 1470円
著者はトリンプ・インタナショナル・ジャパンの社長。
売上高510億円、シェア11パーセントというインナー(女性用下着)メーカーで、「天使のプラ」で注目された会社。
この会社でいちばんの美徳は、この「スピード」ですね。
わたしが知ってるのは、早朝会議で有名な会社ってことかな。これについては、長野県知事の田中康夫さんも見学に来たことがあるらしいです。
会議は1時間から1時間半。その間に40〜50くらいの議題(仕事のテーマ)を処理してしまう。ということは、平均1分半で結論を出すスピードですね。この本のタイトルもこの時間単位がテーマになってます。
会議の目的は、「だれが?」「なにを?」「いつまでに?」「どうやるか?」を決めることです。
社長が担当者に突っ込んでそれに回答する。納得すればゴー、納得できなければ持ち越し、あるいは中止。
てなことで、バンバン処理していくイメージがあります。
午後12時半から2時半まで「がんばるタイム」としてます。この間、電話ダメ、私語厳禁。
でもって、6時半には締め出されるから見積もりの計算なんてやってる暇はありません。
残業禁止は徹底されて、罰金制度もあります。
かといって、翌朝に連絡などしようものなら、社長からけっ飛ばされてしまう。
結果として、仕事の先取り、前倒しを習慣化しなければならなくなる。これが社風なのね。
このスピードで、一位のワコールを追い上げてるんだから、結果がきちんと出ているということ。
さっさとやらないと、負けちゃうのね。
150円高。
3 「エキスペリエンツ」
堺屋太一著 日本経済新聞社 1995円
堺屋太一さんの本を紹介するのは、はじめてじゃないかなぁ。
わたし、あまり、読まないんです。
なぜか。昔、「堺屋太一塾」なんてのをやってたのにね。
理由は、持論の経済論、政策論などを小説という形で文章に刷り込みながら書いてるから、基本的にエンタテイメントというより、経済論として読んでしまうからですね。
本書も一応、小説の体裁はとってますけど、やはり、知価社会とか職縁社会からの脱却とか、堺屋さんの論が登場人物のセリフを通じて語られてます。
内容は、これまた、堺屋さんお得意の「団塊の世代」の人間たちを主人公にしたもの。彼ら、入社30年経ってそろそろ定年を直前にしてますでしょ。主人公は都銀の元エリート、けど、役員に残れなくて、いよいよ定年。
で、早期退職の推奨を受けることになった。
こんなタイミングの時に、高校時代のマドンナが営む蕎麦屋のある「商店街の再活性化プラニング」にのめり込んでいくわけ。
といっても、1人じゃなにもできないでしょ。だから、「7人のサムライ」を用意するわけですよ。
どんな連中か?
それは本書を読んでのお楽しみ。でも、ただ頭の切れる人物たちではなく、「志」というネットワークで結ばれているところかな。
「こんなボランティアを懸命にやってくれるのはだれか?」という一点で考えると、「志」という価値観しかありませんものね。
それと、ただのビジネスパースンではなく、それぞれ専門能力、経験、ノウハウガあるわけ。一騎当千の連中なのよ。
だから、タイトルにあるでしょ? 「エクスペリエンツ」たちなわけね。
ライバル銀行が絡んで駅前開発の大型プロジェクトを進めたり、事件は次から次へと起こります。「あぁ、どこの商店街もこんな問題、抱えてるだろうな」と痛感します。
バブル当時の借金がまだまだ、店の経営に影響してる人って多いでしょ。そのヒントになる情報もあるかも。
けど、商店街の復活、再生でいちばん大切なのは、こういう「7人のサムライ」とのネットワーク作りでしょうな。
200円高。
羽生善治著 角川書店 720円
著者は棋士。かつて王将位、名人、竜王、棋聖、王位、王座、棋王の7冠を独占したという天才。
で、本書は棋士にとっていちばん大切な、「決断」ということについて語ってます。
けど、この決断。
経営者、ビジネスパースンにとっても、いちばん大切なことでしょうね。
いろんな能力を必要とされてますけど、進むのか、右に行くか、左に行くか、止まるか、後退するか・・・これを決めるのがリーダーの仕事。
今日はランチを食べるのか、それとも食べずに頑張るのか。それも決断。
結婚、離婚、再婚・・・と考えれば、人生というのは人間には一生、ついてまわる作業なんですね。
てなわけで、彼の言葉。
「人間には2種類あります。不利な状況を喜べる人、喜べない人。ピンチに陥って奮い立ち、知恵を出せるタイプもあれば、ひるんでしまうタイプもあります。プロ棋士は勝負師だから、圧倒的に前者が多い。というか、前者じゃないと生きていけない」てな具合。
「実戦で十手先の局面を想定できるか?」という質問をよく受けるといいます。
実際、1時間あれば、千手は読めるそうです。けど、勝負の現場ではそんな風にしては決めていない。
「一局の中で、これがいちばんいいだろうと閃いた手のほぼ7割は正しい選択をしている」
将棋ではたくさんの手が読めることも大切だけど、最初にフォーカスを絞り、「これが良さそうだ」と絞り込めむことがいちばん大切。
すべての手を考えるのではなく、「これが良さそうだ」という候補を2〜3考える。それが「直感力であり、勘です」とのこと。
対局を見ていると、「長考」というシーンに出くわすことがあります。これ、1時間、2時間は当たり前。もっと長いケースもありました。
この時、あれだけ長時間、考えているからうまくいく・・・とはかぎらないんですね。というより、ほとんど逆。うまくいかないことが多い。
あれだけの棋士でも、「この手で間違いない」と確信をもって指していることはなく、「これでいいのではないか?」と何となく思って指している。
意表をついた手を指されると、それに対して、「こうではないかな」と思ってまた指す。この連続なんですよ。
「1時間以上、考えているときはたいてい迷っている時」
霧の中で道にはぐれているようなもの。同じところをグルグル回っている感覚。やっぱり、この筋はムリだ、と結論が出ても、その頃には何時間も考えてるから、その手に情が移ってしまてるわけ。
で、この手筋を捨てることができない。それで失敗するわけ。
勉強し、経験を積むから、判断力がつくということはなく、かえって迷う。「思考の迷路にはまる」ってのはこういうことですよ。
将棋って、人間らしいゲームなんです。だから、面白いのかもね。
200円高。
2 「2分以内で仕事は決断しなさい」
吉越浩一郎著 かんき出版 1470円
著者はトリンプ・インタナショナル・ジャパンの社長。
売上高510億円、シェア11パーセントというインナー(女性用下着)メーカーで、「天使のプラ」で注目された会社。
この会社でいちばんの美徳は、この「スピード」ですね。
わたしが知ってるのは、早朝会議で有名な会社ってことかな。これについては、長野県知事の田中康夫さんも見学に来たことがあるらしいです。
会議は1時間から1時間半。その間に40〜50くらいの議題(仕事のテーマ)を処理してしまう。ということは、平均1分半で結論を出すスピードですね。この本のタイトルもこの時間単位がテーマになってます。
会議の目的は、「だれが?」「なにを?」「いつまでに?」「どうやるか?」を決めることです。
社長が担当者に突っ込んでそれに回答する。納得すればゴー、納得できなければ持ち越し、あるいは中止。
てなことで、バンバン処理していくイメージがあります。
午後12時半から2時半まで「がんばるタイム」としてます。この間、電話ダメ、私語厳禁。
でもって、6時半には締め出されるから見積もりの計算なんてやってる暇はありません。
残業禁止は徹底されて、罰金制度もあります。
かといって、翌朝に連絡などしようものなら、社長からけっ飛ばされてしまう。
結果として、仕事の先取り、前倒しを習慣化しなければならなくなる。これが社風なのね。
このスピードで、一位のワコールを追い上げてるんだから、結果がきちんと出ているということ。
さっさとやらないと、負けちゃうのね。
150円高。
3 「エキスペリエンツ」
堺屋太一著 日本経済新聞社 1995円
堺屋太一さんの本を紹介するのは、はじめてじゃないかなぁ。
わたし、あまり、読まないんです。
なぜか。昔、「堺屋太一塾」なんてのをやってたのにね。
理由は、持論の経済論、政策論などを小説という形で文章に刷り込みながら書いてるから、基本的にエンタテイメントというより、経済論として読んでしまうからですね。
本書も一応、小説の体裁はとってますけど、やはり、知価社会とか職縁社会からの脱却とか、堺屋さんの論が登場人物のセリフを通じて語られてます。
内容は、これまた、堺屋さんお得意の「団塊の世代」の人間たちを主人公にしたもの。彼ら、入社30年経ってそろそろ定年を直前にしてますでしょ。主人公は都銀の元エリート、けど、役員に残れなくて、いよいよ定年。
で、早期退職の推奨を受けることになった。
こんなタイミングの時に、高校時代のマドンナが営む蕎麦屋のある「商店街の再活性化プラニング」にのめり込んでいくわけ。
といっても、1人じゃなにもできないでしょ。だから、「7人のサムライ」を用意するわけですよ。
どんな連中か?
それは本書を読んでのお楽しみ。でも、ただ頭の切れる人物たちではなく、「志」というネットワークで結ばれているところかな。
「こんなボランティアを懸命にやってくれるのはだれか?」という一点で考えると、「志」という価値観しかありませんものね。
それと、ただのビジネスパースンではなく、それぞれ専門能力、経験、ノウハウガあるわけ。一騎当千の連中なのよ。
だから、タイトルにあるでしょ? 「エクスペリエンツ」たちなわけね。
ライバル銀行が絡んで駅前開発の大型プロジェクトを進めたり、事件は次から次へと起こります。「あぁ、どこの商店街もこんな問題、抱えてるだろうな」と痛感します。
バブル当時の借金がまだまだ、店の経営に影響してる人って多いでしょ。そのヒントになる情報もあるかも。
けど、商店街の復活、再生でいちばん大切なのは、こういう「7人のサムライ」とのネットワーク作りでしょうな。
200円高。