2020年01月02日公開!「見る!読む!通勤快読」です。

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 本日の「通勤快読」を公開します。お休みは土日と祝祭日そして2/28の公休日のみ。平日毎日更新してます。よーやりまんなー。
 まあ、こんな感じなんですよ。「聴く!通勤快読」は私が吹きこんでますけどね。「読む・見る」のほうはデータとか写真がいろいろ。どちらを選ぶかはあなた次第です。参考までに、もともと「聴く!」サービスしかありませんでしから、こちらのほうが圧倒的に多いですけどね。料金は同じです。

・・・・・・・・引用・・・・・・・・・・
 「年寄嗤うな、明日の自分。最初で最後、最強の人生論!」
 青年、中年からやがて老年へ。人生100年時代にあっても、「老い」は誰にとっても最初にして最後の道行きなのだ。
 自分の居場所を見定めながら、社会の中でどう自らを律すればいいのか。周囲との付き合い方から孤独との向き合い方、いつか訪れる最期を意識しての心の構えまで――85歳を迎えた巨匠・筒井康隆が書き下ろす、斬新にして痛快、リアルな知恵にあふれた最強の老年論!・・・なんだと。



「昼間っからずっと酔っぱらい。脳に1枚薄い膜がかかっているようでMRI検査をすると脳はそれなりに委縮。海馬は立派なものだと言われて一安心」(3頁)

 記憶力はまだ大丈夫、ということですね。作家商売では大切な部分ですよ。創造力、想像力。この源泉が記憶力ですから。



『敵』という長編が出版されたとき、数学者の森毅さんと対談。で、刺激的な話を頂戴します。

「30歳までは学習の時代、60歳までは労働の時代。それ以降は収穫の時代。そして『人生忠臣蔵』説なるものを展開、すなわち、11の自乗は121歳。それが寿命。
 まずは1段目は1x1で1歳。2段目は2x2で4歳」(13-15頁)

 そうなりますと3x3が9歳で小学3年生。
 4x4で16歳までの青春期。
 5段目は「お軽と勘平」のドラマですよね。5x5=25歳で青春期のピーク。
 6x6=36歳までが自分のスタイルを作る時代。
 7段目は「祇園一力茶屋の場面」ですから7x7=49歳。壮年期ですよね。

 8x8=64歳までは、事件や不始末があった時に頭を下げる役。そういう役回りがありますね。
 9段目は「山科閑居の場」。9x9=81歳というシルバーの時代です。男の平均寿命がそんなものでしょう。認知症とかなんらかの事故にでも遭っていなければ、自分でなんでもできる年寄りです。

 さて10段目以降はなにか? 「余録」つまり「おまけ」とのこと。たしかに「おまけ」ですね。

 なにもできなくなる。動物なら自然と死にます。けど医療がこれほど発達してしまったわが国では、死ねません。インドのジャイナ教徒なら餓死を選択するかもしれません。

 ひたすら「死」を待つなんてつまらない。老人の共同体、たとえば、老人会だとかホーム主催の○○会といった「つくられた老人社会」ではなく、さまざまな人たちとの社会とつながる現役感覚を満喫しなくちゃ。

 ボランティア。

 される側ではなくする側。なんと幸福でしょう。される側が悲惨でどうしようもない存在というわけではありませんよ。しかし、「する側にいる」ということはある意味、特権でしょうね。

 金で介護保険を買うのもいいですが、「これだけ介護した」というボランティアの積立として介護の権利を勝ち取りたい。日本の年寄りは金持ちというより元気なんですからそういう制度があってもいい。

 老人は病院に通って医療費を浪費。呑まないクスリをやまほどもらって帰る。
 元気なうちは動いたらいいんです。動けなくなれば病院にも来られません。





 著者が『敵』を書いたとき、「63歳」という年齢も「老人」という自覚もなかったそうです。ですから「75歳」という設定にしたそうですが、ある時、中村真一郎さんにこんなことを言われます。

「筒井君、人間は70を過ぎると途端にガクンと体力が落ちてしまいます。あなたはまだ60になったばかり。とても想像はつかないと思います。主人公を75歳にしたのなら、80歳の老人のつもりで書いたほうがいい。いや、85歳でもいい」(24-25頁)

 老化というのは少しずつ近づいてくるわけではなく、突然の出来事。「ああ年取ったなー」と気づいた時にはすでに老境というわけです。





『わたしのグランパ』は発表4年目に東映で映画化されたそうですね。
 主演の五代謙三役は菅原文太さん。珠子役は映画初出身の石原さとみさん。

 文太さんは14年、肝癌による肝不全で永眠。享年81歳。『仁義なき戦い』『トラック野郎』の大ファンでしたからね。よーーく観てました。

 山田洋次監督『東京家族』に出演されることになってましたが、クランクイン直前に東日本大震災。「映画を撮ってる時じゃない」と降板してしまいました。被災地仙台の出身ですからね。

「交通事故で1人息子を亡くしている。70歳近くだったからずいぶんつらかっただろう。たいていの老人にとって伴侶さえいれば孤独ではないし、社会的な孤独にも耐えることができる」(105頁)

 70歳近くでなくてもつらいですよ。70歳なら逆に、近いうちに会えるさ、と思えるかもしれません。奥様にもパーティで同じテーブルでお話したことがありますが、そうだったんですね。

「どうしてそんなに仲がいいんですか? わたしども夫婦は顔を合わせれば口喧嘩だし、まして一緒に外出したことなんか一度もありません いつも一緒という夫婦は見たことがありません」

 某一流ホテルの日本料理店店主にいわれたそうです。
 
 皆さん、どうですか? 奥様、ご主人、ご家族とご一緒にお出かけされてますか? 「定年後、うちの宿六が付いてきて困るのよ」なーんて言われてませんか?
 いやいや、定年と同時に離婚してください、とか、離婚とは言わないけど、もう一緒には住みませんから、と別居されちゃったとか、ありませんよね。

 老後の夫婦ってのは、若いうちからどういう関係を築いてきたかで決まります。


リチャード・ギアさん70歳、奥様36歳。こんな嫁はんならいくらでも愚痴ききまんがな。

 そうそう、ギアさんはダライ・ラマ14世の熱心な信者で、「中国のチベット民族迫害はナチスに等しい」と激しく非難してきました。おかげで中国入国禁止。中国の圧力でハリウッドからも干されちゃった。ハリウッドも落ちたもんです。

 そんなギアさん曰く、「妻の愚痴に付き合いなさい。とことん聞いてやりなさい。その時に、こうしたらいいとか、自分ならどうするとか言った、自分の意見は絶対言わないように」(106頁)

 名言ですね・・・できませんけど。 

 今日の「通勤快読」は 『老人の美学』(筒井康隆著・770円・新潮社) です。とてもいい本です。