2004年11月15日「齋藤嘉則の現場イズム」「青春ノイローゼ」「フォークの歯はなぜ四本になったか」

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」


1 「齋藤嘉則の現場イズム」
 齋藤嘉則著 東洋経済新報社 1680円

 これ、東経の雑誌に連載してたヤツ。対談集です。対談てのは、面白いですね。もちろん、読んでてですよ。

 なぜか?
 自分の言葉で語ってるからですね。

 ということは、逆に言えば、相手を間違えるととんでもなくつまらなくなっちゃうわけですよ。

 本書でもそれが言えます。
 たとえば、龍虎殿のりん・くんぴオーナーシェフなんか最高に面白い。この人、空手の達人で映画にも登場したことがあります。
 現場を知ってるだけじゃなくて、仕事のなんたるかをよぅぅく知ってる。さらに言えば、経営のなんたるかも知ってるから、密度が濃いわけ。
 あと縄文アソシエイツの古田英明さんも面白かった。この人はヘッドハンターですね。

 ところが、残念ながら、あとの人たちは記憶に残ってないなぁ。

 で、現場ってのはなにか?
 「現象」が発生する場所のことです。

 りん・くんぴさんが最初に店をオープンした時、ちょっと違うんです。
 普通は花輪とかサービス価格とかで、一気に集客を図ります。みなに認知してもらうための常道ですね。
 けど、この人はそんなことしない。
 「静かにオープンしよう」
 そして、来て頂いたお客さんを丁寧に迎え入れよう。だから、メニューもあれこれ載せないで、素材を書いておく。焼くのか、煮るのか、炒めるのか・・・これはすべてお客さんに指示してもらう。

 オープン時というのは、いきなりお客が集中しますから、厨房はてんてこ舞い。だから当然、サービスも低下してます。
 注文間違いとか、味が落ちるとかいうこともあるでしょう。
 すると、結果として悪い評判を生み出すことになりかねません。

 けど、静かにオーブンしようとすれば、そんなことはありません。

 いま不景気で、一流の料理人がリストラされてしまう時代です。
 もちろん、彼のところにも応募がたくさんある。
 で、料理を作ってもらう。すると、高価な食材を使って見事な料理を作るそうですね。
 
 「けど、いまの時代、こんな料理、食べる人がどれだけいるんだろうか・・・」

 つまり、時代感覚がないわけ。

 次に「いくら欲しい?」と聞くと、
 「家族がこれだけいるんで○○万円はもらわないと・・・」

 これで採用はなし。
 彼が期待していた回答はこんなことではありません。

 「給料は考えてません。わたしの腕をみてもらって決めてくれ」
 「でも、りんさんが訊いたから・・・」と言訳する。
 「じゃ、どうやったら若い人を育てていけるのか。これからの飲食店をこう考えている、そういう言葉を聞きたいのよ」

 150円高。
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2 「青春ノイローゼ」
 みうらじゅん著 双葉文庫 580円

 この人、テレ朝系の深夜番組「タモリ倶楽部」に出てる人。あの「そら耳アワー」ですよ。髪の毛が長くて丸顔の・・・人。

 本の表紙に自分の写真使ってるわけ。
 それがなかなかの美少年、つうか、美青年。おそらく、高校時代にフォークギターかき鳴らしてた時の写真だろうな。

 ほら、この本のタイトルがそうでしょ?
 青春・・・しかし、どうしてノイローゼかね。

 さてさて、この本、元々、「信人的」というタイトルで連載されてたんですよ。
 信人的ってなんじゃらほい?
 
 岡本信人ってこと。
 で、知ってる、この人?

 ほら、劇団ひまわり出身で、東海大学で建築を学んでて、石井ふく子ドラマの常連で、「渡る世間」にも出てたし、あの昔やってた「肝っ玉かあさん」にも出てた。
 そばやの出前持ち役をさせたら、日本でいちばんという役者! あの人。
 
 で、信人的って意味はなんなのさ?
 定義がいいね。
 「主役じゃなくて、脇にいるはずなのに、ミョーに気になる存在感。目立ちたがり屋じゃないくせに、一度見たら、忘れることはない強烈印象。そんな、さわやかな天然発光体を、信人的と呼ぶ」
 だってさ。
 
 なるほどねぇ・・・。人間には、生まれながらにしてポジショニングがあるのかもね。
 たとえば、リーダーになるべくして生まれてきた人、というか、リーダーしかできないひと。それにリーダーになっちゃいけない人、リーダーにはなれない人。
 ねっ、部下にさせたら世界一。こんなポジショニングもあるわけです。

 見栄晴の場合は無個性を売りにしてるけど、岡本信人は十分すぎるほどの個性派。

 150円高。
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3 「フォークの歯はなぜ四本になったか」
 ヘンリー・ペトロスキー著 平凡社 3689円

 ペーパークリップからプルトップまで、身の回りにある実用品の形は何によって決まってきたんざんしょうか?
 てなことをああだ、こうだとまとめた本。
 もち、開発時の意外なエピソード満載ダヨーン。

 わたし、こういう本、大好きなのね。というのも、構造と機能って、わたしの中では昔から一つのキーワードになってるからです。
 構造ってのはデザインのこと。機能ってのは使いやすさ、動きのことでしょ?

 フォークって、元々、人間の手の代わりでしょ?
 じゃ、どうして五本じゃないのよ。両手分で十本にしてもよかったんじゃない?
 実際、昔、そんなフォークがあったんですね。

 けど、使いにくいったらありゃしない。で、使いやすさを追求していくと、結果として四本に落ち着いた。
 そんなものですよ。多けりゃいいってもんじゃありません。

 西洋のナイフとフォークって、日本の箸と同じ原理で説明できるんかね?
 西洋のノコギリって推して切るでしょ。で、日本のは引いて切る。この違いはどうして生まれたの?
 
 まっ、そんな不思議な関係を縷々説明してくれる本。トリビアのネタになりそうなのもたくさんありますよ。

 150円高。
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