2004年11月08日「回想 黒澤明」「もう一度あなたに会いたい」「魂の伴侶」
1 「回想 黒澤明」
黒澤和子著 中公新書 777円
映画監督黒澤明さんの娘さん。
母親の他界後、「一緒に働こうよ」のひと言で黒澤組に入ります。
これが三十三歳の時。
以来、衣裳の担当。
「夢」「八月の狂詩曲」「まあだだよ」の三作でも担当してましたね。
黒澤監督が最後に残した言葉。
「これからの人間にこそ、哲学は大切だね」
哲学のまったくないわたしには痛い言葉です。
さて、本書は雑誌の連載をまとめたものです。すべて動詞がタイトルだったんです。
たとえば、「選択する」「信頼する」「食べる」・・・とかね。で、これらを項目タイトルとして活かしてそのまま単行本化したのが、これってわけ。
わたし、彼の作品はすべて観ています。
いちばん好きなのはやっぱり「七人の侍」かな。で、「椿三十郎」「生きる」「どですかでん」と来て、「あかひげ」「天国と地獄」「悪い奴ほどよく眠る」「姿三四郎」「」「影武者」もよかったし。
全部、あげそうだから、このへんでやめときましょう。
忘れてた、「どん底」も好きだったなぁ。
黒澤さんという人は、エリートで来た人ではありませんね。
戦前、兄を続けて二人亡くした。なんでもいいから職について、とにかく両親を安心させたい。その時、父親はそんなに焦るな、待てばおのずと道は開けると言って譲らなかった。結局、これが正解。
その後、昭和11年、新聞広告で興味を抱いたP・C・L映画撮影所(東宝の前身)の助監督に応募し、五百人の中から五人が合格。いよいよ、映画の世界に飛び込むわけ。
さて、本書を開くと、黒澤監督の肉声が飛び出てくるようです。
「だいたいね、日本人は何もかも順位をつけないと気が済まない。どういうことなんだろうね。どの作品だって、相当な努力をして生み出したわけだろう・・・比較でしか理解できないというのは問題だよ」
これは、どの作品が好きですかという定番の質問に嫌気がさして、ついこぼしたもの。
「いい加減なことを言ってはいけない。知らないことは、知らないと言うんだ」
黒澤さんが若い頃、商家の看板について俳優から質問され、あてずっつぽうに答えた時、山本嘉次郎監督から厳しくたしなめられたひと言。
「主役には、演技はダイコンでも、牛肉のように存在感のある役者。脇を固めるのは、しっかりした演技のできる器用な味付け役者。そこにくさい演技のニンニク役者を利かせて、無味無臭の自然なミネラルウォターのような役者で煮込むんだ」
「人におしつけられたものと、湧き出てくるものと、どっちが努力できますかと聞いたら、どう答える?」
「これだけ情報が多くなると、ますます審美眼ていうのか、取捨選択かる能力があがらなければダメでしょ」
「全体があって部分がある。一部分にこだわるんじゃないんだ。こだわりすぎると、固執して美的でなくなる。いっそ切り捨てるほうがいいって場合もある。やめるとか、忘れるっていうのも重要な選択方法だよ。しがらみを捨てるっていうでしょ」
「本当にやさしいということは、強いことだ」
「僕はね、なぜ人間は幸せになろうとしないのか、ただそれを言いたいだけだよ」
「子供が生まれた時、みんな天才。それを駄目にしてしまうのは大人だ。いじくり回さずに、生まれっぱなしにしておけばいい。せいぜいできることといったら、一流のものを見せることぐらいだ」
「強いから怒鳴り散らすわけではない。真剣だから、本気だから、諦めていないから怒鳴るのである」
「人間は、集中して夢中になっているときが、いちばん楽しいんじゃないかな。それが幸せだよね。子供が遊んでいる時の、あの無心な顔は素敵だものね。声をかけても聞こえない、自意識がない感じ。あれが幸せというものなんだね」
「仕事での重圧は思い切り発散して、次の日に持ち越さない。これも映画を作り続けるうえての知恵というものだ」
子供の頃の黒澤さんという人は、感受性が強くて、たとえば、犬が踏みきりで事故にあったことや、自分の兄が事故で血だらけになったことなどにショックを受け、すぐにひきつけを起こしたり、ナーバスになって手がつけられなくなったりする子供だった。
胃腸が弱くて、脂っぽいものや消化に悪いものも禁止され、丈夫で元気な子供からはほど遠かった。
この人、映画界では天皇と言われた人です。けど、自分の愛する仕事を支えるスタッフのことにも心砕いてました。
コマーシャルの仕事ができるように計らったり、お金の工面や品物を届けたりね。
これだけの人でも、映画を撮る資金を集めるのには苦労したらしいですね。借金のカタに大切なものを入れたりね。
これだけのブランドならば、簡単に撮れると思ってましたが誤解ですね。
150円高。
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2 「もう一度あなたに会いたい」
林明日香著 主婦の友社 1000円
著者は今年15歳の歌手です。
昨年、CDデビューを果たしたばかり。
けど、詩は普遍的ですから、つまり、とりようによってどうのようにでも理解できる。
共感というのは、案外、そんなものなのかもしれません。
タイトルと同じシングルを昨年、リリース。すると、「わたしもこの歌のような経験がある」というメールがたくさん寄せられました。
「大切な人を亡くしました」
で、そんなメールをそのまま単行本に収録したというわけ。
著者は中学二年の夏に大好きだった祖母を亡くします。「もう一度あなたに会いたい」はこの心境を唄ったものなんですね。
あなたのいちばん大切な人はだれですか?
家族がいちばん多かったな。父親とか母親とかね。
たしかにそうでしょうね。
恋人、夫、妻という人もたくさんいました。
♪ 今 どこにいるの?
もう二度と 会えないけれど
でも 感じるから
信じている そばにいる事を ♪
大切にするってことは、ただ優しくすればいいのではありません。
傷つけなければいいということでもないのです。
その人を好きだからこそ、本音でぶつかってケンカをし、傷つけてしまうこともあるはずです。
けど、その後で、ちゃんと「ごめんなさい」が言えるかどうか。
言えずに意地を張っていると、大切な人は離れていってしまいます。
プライドばかり強くて意地を張っているあなたには、プライドなんか問題にならないほど、もっと大切なことがあることに気づいて欲しいのです。
死ぬ時、その人の顔がチラチラ浮かんでは死ぬに死にきれないでしょ。
そんなことなら、憎んで別れるほうが幸せかもしれませんな。
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3 「魂の伴侶」
ブライアン・ワイス著 PHP 1575円
この世の中に魂の伴侶ってのがあるんでしょうかねぇ。
わたし、霊能者に知人、友人が多いんですが、十年ほど前にこんなことを言われたことがあります。
「この世であなたにふさわしい伴侶は最初の人ではありません。いまの奥さんは必ずしもナンバーワンではありません。
もっとふさわしいけれども、結婚という形では成立しなかった。そんな伴侶がいるんです」ですと。
ホントですかねぇ、わかりませんねぇ。
「ソウルメイト」とは、愛によって永遠に結ばれている人のこと。何度もの人生で、何度も出会い、その都度、夫婦になったり、親子になったり、仇同士になったりを繰り返す。
強い縁で結ばれていて、離れることはない。
赤い糸で結ばれているってわけですね。
著者はコロンビア大学卒、エール大学医学部で実習を修了し、その後、ニューヨーク大学付属病院でインターン、してエール大学に戻り、精神学科で専門医学実習を修了したという人です。
その後、ピッツバーグ大学、マイアミ大学の医学部で教授。
彼にとって画期的な事件は、この後です。
マウント・サイナイ医療センターで、キャサリンという女性患者と出会ったこと。
催眠でトランス状態になった時、別次元からのメッセージを伝えはじめたんです。それを体験すると、彼の人生を変えるほどのショックを受けてしまいます。
それが前世療法。
前世といわず、何世にもわたって繰り広げられる縁の物語。それが、ソウルメイトとの出会いの繰り返しです。
本書では、アメリカ中西部出身のエリザベスと、メキシコ人のペドロがこのソウルメイトであることに気づいた著者が、守秘義務のある医師という立場を超えて、出会うように仕掛けてしまいます。
それまで、この二人がどれだけの輪廻転生を繰り返してきたか、どんな関係で関わり合ってきたかを、二人からどんどん引き出します。
「わたしはあなたを知らない」と主張します。しかし、あなたの心は覚えているんです。
出会った瞬間、心が動く。心は高鳴り、腕に鳥肌が立つ。この瞬間、運命の人との出会いに魂が気づくんですね。
二人の間にあるのは、尊敬? 共感?
どちらでもありません。その前に、引きつけ合う力が最初から存在してるんです。
「愛は恐怖を溶かします。愛を感じる時、恐れることはありません。すべてはエネルギーで満たされます。あなたが愛に満ち、恐れていない時、あなたは許すことができます。ほかの人たちを許すだけではなく、あなたは自分自身を許すことができます。
そして、正しい見方で、ものごとを見始めます。
罪悪感と怒りは同じ恐怖の反映です。罪悪感とは、自分の内側に向けた怒りなのです。許しは罪悪感と怒りとを解きほぐします。むしろ、有害な感情なのです。許しなさい。それこそ、愛の好意なのです」
「プライドはエゴの一つの現われです。エゴは偽物のあなた自身です」
「知性は第3次元の世界では大切ですが、直感のほうがもっと大切なのです」
「運命が与えてくれるプレゼントについて決める時は、自分の心の声と、自分の直感の言うことを聞きなさい。運命はあなたの足元に、そのプレゼントを置いてくれる」
人を好きになるってのは、投資ではありません。何をして上げるかわりに、何かをしてもらう。
そんなものではありません。
自分の人生をその人にぶつけてしまうこと。
傷つけたり、傷つけられたりしながらも、忘れられないこと。
会ってはいけないと思いながら、会いたくて、会いたくて、会いたくて、一人で泣いてしまうこと。
いけないとわかっていても、どうにも止められないこと。
そんな人が現われたら、もしかすると、その人はソウルメイトかもしれませんよ。
たとえ今世で結ばれなかったとしても、そんな人と出会えただけでも幸福じゃないかなぁ・・・。
150円高。
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