2004年10月04日「クエスチョン」「死ぬほど好き」「銀座上々」
1 「クエスチョン」
ジョン・ミラー著 日本能率協会 1260円
自費出版からスタートして34万部を突破した、とか。
たしかに研修教材として使いやすいと思う。だれにでもわかりやすい内容という点が使い勝手がいいですね。
「なぜ自分が全部やらなくちゃいけないのか?」
「いつになったら本気で取り組むのだろう?」
「いったいここの受け持ちは誰なんだ?」
こういう質問のことを「間違ったクエスチョン」と呼んでいます。なぜなら、これらの否定的な質問では何一つ解決しないからです。
では、正しいクエスチョンとはいったいどんなものを言うのでしょうか?
それは、肯定的で前向きな質問のこと。
たとえば、
「この状況を変えるために、自分には何ができるのか?」
「どうすれば、わたしは自己責任を果たすことができるのか?」
こんな問いかけをすることです。いい問いかけをすれば、自然と答えが現われてくるのです。
著者は父親から教えられたことがたくさんあるそうです。で、本書の中でもいくつか紹介しています。
たとえば、人生で戦うべき相手が3人いる。すなわち、対戦相手(敵、ライバル)、自分自身、そして審判の3人。
「わたしは正しいから勝つ、強いから勝つべきだ(勝つのは当然だ)」
こう考える人は少なくないでしょうね。
でも、正しいから勝つ、強いから勝つとはかぎりません。審判の意向やイメージでいくらでも判定が覆ることは少なくありません。
「ほんの些細な差で負けるのは、本人が悪い。審判を味方にするような勝ち方をしろ!」
父親はそう言いました。
これ、わかるでしょう?
世の中、実力で勝つならだれからも疑問に思われない勝ち方をすること。もし、実力伯仲ならば、審判を味方にすること。そんな戦法を考えること。
でなければ、勝利を自分のものにすることはできない、という教えです。
日本人は判官贔屓ですから、審判というよりも応援団をたくさん作ってしまうこと。これがいいのかもしれません。
プロ野球の問題にしたって、完全にオーナー側が悪者です。
よく考えてみれば、オーナーが出資しているからこそ、選手は野球ができるのです。年俸、契約金をつり上げ、FA制度などでさらに移籍金も増やし、結果として、かつてのJリーグのように労働費によって人事倒産しかねないのです。
それが近鉄であり、オリックスであり、ロッテ、ダイエーだったのでしょう。
「経営に関するマターはすべて我々にある。たかが選手ふぜいのくせに・・・」というオーナー側の姿勢が、スジを読み間違える結果を引き起こしてしまった。
わたしはそう考えています。正しいから、強いから・・・だから負けるのです。
強いからこそ、正しいからこそ、謙虚になる。相手の弱みを理解してあげる。
譲歩は強い人間しかできないのです。弱い人間の場合、譲歩という言葉はありません。それは「卑屈」なのです。
相手を卑屈にさせてはいけません。どんな人間にもプライドがありますからね。強さだけで譲歩や謙虚さを知らない人間。それは傲慢そのものです。
この勝負、スジや論理ではなく、すべては人間の性格がトラブルの元にあるように思えてなりません。勝手に問題を複雑化させているのではないでしょうか。
200円高。
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2 「死ぬほど好き」
林真理子著 集英社 460円
「もう六年もつきあってるんだもの。
お互いに嫌なところ、さんざん見せ合っているのよね。
こうなったら別れるか、結婚するかのどちらかしかないわね」
ご存知、林さんの得意とするフィールドです。30〜35歳あたりの女心を描かせたら、天下一品。
内館牧子さんと双璧ですな。
「どうして、わたしは結婚しなかったんだろうか?」
「どうして、わたしは結婚できなかったんだろうか?」
この二つの差って、どこにあるんでしょうね。
惚れてる男は結婚してくれない。かといって、プロポーズしてくれる男には興味が湧かない。
「この男と一緒に歩いたり、食事をしたり、ベッドにいる・・・というシーンが思い描けない」
早い話が、2人で家庭を築いていくということがピンと来ない。「具体的イメージ」が湧かない。恋愛はロジカルシンキングでできるものではありません。なんといっても、この具体的にイメージできるかどうか・・・がいちばんのキモなんでしょうな。
「望めば、最低ラインの幸せは手に入る。
だって、自分よりずっと美しくない女、魅力もない女たちでも早々に結婚し、母親にすらなっているんだもの」
だから安心・・・しかし、実はこれが油断。気づけば、自分よりずっと美しくない女が幸せをつかみ、美しい自分は男、結婚以外に幸福を求めるしかなくなる。
幸福」を求めない人間がつかもうとするのは、「成功」です。
幸福と成功の違いはどこにあると思いますか?
幸とは精神的な充足感です。「ハッピー!」というのがそういう感覚ですね。ほっと安心できる。油断しても平気という感覚。
福とは、物質的な充足感です。だから、成功に近い意味がありますね。
でも、成功と福とは根本的に異なります。
それは、成功とは客観的な物差がありますが、幸福にはありません。これは主観なのです。
「あいつ、バカだよ。ずるい女に騙されているとも知らず・・・」
この男は幸福でいっぱいの人生です。だって、主観だもの。他人が見れば、不幸そのもの。客観的に見れば、ものすごく不幸。しかし、本人はハッピーそのもの。
これが成功という物差になると違います。
売上一億円という事業計画があるとすれば、これに到達できれば成功です。一円でも足りなければ、失敗です。
だれにでもわかる物差。客観的というのはそういうことですね。成功、失敗はここからは成功、ここからは失敗という物差がきちんとあるのです。
幸福、不幸にはそんなものはありません。
だから、楽です。自分さえ幸福と思えば、いますぐにでも幸福になれるのです。
「回り道をするほど、わたしはもう若くはないのです」
はたしてそうでしょうか?
「自分の人生はもう決められている。もう逃れられない」
こういう思いもあるでしょう。
けど、定められたものを捨てても生きていこうする。その中に新しい力が湧いてくるのです。
150円高。
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3 「銀座上々」
原田紀子編著 求龍堂 1260円
これ、対談本です。
原田さんは国立科学博物館に勤務する人。「西岡常一と語る 木の家は三百年」という本などで知られる人ですね。
で、この人が資生堂の「サクセスフル エイジング講座」で対談を連発して行った。
それをまとめたのんが、これ。
面子は、映画評論家の川本三郎さん。話題はもちろん、銀座です。映画の中に登場する銀座のシーンを次々に紹介するのです。
たとえば、「銀座化粧」という映画。田中絹代という女優が出てた映画で、いまの新富町や三原橋風景が見られる貴重な映像です。
銀座には橋のつく地名がたくさんありますが、これは川がたくさんあったからですね。
けど、大震災のあとに瓦礫がたくさん残ってしまった。瓦礫の整理と埋め立て。一挙両得で展開するために銀座の川という川を埋め立ててしまったんです。
有名な数寄屋橋も橋ですけど、あの下に川なんて流れてないでしょ。でも、昔は流れてたのよ。
小津安二郎監督の「東京物語」は有名ですよね。わたしの大好きな原節子さんが主役ですからね。
これも銀座通りがしっかり出てきます。はとバスがもうあったんですね。この映画は昭和28年の作品ですよ。
この年、日本は前年、サンフランシスコ講和条約でようやく独立を果たします。ですらか、松屋デパート、服部時計店、阪急ビル・・・これらはすべて米軍に接収されてたんです。
それがようやく返ってきた。改装もしました。
銀座が日本に戻った記念的作品でもあるのです。
ほかに登場するのは、新橋芸者、靴の銀座ヨシノヤ社長、老舗呉服屋の社長、そして和菓子で有名な空也の社長。
いずれの方も、銀座でしっかり根を張った仕事をされている方々ばかりです。
靴を縫うための針って、いまだにイノシシの背中の毛を使ってるらしいですね。そんなに硬いんですね。
へぇ・・・。今度、トリビアに出してみようっと。
250円高。
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