2006年02月01日「私は障害者向けデリヘル嬢」 大森みゆき著 ブックマン 1300円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 快著です。
 本から受ける著者の印象は、とってもまじめ・・・というより生真面目。少々生き方が下手で損ばかりしてる。融通が効かない。「こうでなくてはいけない」という縛りをいつも自分に課してしまう。そして、その縛りに自分で苦しんでしまう。
 ずるくない。何でも懸命にやる。一途。だけど、その分、視野は狭い。いい加減にやることがいちばん嫌い。だけど、そんな人間を羨ましくも感じる・・・そんな人じゃないかなぁ。

 憧れのデザイナーになったものの、社長の気まぐれ新規事業を手伝うはめに。
 ところが、これが「手伝い」というレベルじゃなくて、新人の彼女が1から10まですべてやってるわけ。しかも、業者のミスで顧客から怒鳴られる毎日。この人、律儀にクレームをずっと聞いてるわけ。
 こんなことが朝から晩まで続きます。

 社長はといえば、業者のミスだと何度言っても信用しない。四面楚歌。入社早々にね。とんでもないバカ会社。

 ある日、会社に行こうとしたのに身体が動かない。それでも無理して電車に乗ると、倒れてしまい、救急車で病院に・・・。
 ことの重大さにようやく気づいた社長。
 「・・・辞めさせてください」と彼女。慌てて引き留めるものの、もうガマンの限界。

 どうしよう。生活費。親には借金などできないし・・・。
 高給の仕事じゃないと、借金も返せないし・・フーゾクか。
 インターネットで調べてみると、あれ、こんなものが・・・。
 「障害者専用のデリバリーヘルス」
  
 時給8000〜12000円。これ、「本番」はありません。けど、それ以外はたっぷりあるわけね。
 「介護指導もある」と一応、書いてある(結局、辞めるまで一度も指導らしきものはなかった)。
 
 障害者専門のデリヘル嬢になった理由。
 時給がいいこと。これが1番。私でもできるかも。これが2番目。障害者なら無理やり犯されたり、殺されたりすることもない。これが3番めの理由。

 「ボクだって女性に触れたい。だって男だから」
 たしかにそうだ。障害者だからといって、性欲がないわけではない。しかし、だれもが、この部分を忘れている。というか、気づかない。
 
 同居する親兄弟が承知の人もいる。あるいは、わからないように、みんなの留守を狙って来て欲しい、と注文が入る場合もある。
 身体の動かない人が動くようになったこともある。
 「これがいちばんのリハビリなんだよね」

 デリヘルのホームページには、「ありがとう。感激です」「こんなことがしたかった」「とても幸せな時間を過ごせました」と暖かい言葉がズラリ。
 セックスのことなどなに知らずに死んでいった人もたくさんいる。恋も結婚も諦めたけど、女性と一度でいいから接したい。そんな気持ちを抑えて生きてきた。
 「ボクたちだって人間だよ!」

 ラブホテルは健常者の施設。障害者が入るようには作られてません。ビジネスホテルの東横インだって身障者は年一泊しかしない。だから、そのための設備を潰したわけでしょ。
 まして、ラブホテルはね。そもそも、エレベーターに車椅子が入らないもの。
 ひどいとこは部屋に入らないんだって。狭くて(やっぱ、シティホテルを利用しなくちゃね)。

 いまは、このデリヘル会社の儲け主義のやり方についていけず、デリヘル嬢を休止中の著者。

 「障害者と話してみて、社会的弱者だとは思いませんでした」とひと言。たしかに・・・。230円高。


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