2004年09月06日「定跡からビジョンへ」「マドンナ」「あらすじで読む純愛物語」
1 「定跡からビジョンへ」
羽生善治・今北純一著 文藝春秋 1500円
羽生さんは言わずと知れたと知れたトップ棋士。
今北さんは欧州系のコンサルタント会社に勤務する人。羽生さんがフランスで将棋の仕事に行った時、ひょんなんことから通訳を買って出たのがご縁で、こんな本になっちゃった。
対談です。
もちろん、将棋を通じて、発想術、自己管理、筋の読み方、勘・・・勝負観など、話はてんでばらばら。けど、それが天衣無縫でいい味出してます。
対談の良さというのは、ある意味、まとまってないところだものね。
深くも読めるし、さらりとも読める。
それだけ読者側の力量が問われる本でもあるかな、生意気なこと言っちゃうと。
「勝負には勢いというものが大きく影響します。当時(七冠達成時)は若さと勢いがありました。たとえ読みが浅くても、結果としていい手を選んだりしています」
「勝負の世界では、これでよしと消極的な姿勢になることがいちばん怖いのです。常に前進を目指していないと、そこでストップし、後退が始まってしまうのです」
「嫌われたいとは思っていませんが、よく思われたいとも考えていません。だからといって、人を踏み台にして自分の好き勝手をやるというのは、もっともやりたくないことです」
「ミスは日常茶飯事でよく起こることなのです。私はプロになって二十年近くになり、いろいろ経験をしているし、訓練をしてきましたが、そうでありながら、どんなに訓練を積んでもミスは避けられない、ということを実感として感じています。大山康晴十五世名人は、相手のミスを前提にして指しているのです。私は逆に相手はミスをしないという前提で考えています」
「今までの累計データの積み重ねで、将棋の指し手は平均して百二十手くせらいですが、七十、八十手目まで研究することがよくあります。読みの形もどんどん突き詰め、これはこちらが良しという結論を出すというアプローチの仕方が非常に多いのです」
「いまの将棋は研究と実戦が近くなっています。その指し手を知らなかった。研究していなかったというだけで勝負がついてしまうことが多いのです。そういう情報や知識を知らなかったのが悪いわけです。一方、勝負は情報とか研究だけで勝てるというものでもありません。いまは、情報や研究を前提にして、そこから本当の勝負が始まるという感じです」
「知識と感性のバランスをとるのはかなり難しいのです。というのも、知識に偏ってしまうと感性が鈍ってしまうからです。たとえば、はじめて見る場面のほうが閃きやすいということがあります。テータが何もないと、その場面で、自分で真剣に考えるしかないじゃないですか。知識や定跡に縛られないから自由な発想ができるわけです。一方、感性に頼りすぎると将棋が雑になってしまうのです」
なーるほど。
200円高。
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2 「マドンナ」
奥田英朗著 講談社 1470円
表題のマドンナ以外に四作掲載されてます。どれもいいけど、やっぱりマドンナかな。
ビジネスマンの世界は仕事だけではありません。いちばん気を遣うし、また楽しみでもあるし、面白みもあるのは職場の人間関係ですね。
その中でも、どうだろう、男性の目から見たら、マドンナ的存在。女性の目から見たら、ヨン様的存在。
「カノジョ(カレ)がいるから会社に行こう!」
こんなことって、ありますよね。
ない?
それは不幸なことですよ。
登場人物は課長さん、その課に人事異動で移ってきた女性社員。これがマドンナ。
「好みの女性でないように」と課長は祈りますが、それも通じず、とんでもない「タイプ」が近くに来ちゃったわけ。タイプじゃなければ、心は平安。仕事に集中できますものね。
それがタイプだから、気もそぞろ。
職場の男性部下と話をしようものなら、耳がダンボになっちゃうし、「今度、ゴルフを教えてあげるよ」なんて聞いたら、嫉妬に狂っちゃうわけ。
美女の前では、上司も部下も関係なく、1人の悩める男。
1人のマドンナを取り巻くいろいろな話。
さぁ、どうなるか?
けど、男ってホントにバカだねぇ。でも、愛すべき存在だな。
150円高。
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3 「あらすじで読む純愛物語」
純愛物語研究会著 二見書房 1260円
100冊の純愛ものが収められてます。
意外と、私、読んでますな、ここで紹介されてる本。
まっ、本だけじゃなくて、映画やテレビドラマ、漫画もたくさんあるんだけど・・・。
たとえば、「冬ソナ」でしょ。「美術館の隣の動物園」も良かったな。「8月のクリスマス」・・・。韓国映画ばかりだな、こりゃ。
小説だと、「世界の中心・・・」はもちろんのこと、「いま、愛にゆきます」でしょ。これ、まえに通勤快読でも紹介しましたね。映画になるんですよ、今度。
「忍ぶ川」「塩狩峠」「風立ちぬ」なんて古いのまであるんだ。映画、私、見ました。
「センセイの鞄」「東京湾景」「恋愛中毒(これも紹介したね!)」「欲望(これ、したかな?)」「恋文」などなど。
もちろん、日本映画もたくさん紹介されてます。
「ジョゼと虎と魚たち」「海は見ていた」「ごめん」「冷静と情熱のあいだ(これ、まったくわかりませんでした、わたし)」「ナビィの恋」・・・たくさんあります。
こういう純愛ものを、あらすじ、キャッチコピー、読み所、見所、タイトルに込められた意味、アンケート調査・・・研究会という名前で出してるから好奇心の赴くままにいろんな角度からアプローチしてます。
けど、なんで、マギー・チャンの「ラブソング」がないんだろ?
180円高。
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