2006年03月28日「私という病」 中村うさぎ著 新潮社 1260円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

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 「作家というより体験レポーターだろ」(北野武談)。けど、ここまでやるか! ある意味、さすが中村うさぎ!
 なんつったって、今度は「デリヘル嬢」に変身だよ!
 これまで買い物依存症でブランド漁り、整形フェチ、それからホスト狂いを総なめし、今度は男根を総なめってか! まっ、いいけど。

 この前、朝日新聞で撮影があったんだよね。広告ページに登場したわけさ。大阪版には2回出てるんだけど、東京版は今回がはじめて。で、朝日の特別喫茶に行ったら、なんとそこには「うさぎ」さん!
 意外とキレイ。けど、あっ、たしか整形。まっ、整形たって化粧のちょっと濃いヤツと考えれば、なんともないよね。

 けど、よくやったよね。デリヘル。

 実は私、日本一のフーゾクコンサルタントのプロデュースもしてまして、何回かデリヘル嬢の面接したことあんのよ。
 なぜか? たんなる好奇心です。へへへ。

 「えぇと、動機は?」(一応、20代みたい? けど暗い女だな。咳ばかりしてるし、病気持ちか?)
 「いまの店、厳しいんだもん」
 「どんな店?」
 「居酒屋」
 「居酒屋からフーゾク? できるの?」
 「そこ、居酒屋しながらHなサービスもしてんの」
 「へぇ、そうなの。で、どこにあるの? いくら?」
 「六本木、1万くらいかな」
 どうせ採用するつもりないから、現代フーゾク事情のインタビューにしちゃった。

次に来た女性はごくごく普通のOLタイプ。
 「OLさん?」
 「はい、企画会社に勤めてます(いいよね、こういうタイプ)」
 「フーゾク経験は?(もちろん、ないよな。こんな楚々とした女性だもの)」
 「はい(ええっ!)、SMのデリヘルを2年前まで(SM? ウッソー!ショック!)」
 「・・・あっ、そう。で、SとMのどっち?(か弱そうだもん、Mだよな。もう縛っちゃうぞ!)」
 「Sです(ズズズッと椅子からこける。ホント?けど、それもいいね、いいね、イイネス・ハンソン。古いっちゅうねん)」
 「で、またやろうってわけ? どして?」
 「好きなんです」
 「えっ、好きってなにが?(ちょっとドギマギ)」
 「もち、あれですよ(グフフ、もうまいっちゃうなぁ。そんな潤んだ瞳で言われちゃうと。もうアヘアヘ言わせちゃうよ。ウシシ)」
 「あれって、いったいなにかな?(知っててよく聞くよ。このスケベオヤジ!そうか、そんなに好きなのか?この淫乱女め、拙者の太く光った青龍刀で成敗してくれるわ!)」
 「好きなんです、お金稼ぐこと(ズズズッ、このぉ、期待させるなっつうの!)」
 「・・・次、いきましょうか」

 とにかく、「想像通り」というよりも、「えっ、なぜ、こんな女性が?」という普通の女性(普通という表現もおかしいけどさ)がほとんどなのね。
 おかげで、面接の後、道玄坂を降りてくる時、すれ違う女性がみなフーゾク嬢に見えたもんね。チェリーボーイの私には少々、ショッキングな体験でした。

 さて、うさぎさん。源氏名がなんと叶恭子。これ、本人からクレーム来たらしいよ。
 うさぎさんの店は、お客から電話があると、近くのレンタルルームにいくわけ。ここ、シャワーとベッドがついてるのね。
 で、ここで致すわけ。もち、デリヘルは本番禁止です(してるとこも少なくないらしいけど)。
 「指示された部屋番号のドアの前に立つと、さすがに足が震えた」
 たしかに、どんなお客が待ってるのか緊張するよね。その気持ち、わかるよ。
 「気持ち悪かろうが、臭かろうが、怖かろうが、私には断る権利がないのだ」
 そっとドアを開ける。相手を見る。ひょろっとした体形の、でも優しそうな顔の男。

 「あっ、シャワーはもう浴びたから、さ、はじめようよ」
 「でも、私はまだ浴びてない」
 (冗談じゃねぇよ。店から持参した強力殺菌ボディソープでおまえのチ○コを心ゆくまで洗わせろ!)
 「下着つけてね。下着つけたお姉様を責めるのが好きなんだ」
 さっき脱いだばかりのTバックをつけると大喜び。
 「うわぁ、黒だ、黒い下着、いいよね」
 「そうですか?」
 「黒、いいよ。エロっぽいよ。あぁ、お姉さん、素敵〜」
 そうか、下着フェチなんだな。今度、いろいろデータ集めたら、「下着占い」とかできんじゃねぇか。
 「気持ちよかったよ。お姉さん、テクニシャンだねぇ」
 ちょっと嬉しい叶恭子。

 次のお客は60過ぎのオヤジ。
 「ええオッパイやねぇ。小娘みたいにぷりぷりと弾力があるわ」
 これ、シリコンなのよねぇ。
 「なぁ本番させてぇな。あんたとわしが黙っていればだれにもバレへんやろ」
 しつこいオヤジ。腹が立ってきたんで、必殺フェラで強引に昇天させちゃった。1時間コースなのに40分で終わり。あとは恋人気分で添い寝してやった。

 3人目のお客は30歳くらいの若い普通の男。
 「責めていい?」
 「いいわよ、私を好きにして」
 デリヘルって、単純にセックスを売る商売だと思っていた。ところが、そうではなくて、「満たされない性的幻想」を満たビジネスなんだよね。
 「彼女、いるんでしょ?」
 「いるけど、変なこと要求できないんだ。30過ぎてから脳みそでセックスするようになっちゃった」
 「人間はみな変態なのよ。前頭葉でセックスする唯一の動物だから」
 「いっぱい責めさせてくれてありがとう」
 「私も気持ち良かったわ、また来てね」

 叶恭子さんは5時から10時までの勤務で、24000円を稼いだのでありました。
 こんにヘロヘロになるまで働いてこんだけ? 家で原稿書いてるほうがどんだけ楽で効率がいいかわかった。
 結局、うさぎさんは3日で11人のお客をとっただけでやめちゃうの。中村うさぎだって店のデリヘル嬢たちにばれちゃったのが痛い。みな、取材だと思ってるから引いちゃうわけさ。
 えっ、これ、突撃取材じゃなかったの?

 昔、若い頃はセックスを「させてあげる」という立場。それがいつの間にか、「してもらう」「していただく」という立場になっている。
 それを痛感したのはホストとのできごと。うさぎさん、15歳も若いホストに狂って、騙されて(「夢を見せる」とも言います)、お金どっさり貢いで捨てられた(うさぎさん42歳の春)。セックスの時、部屋は真っ暗、目を合わさず、それでもいかなかった男。

 このホストに捨てられた後、友人に誘われて別のホストクラブに行くと、ナンバーワン・ホストのパーティ。
 べろんべろんに酔っぱらったホストがなんといったか。
 「いろんなことがあって、オレもここまで来ましたよ」
 「いろんなことってどんなこと?」
 「金のためにババァとのセックスもしたよ。顔見たくないから、部屋を真っ暗にして、目を合わしたら白けるから見ないようにした。行く時は顔見ないで済むようにいつもバックスタイル」
 あのときの私と同じだ。あとは、彼がなにを話していたかも聞こえない。

 「女として扱って欲しい! だれか私に欲情して! 男をムラムラさせたい」
 デリヘル嬢になることは、うさぎさんにとって癒やしの時間だったのね。
 ♪あ〜あ〜、日本のどこかに〜、私を買いたい〜人がいる〜♪
250円高。