2004年05月17日「行列ニッポン観察記」「運のつき」「パソコンで月収30万円」
1 「行列ニッポン観察記」
日本経済新聞編 日本経済新聞 1400円
全国各地の「行列のできる店」を取材し、そのヒットの秘密に肉薄した一冊。
まっ、美味しい店、土産物だけじゃなく、トレンディに場所からイベントまで、とにかく人が集まる「もの」や「こと」を見に行ってまとめた本でんな。
たとえば、吉祥寺の「小ざさ」。ここは羊羹だよね。むかし、吉祥寺に住んでたころ、アーケード街を歩いてると、朝早くから人が並んでるの。しきも半端な時間じゃないわけよ。
だいたい、朝五時くらいかな。みんな、お目当ての羊羹を買うためですね。品質がしっかりしてるから、自家用、あるいは土産、あるいは人から頼まれて・・・。
いまじゃ、八時半に整理券が発行されるようになつてます。開店は十時ですけどね。
ある銀行支店長など、この羊羹を土産に得意先を回って、結構な成果を収めたとか。
「苦労がわかる人に差し上げたい」
たしかに。
バブル、デフレを通じて、価値には値段という尺度だけではなくて、「時間(手間暇)」という物差が出てきましたね。愛情込めて作ったというのも、そう。
ラーメン屋さんでも行列はめちゃくちゃ多いですよね。
どうやったら、行列が作れるのか?
ラーメン専門のコンサル会社もあるくらいです。で、この正解とは?
「席数をたくさん作らないことです」
ピンポーン! 営業時間を限定すること、出店場所、タイミングも大事です。
ところが、個人で出店する人の要望は、たいてい、「家賃がかかるんで、売上のあがる店にしたい。だから、広い店を作りたい」というもの。
でも、これは矛盾してるんですね。
というのも、大規模な店は釜が大きいの。大人数をさばける能力があるんです。
けど、個人厨房の場合、一度に麺をゆでられるのはせいぜい5玉が限度。5分で作るとしても、大変だよ。
もし、これで15席の場合だと15分待たないと、最後の人にはラーメンを出せません。だから、せいぜい18席前後にしておいて、3クールで店内のすべてのお客をさばける規模がベストなんですね。
ラーメンなんか、座ったら2〜3分で出てこないとね。
開店当初は行列のラーメン屋。
味を変えていないのに、客足がばったり止まった。
原因はテーブルに案内してからの待ち時間が長すぎたためです。
外の行列なら何時間でも待つけど、案内されたら15分でも嫌なんですよ。
たとえば、外食チェーン店の「ガスト」では、いったんお客を案内したら、ランチは8分以内、ディナーでも13分以内に出すといいます。これが限度なんですね。
食べ物屋ばかりでなく、宝くじ売場、深夜通販、釣り堀、焼酎、駐車場、トイレ、占いパーク、タクシー、山谷の外国人専門旅館、K1、それにトヨタ自動車とかね。
どうして、トヨタが?
行列が並んでるらしいよ、視察客が多くて。
しかし、考えてみれば、行列というのは縦に並ぶものじゃないね。これは横に並ぶものなの。
だって、日本人の「横並び体質」が行列を行列あらしめてるんでしょ?
違うかなぁ・・。
200円高。
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2 「運のつき」
養老孟司著 マガジンハウス 1000円
ご存じ、養老先生の本です。
「バカの壁」「死の壁」など、ベストセラー連発です。みんな、むかしから言ってたことばかりなんですけどね。
わたしも養老先生には大学院の時にお世話になりました。あの人、親切だから、懇切丁寧にいろいろ指導してくれますからね。
わたしに話しながら、解剖用に使う小道具を小刀使って作ってたな。まっ、器用な人でもあります。
さて、「運のつき」。意味深だね。
飛行機が墜ちる。ガンで死にそうだ。そんな状況は脳の中で想像するしかないんです。
じやあ、想像したらわかるかといえば、わかるわけがありません。
いってみれば、これは恋愛と同じ。
どうして、あんな人、好きになっちゃったんだろう?
あとで考えると、皆目、わからない。自分が経験した恋愛ですらわからない。まして、死など経験したことのない人がわかるわけがありません。
死のことを考えているのは、「いまの元気なわたし」。でも、死にそうなのは「いまの元気なわたし」ではありません。
いいですか、この2人の人間は同一人物ではないんです。別人格なんだ、と考えたほうがいいですね。
人間というのは、「死」という抽象的なもので死ぬわけにはいかないんです。人間は具体的に人生を生きているんです。
理屈で人生がすべてわかるんだったら、わざわざ生きてみる必要も、死んでみる必要もないんです。
死ってどんなこと?
それがわかっているなら、想像がつくなら、死ぬのは面白くもおかしくもないんです。ただの当たり前です。
たとえば、自殺されていちばん苦しむのは、本人ではありません。本人は楽ですよ、死んだ途端にすべて消えてしまうんですから。
人の記憶の中からも消える。記憶に止めていた人もいなくなるから、いずれ、すべてなくなります。
ところが、家族や身内は「なぜ?」「どうして?」と心の傷を一生、引きずるのです。これを「二人称の死」と言います。
自分の死は「一人称」。だけど、これは死んだ途端にすべてなくなりますからもう関係ない。他人の死は「三人称」です。他人は他人、どうでもいいわけです。
二人称の死だけが、実は本当の死なんですね。
これは人間だけではありません。猿や象でも同じです。二人称の死がいちばん苦しいんです。
養老先生は科学者ですけど、「これほど、人生は運に左右されると、はっきり思っているとは気がつかなかった」と述べてます。
東大医学部に28年も勤めていました。定年の三年前に辞めた。
「別にたいして働いていたわけじゃないけど、ものすごく楽になった」
辞めた翌日、本当に窓の外が明るく見えたらしいですよ。世界って、こんなに明るかったのか!
こういう体験、実は養老先生だけじろゃありません。
テレビ局に行ったとき、たまたま周囲の人に話すと、「当たり前だよ」のひと言。
辞めた後、前では人間が違うんですね。
これは会社を辞める。転職する。独立する。転勤する。なんでもいいんです。旅でも、ちょっと外に出かけるでもいいんです。
変化を自分でつくる。それが、いまの自分を変えるんです。
そういう意味では、引きこもりは同じ場所でずっと動かずにいない植物的な生活をおくっているわけですから、なかなか自分を変えるわけにはいかないと思います。
どんどん外に出る。動けば、変わります。
250円高。
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3 「パソコンで月収30万円」
小林智子著 祥伝社 1300円
なんと優雅な、なんとトレンディな、という生活かな。
著者はホームページを活用した新ビジネス「アフィリエイト」で儲けてる人。
「アフィリエイト」っそもそもて何なんでしょうか?
パソコンを買ってから、ほとんど毎日、懸賞に応募したそうです。
なにしろ、インターネットだから郵送料がかからない。これ幸いと、一日数十件も応募してたそう。
それなりに、リターンもありました。
そのうち、もっと効率的なアルバイトがあることを発見。
それはモニターサイトです。ウエブ上でアンケートにどんどん応えていくものです。自分の意見が言えることが良かったそうです。
そのうち、著者は自分で小遣い稼ぎができる「オンライン・ポイント・ブログラム」を紹介するホームページを作ります。
ホームページの作り方は、インターネットでいろいろアクセスすれば、ほとんど無料で簡単に作れますからね。
盛んに著者に紹介してくれるひとがいる。親切な人だなと思ってたら、なんと、その人は紹介するとポイントが増えて、自分が儲かるわけ。最初に教えてくれてたら、そうでもなかったけど、後で知ったら、正直、裏切られたと感じたそうです。
で、著者はもっと誠実なサイトを作ろうとしたわけ。
たんなる紹介じゃなくて、自分の体験談を交える。
体験に基づき、各プログラムを五段階評価する。
「儲かるならなんでもお勧め」はしない。
本音を語ることで、訪問者の参考にしてもらおう。
質問には誠意をもって回答しよう。
てなわけです。
そんなこんなでパソコンを楽しんでいると、ご主人のボーナスが出ないという事態が発生。
こりゃ大変だ。ローンがたくさん残ってる。
どうしよう?
そこで、知人から聞いたのがアフィリエイトなわけです。
これ、「加入する、提携する、合併する」という意味なんですって。広告を出したい人(広告主・企業)と広告を載せたい媒体(ホームページ)が提携するわけです。
もちろん、アメリカ生まれのプログラムで、有名なのはインターネット書店のアマゾンの「アソシエイト・プログラム」でしょうか。
つまり、著者のホームページやメルマガに掲載された広告を通じて、商品が購入された場合、あるいはクリックされた数に応じて、売上の一部が支払われるという仕組みなんですね。
となると、いかにホームページを強力なものにするか、知恵を絞らなければいけません。
わたしのホームページはまったくビジネスとは無縁ですから、いい加減きわまりないのですが、もし、こんなアフィリエイトをするとしたら、もっとアクセス数を増やそうと懸命になるでしょうね。
で、著者はホームページにいろんな情報を載せようとしたそうですが、それはダメ。
ショッピングモール型のホームページはさっぱりですよ。やっぱり、いま、百貨店より専門店のほうが人気があるのと同様、「これは!」「これしかない!」「この分野は任せとけ!」という特徴がないとダメなのね。
なんでもあるけど、面白みがないし、深みがないなぁというのはダメなのよ。
そういえば、書評とかベストセラーの案内をするメルマガがたくさん発行されてますけど、あまり、面白くないですね。本の内容紹介より、もっとジャンプした読み方、切り口が欲しいよね。
最初の頃は、「リターンの高いものが優先。なんても置けば売れたらラッキー」と考えていたそうです。
けど、自分が自信をもって届けられない商品じゃね。
で、著者が目を付けたのは、「悩み」というキーワード。「ナヤミ・ドット・ジェイピー」を立ち上げたのです。
150円高。
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