2006年07月16日「隠し剣 鬼の爪」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 人ってなんのために生きるんだろうね? 食べるため、生きるため、遊ぶため?
 「遊びをせんとや生まれけん」
 たしかに。
 「愛し愛されるために生まれてきました」
 あんた、フランス人?

 さてと、「たそがれ清兵衛」ばかり評判になったけど、これ、いいです。もっといいです。とくに永瀬正敏と松たか子の静かな演技がいいよなぁ。
 押さえた演技って、実は難しいんだよね。

 ぶっちゃけ、人生、あれもこれも欲しいのはわかるけどさ。やっぱ、捨てなければ得られないんだな。あれが欲しけりゃ、これはがまんすっかみたいな。建前で生きるなら、本音は隠すしかないか。まして、武士と生まれたからにゃそうするしかないわな。

 この主人公は身分違いの恋とお家騒動。友人との決闘。家老の裏切り・・・いろんな経験をする中で、こんなものに命を賭ける価値があるのだろうか?って自問自答すんだよ。
 もっと人間らしく、もっと自分らしく、もっと自然に。ならばどうすっか?


松たか子は演技がうまいよ。

 片桐宗蔵(永瀬正敏)は武士。きえ(松たか子)は子どもの頃からこの家で奉公している。2人とも淡い気持ちを抱いてるんだよね。
 けど身分が違うから、しょせん一緒にはなれないわけ。で、そのうち、きえは豪商の家に嫁いでいく。
 わずか三十石という平侍だから、生活は厳しい。けど、母親、妹、きえ、使用人と明るくたのしく暮らしている。だけど、母親も亡くなり妹も嫁ぐと、とうとう、宗蔵は1人暮らしになってしまった。

 幸せに暮らしていると思っていたきえと、たまたま雪の日に出会います。

 「痩せたな? きえ」
 「はい」
 「子どもは?」
 「できましたが流れました」
 「そうか」
 「幸せか?」
 「・・・」
 「よし、衿を買ってやろう」
 
 嬉しそうに衿をすっぽりかぶって雪中を帰っていくきえ。幸せに暮らしていると思ってたのに・・・。
 宗蔵はきえの嫁ぎ先に怒鳴り込みます。そして薄暗い物置小屋に寝かされていたきえを背負ってわが家に戻ってきます。
 きえは日に日に回復し、宗蔵の家は昔のように火がともるように明るくなってきます。そうはいっても、商家の奥方を奪うように引き連れ、一緒に暮らしているんだから、藩内ではフォーカス、フライデーの的。

 「旦那様のお世話ができるだけで幸せなんです。このまま、ここに置いてくださいませんか?」
 けどねぇ。
 「海が見たい」というきえの望みを叶えてやり、そして実家に戻すんだなぁ。
 
 そんな時、大事件勃発。海坂藩の江戸屋敷で謀反が発覚しちゃうのね。
 幕府に知られるのを恐れた藩は内々に関係者をこっそり処分します。とくに首謀者の狭間弥市郎(小澤征悦)は山奥の座敷牢に閉じ込める。
 弥市郎と宗蔵はずっとライバルで、ともに戸田寛斎という剣術指南役の門下生だったのね。不思議なことに、戸田は腕の立つ弥市郎ではなく、宗蔵に「秘剣鬼の爪」を伝授するんだよ。

 この弥市郎が牢破りするわけ。人質をとって逃げちゃった。で、藩は宗蔵に弥市郎斬殺を命じるわけ。なにしろ、弥一郎レベルの腕は仮しかいないんだから。
 弥市郎の妻(高島礼子)は家老に体を提供して命乞いをするんだけど叶わなかったのね。

 宗蔵は指南役のところに出かけます。そして、人を殺すための秘剣の極意を授かるんだな。
 で、弥一郎と立合うわけ。もち、切腹を勧めるんだけど、弥一郎は聞かない。いままで宗蔵に負けたことないんだもんね。このまま逃げれば、元々が優秀な人物だもの。出世のチャンスはいっぱいあるさ。

 けど、宗蔵が勝つんだよね。夫が死んだ後、妻も自決。その後、弥一郎の妻を弄んだことを知るや、宗蔵は家老殺しに出かけるんだ・・・今度は「隠し剣」を使ってね。