2006年07月26日「優しい時間」

カテゴリー中島孝志のテレビっ子バンザイ!」

 「森の時計」はゆっくり進む。
 時計って、どれも同じ刻の刻み方をしないんだよね。ほら、愉しい人との語らいはあっという間だし、逆に、退屈この上ない時もあるでしょ?
 で、「森の時計」ってのは、このドラマの舞台となる喫茶店の名前なんだ。

 名作です。といっても、21年間続いた「北の国から」とは比べられないかもしれないけど。
 でも、私、こちらのほうが好きです。
 なぜだろう? 肩の力が抜けてるからかな。なんか、力いっぱい演技されちゃうと白けちゃうんだよ。熱演、あんまり好きじゃないのよね。

 富良野、よく行きます。毎年、北海道には行ってるから。小樽、札幌、それからラベンダーで有名な美瑛ね。富良野はその少し先だもの(10年間無事故無違反のゴールドカード失効したのもここだったなぁ−−スピード違反)。

 テーマはやっぱ、父子の絆再生だろうね。

 絆が切れたのは理由があんだよね。
 主人公(寺尾聰)はバリバリの商社マン。ニューヨークにずっと単身赴任してて、子どもとのつき合いもあまりなかった。
 で、息子(二宮和也)はいじめが原因で暴走族に入っちゃった。彼を守ってくれたのはリーダーだったからね。で、その男の通称「死神」という墨を腕に入れちゃう。
 そんなこんなで、母親(大竹しのぶ)を乗せて事故起こして死なせちゃうわけ。

 「僕はいままでもこれからも1人で生きていく」
 「勝手にしろ!」

 こうして、父子は仲違い。お互いに無口。ひと言が言えないんだよね。ビジネスでは饒舌で説得力あっても、息子相手だと口を閉ざしちゃう。

 亡くなった妻というか、母親には夢があったんだよ。故郷の富良野で喫茶店を開くこと。

 「お客さんにコーヒー挽いてもらうの」
 「そんな失礼なことできないよ」
 「面白がるわよ」
 「じゃ安くしないとね」
 「逆よ。高くとれるわ」

 こうして、商社を辞めます。妻の夢を叶えるために富良野にやってきちゃう。

 喫茶店経営は亡き妻の友人(余貴美子)のご指導を仰ぐ。また、息子はこの母親の友人から窯元を紹介してもらって修行するわけ。そこは美瑛にあんだよ。富良野の隣。
 お互いにこんなに近くにいることを知らないんだ。だって、この妻の友人が内緒にしてたからね。
 
 だけど、ふとしたことがきっかけで、お互いに知ることになります。
 それはドラマを見てのお楽しみ。悪いけど、大人のドラマだと思うよ。


この喫茶店、倉本聰さん創作。で、ホントに営業してんだよ。

 毎回、ゲスト出演があんだよね。で、その人たちがサイドストーリーを紡いでいくんだ。それがメインストーリーのスパイスにもなってるし、物語を膨らませていく効果もあったりしてね。

 全部で11話あんだけど、時任三郎、手塚理美、田畑智子、佐々木蔵之介、吉井怜、布施博、小日向文世、小野武彦、木村多江、北島三郎、佐々木すみ江、徳重聡、小泉今日子、杉田かおる、高橋克実さんといった芸達者の面々。

 サブちゃんが食べてたカレー。妙に美味そうでしたね。
 うんうんって頷きながら食べてたけど、そういうオヤジ、たしかにいますよね。ホントに美味しいもの食べた時、1人で納得してんだな。
 役者としてもさすがに巧い人だと思うなぁ。

 キョンキョンは長澤まさみちゃん(喫茶店の店員さん)が自殺未遂で運ばれた病院のナースって役。
 「あなた、前にもやってるね?」
 「・・・」
 「けど、本気で死ぬ気なんてないでしょ? 本気で死ぬなら、切るとこ違うよ」
 そういって、自分のリストカットの痕を見せるわけ。



 みんないろんな事情を抱えながら生きてるわけよ。借金で店を潰しちゃって奥さんに顔合わせられないって、自殺しなくちゃいけない男もいるし、そんな男を追い込んで借金とれないサラ金のダメ社員もいるし・・・。 

 世の中はまわり灯籠、もちつもたれつ、因果応報、回転木馬って感じがしますねぇ。

 でも、時間はだれにでも優しくしてくれる。
 どんなに辛いことも、大変なことも、時はちゃんと解決してくれるもの。犯罪だって、「時効」ってのがあるくらいだからさ。
 そういえば、昔、西洋では教会しか時を刻めなかったんだよ。時を司るものが天を治めていたってわけ。
 問題は人間が時を待てるかどうかにあんだよね。待つだけの心の強靱さがあるかどうか・・・。
 
 どうでもいいけど、「強靱」て言葉好きなのね。
 「強」と「靱」って、意味が違うんだよ。「強」は鋼鉄の強さ。だけど、ポロッと折れちゃうこともある。「靱」は竹の強さ。すぐに曲っちゃう。けど、折れそうで折れない。撓るんだよ、竹だから。粘り腰なの。
 人生は持久戦だから、「靱」の強みでないといけないね。したたかに生きなくちゃ、お互い。

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