2003年10月13日「やはり伸びた男 意外にだめだった男の違い」「はじける頭脳」「億万長者だけが知っている 雨の日の傘の借り方」

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」


1 「やはり伸びた男 意外にだめだった男の違い」
 綾小路さゆり著 青春出版社 1260円

 ヘッドコピーが「丸の内お局(つぼね)さまは見た」とあります。まるで、市原悦子の家政婦は見たシリーズですよ、これじゃ。

 内容は、丸の内に勤務するお局様たちが「あぁだ、こうだ」とできる男、ダメな男について具体例をあげて解説するものです。

 ここ最近、銀座ママとか祇園の芸妓までが本を出してますが、いずれも内容はさっぱりでした。とくにどちらの本とは言いませんけど、その会社の出版部長から送られてきたんですが、いつまともな話が出てくるかと期待してたら最後まで出てこず、ホントに時間の無駄でしたよ。

 その点、丸の内のお局様たちは「男の定点観測」では右に出るものいません。
 朝から晩までじっくり観察してるんですよ。
 叱られたり、誉められたり、成功したり、失敗したり、ズルしたり、誠実に仕事したり、部下の手柄を横取りしたり、会社の金を使い込んだり、不倫したり、騙したり・・・もちろん、奥さんよりも長くつき合ってますからね。

 「あの役員、わたしが入社した時、指導したんだよ」
 なんてね。とにかく、煙たいけど、どんな男が伸びるかどうかはよーーーく知っている。
 「ずるいけど、こんな男は伸びる」
 「いい人なんだけどねえ、そこ止まり」
 「わたしがいちばん感動した上司」
 「やっぱり出世する人は新人の時から違う!」
 だと。

 お局様曰く、「懸命に恥をかいている男は必ず成功する」のだ、という。「かわいい男は伸びる」という法則は、実は上司にもピッタリ当てはまるらしいね。

 折り紙付きの仕事ができる部長がいるらしい。彼は役員にも認められていて、現在、トップを狙う地位にまで昇っているという。
 この部長がすごいのは、ミーティングなどで当時ならプリクラ、今なら写メールだとか若い人を中心に人気を集めているものが話題にあがる。すると、そのとき「ゴメン、ちょっとわからないから意見を続けて」と言って、若い社員に話させて自分はせっせとメモをとる。

 会議の終わった後、ぺ−ぺ−が「ちょっといいかい?」と呼ばれる。そして、「今日話に出てきたあれ。まだよくわからないから少し教えてくれない?」と言ってレクチャーを受けようとする。
 これが可愛いいんだ、と。
 一週間くらいすると、「いまの若年層にこれが受けているけど、今後、可能性によっては新しくこんなマーケットができるんじゃないかと思うんだ」なんて、誰よりも専門家になっているというのだ。
 最近の上司の中には、「それ間違ってますよ」と非を指摘されると、「いいんだよ、オレハ」なんてすぐにふて腐れる男が少なくない。これは伸びない男の典型。

 「恥は思いっきりかいていい」
 問題は自分がどれだけ謙虚になって、自分の成長につなげられるか、なんですね。

 「『フル・モンティ』という映画あるでしょ。製鉄所の倒産で職を失った連中が男性ストリップで再起を図るという“健気?”なストーリー。バカバカしいながらも、大真面目で恥をかこうとする、そんな姿には女は心を打たれる」
 格好ばかりつけてるんじゃねえよ。ハゲだって、腹が出てたっていいの。男は人間的な器でどんどんでかくなればいいんだよ、とのこと。

 はい、勉強させて頂きます!
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2 「はじける頭脳」
 鳥井良二著 アートン 1000円

 著者は共同通信社のメディア局の社員。もっぱら暗号の研究に余念がない様子です。
 本書は社名によって一年間のMIT留学を命じられた著者による「すげぇ奴ら」についての一考察といったところでしょうか。
 本の作り方としては、わざとかあるいはミスったのか、いずれにしても目次はありません。わたし、プロとして思わず探してしまいましたよ。

 さて、MITとはもちろん、ボストンのマサチューセッツ工科大学ですね。あのマット・デイモンの映画『グッド・ウイル・ハンティング』の舞台もここでした。
 留学生が全体の四分の一を占めています。中でも中国人がダントツに多い。しかも、中国人は自己主張、意思表示をきちんとする民族ですから、存在感も強い。
 それに引き替え、日本人は控えめというか、自信がないというか、おとなしくて消え入りそう。結果として、人数ほどには存在感がない。希薄なんですね。

 そんな学生たちを教授たちはどう見ているか?
 やはり。授業にポジティブに参加する中国人、インド人たちを取りたがります。彼らは元々、頭が良いという理由もあります。でもそれだけではありませんね。めちゃくちゃ勉強するからですね。
 あからさまに日本人はいらない、という人も少なくありません。いるかいないかわからないようでは、欲しくないものね。試験の時だけ活躍する、という次元ではありません。

 中国人、インド人がどうしてそこまでポジティブになるのか?
 それは簡単です。彼らにとって、勉強はハングリースポーツそのものですから。これを勉強して金をつかむんだ、という目標が明確なんです。
 当然、MITにしたところで、通過点の一つに過ぎません。学歴ではなく、実力。パワーが欲しくて留学しているわけです。たんなる箔付けとは違うのです。
 「なぜ留学したの?」
 こんな愚問を発するバカはいないのです(日本人にはこういう質問多いね)。
 「ここで成功をつかむために来た」
 「成功への一里塚」
 これが当然。暗黙の了解なんです。

 さてさて、MITは1861年、ウィリアム・バートン・ロジャースによって創設されました。この大学はいわゆる理系の学校です。実践のために技術、知識を習得する学舎なんです。
 東京ドーム46個分の広大な敷地。
 マスコットはビーバーです。「作ることから学べ」というメッセージが込められてるんです。

 本題に入りましょう。
 本書を書く動機。それはとにかく驚いたからだそうです。世の中には「天才」というものがいる。それを何人も見た、というわけです。それは学生、教授を問わず、たくさん見たというのです。

 たとえば、あの有名な「メディア・ラボ」のマイケル・ボーブ教授。
 この人の研究に「ハイパーソープ」といものがあります。これは赤外線リモコンによって、テレビなど映像に登場する人のそかしこをクリックすると、即座に商品情報を画面上に取り出せるといシステムです。
 これは面白い。そして、用途開発が無尽蔵ですよ。たとえば、主人公が着ている服、靴を見て、「あれ、いいな」と思えばクリックする。すると、素材から値段、店までわかる。通販とリンクして、その場で注文できる。2日後には主人公と同じ服着た人間がそこかしこを歩いている・・・ということも現実のものになります。
 こうなると、テレビのスポンサーはこぞって集まるでしょうね。デパートよりも通販がどんどん伸びる可能性がありますよ。

 以前、こんなビジネスがありました。
 映画やテレビに商品を活用してもらう。それによって露出度が上がる。商品の認知度が上がるわけです。
 サブリミナルよりはかなり明確な宣伝ですが、これよりも明確な売り方ができますね。

 「オーディオ・スポットライト」という技術もあります。これはジョセフ・ポンペイが開発したものです。
 これは音をレーザー波長に変換して、その人の所にだけ送る技術です。
 どうなるか?
 たとえば、映画館でその人のスペースだけが日本語が聞こえるようにもできるわけです。周囲にはまったく聞こえません。ピンポイントで音だけを照射できるわけですよ。
 わたしなど、「これがあったらカンニングできるなぁ」と考えてしまいましたよ。
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3 「億万長者だけが知っている 雨の日の傘の借り方」
 オーレン・ロース著 講談社 1700円

 投資本というよりも、財産防衛本。タックスヘイブンとオフショアファンドに関するいろいろなノウハウをまとめた本です。
 なにしろ、著者も訳者も関係者ですからすべてを鵜呑みにするわけにはいきませんが、でも、殖やすことより守ること。減らさないことを考える時代になっているのかもしれません。

 ところで、資産家という場合、シティバンクでは不動産を除いた資産が十億円以上の人を指すらしいですね。本書では、もう少し下げて、一億円ということらしいです。
 こんな資産家だけでも全国に百三十万人もいるわけ。
 ざっと百人に一人が資産家というわけです。これを多いと見るか、少ないと見るかは意見が分かれるところでしょう。

 さて、本書の結論は「国家の運命と個人の運命を切り離す」ということに尽きます。
 これは著者がイスラエル生まれだから言えることかもしれません。はたして、「一所懸命」が染みついた土着の日本人にこのテイストが合うかどうか・・・。
 日本人の個人金融資産は一千四百兆円といわれています。今年はもっと目減りしていますが、まっ、そのへんはいいでしょう。一方、国家の借金は七百兆円。
 「だから、あと七百兆円は大丈夫!」
 これは錯覚ですね。
 一千四百兆円の内訳を考えれば、株式投資は七パーセント、現預貯金が六〜七割、その他、国債とかいろいろに財産を分散投資してるんでしょうが、銀行に預けた現金は証券市場やデリバティブなどで回りに回って投資されています。生保のお金もそうですね。
 海外にあるオフショアファンドやタックスヘイブンの最大のお客さんか、日本の金融機関なんですよ。
 つまり、日本人は好むと好まざるとにかかわらず、間接的には既にオフショア、タックスヘイブンに資金を預けているんですね。

 けど、そこで運用すれば四割ものリターンだけど、銀行から手元に届くお金は例のアリの涙。0.001パーセントの利子だけです。これだけの差額を手に入れているにもかかわらず、まだまだ日本の金融機関は不良債権処理ができていないんです。

 リスクヘッジで大切なことは「環境の違う場所に分散すること」です。ということは、現預貯金、不動産、証券、国債というように商品を変えるだけでは分散投資とは言えないんですね。
 なにしろ、これ、すべて日本国内でしょ。
 海外投資、ドル預金、ユーロ預金など、地域分散、商品分散などを考慮に入れないと本当のリスクヘッジではありません。ヘッジとは「垣根」という意味ですから、どこまでを垣根にするのかで安全の定義も変わってきますよね。

 具体的なオフショアファンド、タックスヘイブンの申込方法などは、本文を参考にして頂ければと思います。
 最低ラインは七千ドル〜一万ドルといったところ。ずいぶん低いと思う。以前、わたしが確認したところでは、少なくとも三千万円からと言ってましたから、業者も「普通の人」をターゲットにするようになったんですな。
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