2006年10月22日「地下鉄に乗って」
カテゴリー中島孝志の不良映画日記」
出版社からの注文はいつも「極道もの」ばかり。純文学を書こうにもチャンスはくれない。極道小説家としてしか認められてないからさ・・・「はい、わかりました」と答えたものの、結局、こんな小説を書いちゃった。
どうすんのよ? 幸い、徳間書店が出版してくれたからいいよ。タイトルは『地下鉄(メトロ)に乗って』なんて、いままでの極道きんぴか小説からは想像もつかない内容だしさ。極道小説ファンだって、「浅田次郎は2人いるのか!?」って混乱しちゃうのも当たり前さ。
そんなこんなでまったく売れなくてさ。当たり前じゃん。
ところが半年後に、講談社から1本の電話が入ります。
「吉川英治文学新人賞の最終選考に残ってます」
あっさり受賞しちゃった。
その後の活躍はご存じの通り。運命というのはわからないものですなぁ。
昨日(土曜)封切り。6月のブログに書いてたでしょ?
「地下鉄に乗って、が秋に封切られる」って予告で観たの。すぐに前売り券を3枚購入。でもって、早速行ってきましたよ。
堤真一さん。TBSの「セーラー服と機関銃」にも出演中。
映画と原作って微妙な関係にあんのよ。たとえば、「砂の器」。原作は松本清張。だけど、こりゃただの空想科学小説。面白いけど、感動とはほど遠かったね。
それが橋本忍さんの脚本にかかると、あんなにもすばらしい人間映画に生まれ変わるわけ。私ゃ、これ、映画館で26回観たからね。
たとえば、「人間の証明」。これは原作の勝ち。悪いけど映画は薄っぺらでねぇ。呆れました。
じゃ、これは?
この映画は原作といい勝負してます。デッドヒート。映画は映画ですばらしいし、小説は小説で文句なくいいわけ。脚本の出来がそんだけすばらしいの。
そうか、映画と小説なんて本来は別物なんだし、比べられるわけがないのよ(先ほどの作品はどちらがいいかわかっちゃうくらい歴然としてた)。
あのとき、もっと話を聞いておけば良かったな・・・後悔先に立たず? いや、後悔後を絶たず。こんなことってよくあるよね。けど、どうせ聞いたところでそのときにはこちらの許容度がぜんぜん足りないから所詮わかんないの。
いまならわかる。いまならわかりあえる・・・ってたくさんあるんだよ。親子の間でも夫婦や恋人の間でも、日本と北朝鮮、アメリカとイラクだって同じことだと思うよ(話を広げすぎか?)。
反目してる人間だってさ、1人の男と男、1人の女と女として語り合えたら氷解すんことっていっぱいあんだよね。
主人公の長谷部真次は死んだ兄の命日に地下鉄に乗っててワープしちゃう。以来、ワープしては若い頃の父親に遭遇しちゃうわけ。
父親は一代で財をなした男。戦前、戦後を生き抜いた強烈な個性の持ち主。3人の息子がいてさ、真次は2番目の息子さ。けど、父親とは絶縁。籍まで抜いて母親の姓にしてる。兄の死だって、父親が原因だと堅く信じてる。
最初のワープで行ったのは昭和39年のオリンピック直前の東京。それから終戦直後のヤミ屋時代、それから父親が出征するときの地下鉄「新橋−−青山一丁目」の中。満州でも遭った。その都度、自分が知らない父親と出会う。
そう、これ、インナートリップだよね。
「オレはこのあたりの食い詰めの面倒みてるアムールって言うんだ」
「もし生きて帰れたら、この千人針をくれた娘と一緒になってガキを作るんだ。オレができなかったことを全部やらせるんだ。長男は学者だ。次男坊はお堅い仕事。末っ子はたいてい出来が悪いし甘えん坊だから、ずっと一緒に住んで親孝行させるんだ」
「あんたは死なないよ。満州に行くんだ。苦労はするけど生きて帰れる」
「あんた、易者か?」
「私を産んでくれた母さんの幸せと愛する人の幸せ。母さんならどちらを選ぶ?」
「親は自分の幸せを子供に求めたりしないよ。愛する人のために生きなさい」
「母さん、ごめんね」
この映画、大沢たかおさんと常磐貴子さんがとっても光ってます。とくに大沢さんにとっては代表作になる。役者として新境地を開いたと思う。
まっ、ごちゃごちゃ言っててもしょうがないから、いますぐ観に行ってよ。損はさせないよ。文句なく楽しめる映画だよ。私ゃ、明日も観に行きます。まだ前売り券あるんだもん。
この監督(篠原哲雄さん)の作品は、「洗濯機はおれにまかせろ!」を前に紹介してるよ。お暇なら、そちらも読んでね。
しっかし、浅田次郎さんて大人の童話を書かせたら天下一品だよね。
追伸 ただいまレイトショーでまた観てきちゃいました。1回目で見落としてるとこかなりありましたね。レイトショーっていいね。1200円だもの。前売り券より100円も安いじゃないの。火曜日はメンズデーで1000円だって。もっと安い! おいおい、私ゃ前売り券3枚も買ったんだよ。金返せ! 返してくれ! 頼む・・・。
どうすんのよ? 幸い、徳間書店が出版してくれたからいいよ。タイトルは『地下鉄(メトロ)に乗って』なんて、いままでの極道きんぴか小説からは想像もつかない内容だしさ。極道小説ファンだって、「浅田次郎は2人いるのか!?」って混乱しちゃうのも当たり前さ。
そんなこんなでまったく売れなくてさ。当たり前じゃん。
ところが半年後に、講談社から1本の電話が入ります。
「吉川英治文学新人賞の最終選考に残ってます」
あっさり受賞しちゃった。
その後の活躍はご存じの通り。運命というのはわからないものですなぁ。
昨日(土曜)封切り。6月のブログに書いてたでしょ?
「地下鉄に乗って、が秋に封切られる」って予告で観たの。すぐに前売り券を3枚購入。でもって、早速行ってきましたよ。
堤真一さん。TBSの「セーラー服と機関銃」にも出演中。
映画と原作って微妙な関係にあんのよ。たとえば、「砂の器」。原作は松本清張。だけど、こりゃただの空想科学小説。面白いけど、感動とはほど遠かったね。
それが橋本忍さんの脚本にかかると、あんなにもすばらしい人間映画に生まれ変わるわけ。私ゃ、これ、映画館で26回観たからね。
たとえば、「人間の証明」。これは原作の勝ち。悪いけど映画は薄っぺらでねぇ。呆れました。
じゃ、これは?
この映画は原作といい勝負してます。デッドヒート。映画は映画ですばらしいし、小説は小説で文句なくいいわけ。脚本の出来がそんだけすばらしいの。
そうか、映画と小説なんて本来は別物なんだし、比べられるわけがないのよ(先ほどの作品はどちらがいいかわかっちゃうくらい歴然としてた)。
あのとき、もっと話を聞いておけば良かったな・・・後悔先に立たず? いや、後悔後を絶たず。こんなことってよくあるよね。けど、どうせ聞いたところでそのときにはこちらの許容度がぜんぜん足りないから所詮わかんないの。
いまならわかる。いまならわかりあえる・・・ってたくさんあるんだよ。親子の間でも夫婦や恋人の間でも、日本と北朝鮮、アメリカとイラクだって同じことだと思うよ(話を広げすぎか?)。
反目してる人間だってさ、1人の男と男、1人の女と女として語り合えたら氷解すんことっていっぱいあんだよね。
主人公の長谷部真次は死んだ兄の命日に地下鉄に乗っててワープしちゃう。以来、ワープしては若い頃の父親に遭遇しちゃうわけ。
父親は一代で財をなした男。戦前、戦後を生き抜いた強烈な個性の持ち主。3人の息子がいてさ、真次は2番目の息子さ。けど、父親とは絶縁。籍まで抜いて母親の姓にしてる。兄の死だって、父親が原因だと堅く信じてる。
最初のワープで行ったのは昭和39年のオリンピック直前の東京。それから終戦直後のヤミ屋時代、それから父親が出征するときの地下鉄「新橋−−青山一丁目」の中。満州でも遭った。その都度、自分が知らない父親と出会う。
そう、これ、インナートリップだよね。
「オレはこのあたりの食い詰めの面倒みてるアムールって言うんだ」
「もし生きて帰れたら、この千人針をくれた娘と一緒になってガキを作るんだ。オレができなかったことを全部やらせるんだ。長男は学者だ。次男坊はお堅い仕事。末っ子はたいてい出来が悪いし甘えん坊だから、ずっと一緒に住んで親孝行させるんだ」
「あんたは死なないよ。満州に行くんだ。苦労はするけど生きて帰れる」
「あんた、易者か?」
「私を産んでくれた母さんの幸せと愛する人の幸せ。母さんならどちらを選ぶ?」
「親は自分の幸せを子供に求めたりしないよ。愛する人のために生きなさい」
「母さん、ごめんね」
この映画、大沢たかおさんと常磐貴子さんがとっても光ってます。とくに大沢さんにとっては代表作になる。役者として新境地を開いたと思う。
まっ、ごちゃごちゃ言っててもしょうがないから、いますぐ観に行ってよ。損はさせないよ。文句なく楽しめる映画だよ。私ゃ、明日も観に行きます。まだ前売り券あるんだもん。
この監督(篠原哲雄さん)の作品は、「洗濯機はおれにまかせろ!」を前に紹介してるよ。お暇なら、そちらも読んでね。
しっかし、浅田次郎さんて大人の童話を書かせたら天下一品だよね。
追伸 ただいまレイトショーでまた観てきちゃいました。1回目で見落としてるとこかなりありましたね。レイトショーっていいね。1200円だもの。前売り券より100円も安いじゃないの。火曜日はメンズデーで1000円だって。もっと安い! おいおい、私ゃ前売り券3枚も買ったんだよ。金返せ! 返してくれ! 頼む・・・。